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Fate/WizarDragonknight

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苦労する運営

「えっと……」

 ハルトは気まずい顔でムー大陸を歩いていた。
 広大な敷地で女性と歩く。それはとってもどきどきする経験のはずなのだが。

「ちっともときめかないのは何故でしょう」
「黙って歩きなさい」

 冷たい声に、ハルトはビクッと背筋を震わせる。

「えっと……もう俺に銃を向けてないよね」
「振り向いて見なさいよ」

 その声に、ハルトは背後を見た。
 金髪の美人さんは、やはりそこにいる。腕を組みながら、ハルトの後ろでこちらを睨んでいる。

「敵意はないわ。もう言ったでしょ?」
「そうだけどさ……その仏頂面だと、怖いんだよ」
「何ですって?」

 金髪の女性が半目で睨む。ハルトは「何でもありません!」と叫び、歩を続ける。
 歩きながら、ハルトは彼女へ話しかけた。

「あの……リゲルさん?」

 リゲル。それが、襲ってきた金髪の女性の名前だった。
 ハルトがリゲルを破ったことで、名前とクラスの開示を改めて求めたところ、金髪の女性は自らをリゲルと名乗り、クラスはガンナーのサーヴァントだと明かした。
 オリオン座の星と同じ名前の女性は、ハルトから距離を保ったまま歩いていた。

「なんで……そんなに離れているの?」

 だが、その距離は少し遠かった。

 彼女は自らの体を抱きながら、警戒の眼差しを向けた。

「……女の敵」
「何で!?」

 ハルトの悲鳴を無視しながら、リゲルは顎で「速く行け」という。
 ハルトはため息をついて、道を急ぐ。

「ねえ、歩きながらでも聞きたいんだけど」
「何?」
「どうして、俺のことを知ってたの?」
「それを答える義務はあるのかしら?」
「ないけどさ……やっぱりだめ?」
「言ったでしょ。聖杯戦争において、情報も立派な戦力よ。わざわざ情報源を開示する必要もないわ」
「敵意はないけど信用もないってことね」

 ここでことを構えるよりは、敵ではない戦力と協力した方がいいのは確かだが、この人物は苦手だなと感じた。
 やがて通路を抜け、二人は遺跡の中の、広大な空間にやってきた。

「うわ……」
「これは……?」

 ハルトだけでなく、リゲルもまた言葉を失う。
 それは、街であった。
 ムー大陸、その地下のはずの空間に栄える街。
 中心の枯れた噴水を起点に、十字に広がる道路から、それぞれ石で作られた家屋が立ち並んでいた。
 本来は大空の下が街というところだが、ムー大陸のこの場所は上も下も茶色の遺跡だった。

「……(いた)んでいるわね」

 リゲルは街へ足を延ばしながら呟いた。彼女の右目には、青いゴーグルが付けられており、測定しているようであった。

「年代測定から見て、おおよそ一万二千年前……でも、それにしても痛みすぎてるわ」
「そうなの? むしろ保存状態よさそうに思えたけど」
「海であろうと空気中であろうと、この素材なら、ここまでの状態にはならないわよ」

家屋を調べながら、リゲルは言った。
 無人となった家の中は、確かに荒れていた。石でできた家具にはヒビがあり、屋根も多く穴が開いている。
 道路も、とても良好とはいえない。あちらこちらに亀裂が入っており、中には亀裂どころか溝になっているところさえあった。

「ムー大陸、だったかしら? 聖杯戦争の監督役もどうしてこの場所に変更したのかしら?」
「……そうか……君は、知らないよね」
「あなたは知ってるの?」

 リゲルはハルトに鋭い眼差しを向けた。
 ハルトは頷く。

「バングレイってマスターがいてさ。あ、エンジェルってサーヴァントのマスターなんだけど。そいつが、このムー大陸を復活させた。モノクマがいたってことは、多分バングレイの言葉に賛同したんじゃないかな」
「不公平極まりないわね」

 リゲルは吐き捨てる。

「監督役を呼んだ方がいいわね。コエムシ! 聞こえてるんでしょ!」

 リゲルが声を張り上げた。
 すると、『はいはい、聞こえてますよって』と、白い影が現れる。
 頭部のみがアンバランスに感じるほど巨大なネズミ。大きな人形程度の大きさのそれは、どこからともなく飛来し、リゲルの前にやってきた。

『うっす。ガンナー。……お前、なんで敵のマスターといるんだよ?』

 聖杯戦争の監督役の一人、コエムシ。ハルトにとっては敵とみなすべき存在だが、心なしかげっそりしている様子の彼を問い詰めるつもりはハルトにはなかった。

「先にこちらの質問に答えなさい。この状況、一人のマスターの主導なの?」
『……正確には、マスターとサーヴァントのペアな。困ったことにモノクマ先輩までノッテやがるし』
「さっきも聞いたわね、その名前。モノクマって誰なの?」
『あー……他の監督役だよ。会ったことなかったか?』
「ないわ。それよりどういうつもり? 聖杯戦争は、運営が参加者に肩入れしてもいいのかしら?」
『んなわけねえだろ! こっちだって困ってんだ。さっきも別の参加者に苦情入れられたばっかりなんだよ!』
「困ってる?」
『そうだよ! 疑うんだったら、松菜ハルトに他の監督役も呼ばせてみろ!』
「……? あなた、コエムシに選ばれたんじゃないの?」
「俺をマスターにしたのはキュゥべえだよ。キュゥべえ!」

 ハルトがその名を呼ぶ。すると、頭上の屋根に、ぴょこんと小動物が飛び乗った。

『やあウィザード。君から呼ばれるなんて珍しいね』
「自分でもそう思う。やっぱりお前もムー大陸にいたんだな」
『モノクマに連れて来られたのは、君たちだけじゃないってことだね』

 白い小動物、キュゥべえ。彼は、ハルトの前に降り立ち、『きゅっぷい』と首を鳴らす。

『君は初めましてだね。ガンナーのサーヴァント。僕はキュゥべえ。コエムシと一緒に聖杯戦争を運営させてもらってるよ』
「ならば苦情を言わせてもらおうかしら。いきなりこんな閉鎖空間に引っ張ってきて、何のつもり?」

 リゲルはキュゥべえへ大砲の銃口を向けた。すぐそばには発射口があるというのに、キュゥべえは全く動じない。
 ハルトはリゲルの肩をポンと叩いた。

「止めておいたら? そいつ、一切感情ないから」
『よくわかってるじゃないか。ウィザード』

 キュゥべえは顔色一つ変えずに言った。

『この事態は参加者の一人が引き起こし、モノクマがそれに乗じて許可しただけのこと。僕たち監督役がどうこうすることではないよ』
『そんな先輩!』
『コエムシも、少しは落ち着いて。それに、見滝原とムー大陸、場所がどこでも君たちに関係あるのかい? 結局は閉鎖空間の中で戦う。見滝原であろうと、ムー大陸であろうと。そこに、何も問題ないじゃないか』
「大有りよ」

 リゲルがキュゥべえの襟首を掴み上げる。動物虐待のような絵面だなとハルトは思ったが、リゲルは続ける。

「今夜のクリスマスアフターセールに間に合わないじゃない! マスターを飢え死にさせる気?」
「そっちかい!」
『食料問題のない今のうちに聖杯戦争を終わらせればいいじゃないか。今の君は、まずウィザードを倒すことを考えるべきだと思うけど』
『……』

 リゲルは横目でハルトを睨んだ。
 ハルトは両手を上げる。

「やめてよ……今、それで争ってる場合じゃないでしょ」
「……そうね」

 リゲルはキュゥべえを離した。

『もういいわ。監督役に頼ろうとした私がバカだった……』
『分かってくれればいいよ。それじゃあ、聖杯戦争はしっかり行ってね』

 キュゥべえはそれだけ言い残して、屋根伝いにムー大陸の奥へ消えていった。
 取り残されたコエムシは、唖然としてその様子を見送る。

『……おい先輩!』
「で? あなたは?」
『え?』

 取り残されたコエムシは、ただ一人、リゲルの視線に晒されることになった。怒りを込めた眼差しの彼女に、コエムシは体を振動させている。

「あなたもここで戦えと? それがあなたの望む聖杯戦争なのかしら?」
『いや……あの……その……』

 コエムシの目が泳いでいる。やがて。

『わーったよ! ちょっくらモノクマ先輩に文句言ってきてやるよ! そもそも、こんな古く臭えところじゃ、まともに運営なんてできねえし! じゃ、行って……』

 コエムシは、そこで動きが止まった。プルプルと震え、

『また苦情(クレーム)かよ! こんなことになるんだったら、俺様がマスターを見出すのやめとけばよかった!』

 本来行こうとした方角とは別方面へ飛び去って行った。

「苦労してるな……」

 そんなコエムシを見送りながら、ハルトは少しだけ同情した。 
 

 
後書き
さやか「ふう……ちょっと疲れちゃったかな……」
さやか「粗方やっつけたよね? でもどうせ……」
オバケ「キャッキャッキャ」
さやか「出てくるよね……もう!」マーメイド
マーメイド「どんどん倒れろ!」
マーメイド「もうイヤ! どんだけ出てくるの!?」
まどか「あ、あの……」
マーメイド「ん? あ、まどか……」
まどか「助けてくれて、ありがとう……ございます」
マーメイド「あ、ああ……」
まどか「あの……ファントムなのに、どうして助けてくれたんですか?」
マーメイド「えっと……わ、私はファントム兼ヒーローなのだ! だから、困ってる人のところには颯爽登場するのだ!」
まどか「おお!」
マーメイド「そんなことより、アニメ紹介どうぞ!」



___私は今恋に落ちた 一番星 お願いした どうか君と いつも一緒にいれるように___



マーメイド「極黒のブリュンヒルデ!」
まどか「2014年の4月から6月までのアニメです」
まどか「あれ? ファントムさんはどこに行ったの?」
さやか「おーい、まどか!」
まどか「さやかちゃん!」
さやか「何? アニメ紹介してるの?」
まどか「う、うん。そうだけど……」
さやか「えっと、幼いころ幼馴染を亡くした主人公君が、記憶喪失の幼馴染そっくりさんといっしょにすごす話だね」
まどか「うん。でも、彼女たちの体は本当は……」
さやか「これ細かいところ説明しようとすると、全部ネタバレになっちゃうじゃん!」
まどか「それよりさやかちゃん、さっきファントムが……」
さやか「そ、それじゃあ次回もお楽しみに!」
まどか「さやかちゃん~」 
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