歪んだ世界の中で
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第十一話 テスト勉強その七
「そうなるんだよ」
「ううん、そういうものなんだ」
「かえって」
「欲がないとかえって多くのものが貰える」
「神様から」
「そうなんだよ」
また言う千春だった。
「だから欲がないっていうのはいいことなんだよ」
「無欲の欲、とはまた違いますね」
千春の話をここまで聴いてだ。真人は言った。
「無欲なら。それを神様が見ていて」
「そうだよ。貰えるんだよ」
「ですか。では僕はこれからも」
「僕もね」
真人と希望、二人でだった。
お互いに顔を見合わせてだ。そして話したのだった。
「欲がないままでいきましょう」
「そうだね。そうしようね」
「そうするといいんだよ」
千春はここでも笑顔でだ。そしてだ。
そのうえでだ。また言ったのである。
「無欲でね」
「うん、欲のないままね」
「そうしてですね」
「何でもやっていけばいいよ」
「僕は列車を見られて」
そしてだと。真人は話していく。また千春に対して。
「そして遠井君というお友達がいれば」
「それでいいんだ」
「確かに。父親は困った人です」
父についてはだ。真人はこう言うばかりだった。
だがそれでもだ。彼は今はすぐにこう言えたのだった。
「ですがそれでもです」
「列車を見られて希望も一緒なら」
「それでいいです。僕にとって遠井君はかけがえのない人です」
あくまでだ。遠井への気持ちは変わらなかった。真人の中では。
「ですから。ずっと一緒です」
「僕もなんだよね」
ひいてはだ。希望もこう言ってきた。
「僕もね。友井君がいてくれて千春ちゃんがいてくれて」
「千春もなのね」
「それで満足だから」
こう言ったのである。言えたのだ。
「もうね」
「千春もだよ」
そしてそれは千春もだというのだ。
「希望と一緒にいられたらいいよ」
「そうなんだ。僕と」
「うん。希望とね」
「千春ちゃんも欲がないんだね」
「そのつもりだよ」
無欲、そうだというのだ。
「だって。ずっと生きてても欲があってもね」
仕方ない。そうした口調だった。
「何にもならないからね」
「そうだよね。じゃあ」
「うん。無欲にね」
「欲なんか忘れて楽しもうね」
こう話してだった。彼等はだ。
この昼に楽しく食事を摂ったのだった。その後でだ。
希望は千春と一緒に学校の中を歩いた。まだ強い日差しの差す校庭もだ。その校庭でだ。
希望はだ。こう千春に言った。
「今まで校庭を歩いててもね」
「どうだったの?」
「楽しいと思ったことなんてなかったよ」
日差しで緑に輝くその校庭を見ていた。草木が光で輝いていたのだ。
その草木を見ながらだ。彼は言ったのである。
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