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歪んだ世界の中で

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第十一話 テスト勉強その二

 真人は希望のその話を歩きながら聞きだ。安心した様な笑顔でこう言った。
「そうですか。朝早く起きてですか」
「うん、走ってるよ」
「それからシャワーを浴びてですね」
「御飯を食べて歯を磨いてね」
 そうしてだ。今登校しているというのだ。
「何か凄くすっきりしてるよ」
「朝早く起きて身体を動かしたからですね」
「シャワーも浴びたしね」
 実際に爽やかな笑顔でだ。希望は話していた。
「全然違うよ」
「いいことですね。遠井君今本当に」
「僕は?今?」
「とてもいい顔をしていますよ」
 希望のその爽やかな感じの笑顔を横から見てだ。真人も笑顔になっている。
 そしてその笑顔でだ。こう彼に告げたのである。
「何もかもが抜けて。新しいものを手に入れた様な」
「そうかもね。実際にね」
「充実しているからですね」
「うん。自分でも感じるよ」
 充実、それをだというのだ。
「こんなにいいものなんだね。充実ってね」
「そうですね。では僕もです」
「友井君も?」
「写真部、頑張ります」
 彼は部活にさ。さらに燃えるというのだ。
「部活の方。もっと頑張ります」
「友井君部活ではどうなの?」
「確かに。部活でも友達はいないですけれど」
 彼にしても友人は少なかった。親友と言えるのはやはり希望だけなのだ。そうした意味でだ。真人もまた希望と同じなのだ。苦しい境遇にあるのだ。
 だがそれでもだとだ。真人は言うのだった。
「写真、好きですから」
「昔から。写真撮るの好きだよね」
「はい、それにです」
「写真を撮る為に動き回ることも」
「好きですよ。特に鉄道が好きです」
 真人は笑顔で話す。彼は鉄道マニアでもあるのだ。
「重い荷物を担いで、ですけれど」
「あれ本当に大変だよね」
「写真、特に列車を撮ることはです」
 それはだ。何かというと。
「もうスポーツですね」
「そこまで凄いんだね」
「はい、いいスポーツですよ」
 写真を撮ること自体がだ。まさにだというのだ。
「お陰でストレスも溜まらないです」
「いいね。写真も」
「遠井君は自分では写真は撮られませんね」
「見る方専門だよ」
「そうですね。子供の頃から」
「ちょっと。自分で動いて撮るのはね」
 それはだ。どうかとだ。希望は困った微笑みになって述べた。
「苦手なんだよね」
「だから僕が撮った写真を見てくれていますね」
「そうしているんだ。いつも見せてくれて有り難うね」
「いえ、それは僕の言葉ですから」
「友井君の?」
「はい、見てくれて有り難うございます」
 見せる側からの言葉だった。
「本当に嬉しいんですよ。見てもらって」
「撮った写真を。僕が見て」
「そうですよ。写真は見てもらう為に撮るものですから」
 だからだというのだ。
「僕も嬉しいんですよ」
「そうだったんだ」
「そうですよ。ですから」
 だからだと。真人は笑顔の、彼もそうなっていた爽やかな笑顔でだ。希望に言った。
「これからもお願いしますね」
「うん、僕でよかったら」
「見て下さい、僕の写真」
「そうさせてもらうね」
「今度は。地下鉄を撮りたいと思っています」
 真人は笑顔でこれからの考えを述べた。
「大阪の地下鉄を」
「谷町とか走ってるあれをなんだ」
「地下鉄のあの暗がりから出て来る」
 地下鉄のホームにだ。そうしてくるのがだというのだ。 
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