歪んだ世界の中で
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第十一話 テスト勉強その十一
「ハンバーグの中だとね」
「そうね。千春はね」
「千春ちゃんは?」
「チーズが好きなの」
上にチーズを乗せたハンバーグがだ。千春の好物だった。
「それが好き」
「そうなんだね。チーズを乗せたハンバーグなんだね」
「そう。ただね」
「ただ?」
「ハンバーグも不思議だよね」
食べ物を語る時独特のだ。口元が緩んだ笑顔でだ。千春はこうも言ったのである。
「ただ。お肉を集めてそれで焼いただけなのに」
「それでもね」
「美味しくて。そうした食べ方もあって」
「そう。色々な食べ方があるのよね」
「それが不思議だよね」
千春はハンバーグについてこう話したのだった。希望に対して。
「ただの挽肉の塊なのに」
「練ってね」
「それだけなのにね」
「そうだよね。けれどね」
「けれど?」
「お友達が言ったけれど」
千春と一緒に住むだ。彼等がだというのだ。
「言ってたの。ハンバーグは作るのが難しいって」
「ああ、そういえば何か言うよね」
「そうだよね。挽肉を集めて練ってね」
「その中に色々なものを入れて焼いて」
「けれどの中に入れるものがね」
玉葱や人参、それに卵等だ。
「それで焼くのだって」
「何でも難しいんだ」
「そうなんだって。それでハンバーグってね」
「うん、このハンバーグは」
「人間と同じだって」
そうだというのだ。ハンバーグはだ、
「そう言ってたの。お友達がね」
「そういえば何か。中に色々と入ってて」
「焼くのも難しいよね」
「そうだよね。じゃあ」
「そう。生まれるのも大変で」
「その中には色々なものがあって」
「焼くのはね」
最後のそれは何なのか。千春はそのハンバーグを食べながら話した。
「人生だよね」
「そうだよね。目玉焼きやチーズを乗せるのも」
「同じだね。人生だね」
「そうなるね。確かにね」
「そう。だからハンバーグは人間だってね」
「そのお友達が言ってたんだ」
「あの子は生まれてまだちょっとで」
千春はこうも言った。笑顔のままでそのハンバーグを食べながら。
「ほんのちょっとだけれどね」
「ほんのちょっとって?」
「そう。お花が咲く様になってすぐなの」
「お花?」
ここで話に花が出て来てだ。希望はその目をきょとんとさせた。
そしてそのうえでだ。ハンバーグを目玉焼きと一緒に食べながら怪訝な顔になって問い返した。
「お花が咲くって」
「そうだよ。お花って中々咲かないんだよ」
「?咲く?」
「咲くんだよ。根を張ってからそれから咲いてやっとはじまりなんだよ」
「ええと。それってつまりは」
千春の今の言葉に首を捻りつつだ。希望はこう考えた。
それは生まれてから奇麗になるか身が立つ、そうした意味ではないかとだ。それでだ。
その考える顔でだ。こう千春に言った。
「あれかな。成長したってこと?」
「そうだよ」
千春は自分の知っていることから希望に答えた。
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