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レーヴァティン

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第二百二話 命の重さをその二

「そういうことや、だからどうしても悔やむけどな」
「最初から知っていればとか」
「けどしゃあない、人間はほんま白紙や」
 生まれたその時はというのだ。
「何も知らん、人生の中でや」
「その白紙に何かと書かれていくな」
「そういうもんや」
「そこには命のこともある」
「そういうこっちゃ、そしてな」
「今の俺達もか」
「命のことを知って」
 そうしてというのだ。
「ハブ退治をしてな」
「無駄に命を奪わない様にしているか」
「そういうこっちゃ、ただこれをええ歳になってなってもわからんとな」 
 それだけの年齢になってもというのだ。
「あかんやろな」
「そういう人いるね」 
 桜子もどうかという顔で応えた。
「世の中には」
「そうだな、飼っている犬や猫を平気で捨てる奴だな」
「そういう奴いるね」
 桜子は英雄にも言った。
「そうだね」
「実際にな、しかしな」
「そうした奴はね」
「命を平気で粗末にする奴はだ」
「平気で裏切るね」
「旅行に行くだけで飼い猫を保健所に捨てた馬鹿がいたという」
 英雄はこれ以上はないまでの嫌悪を己の声に込めた、そうしてそのうえでさらに話をするのだった。
「保健所の人に殺処分されるがと言われたがな」
「それでもだね」
「いいと言った、しかも猫が殺されるので自分の娘が泣いたが」
 それがというのだ。
「その娘に猫と旅行どっちかを選べとだ」
「泣いてる自分の娘に?」
「そうだ、怒って問い詰めた」
「自分を旅行に行かせろだね」
「本音はな」
「命踏み躙ってそして自分のちょっとした楽しみ味わうなんてね」
「こいつはどんな悪事もすると確信した」
 英雄は言い切った。
「娘の悲しみさえ平気で己の欲の犠牲にするからな」
「あたしも思うよ、その親どんな悪事でもするね」
「自分の欲の為にな」
「絶対に信用したら駄目だよ」
「俺も確信している、こいつは自分しかない」
 他のものは何もないというのだ。
「自分さえよければだ」
「他の命がどうなってもいいね」
「そんな奴だ」
 まさにというのだ。
「こいつはどんな悪事も働く」
「保健所の人も見ていて嫌だったろうね」
「旅行に行きたいならだ」
 英雄は本気で言った。
「俺が連れて行ってやる」
「地獄でだね」
「遠慮はいらん、代金はその命だ」
 地獄旅行へのそれはというのだ。
「思う存分くれてやる、ゆっくりと寸刻みにしてな」
「嬲り殺しだね」
「そんな屑には相応しい」
 命を粗末にする様な輩にはというのだ、己の些細な欲の為に。
「どうせ娘にも愛情はないしな」
「絶対にないね」
 桜子も言い切った。
「泣いている自分の娘にそんなこと言うなんて」
「外道はあくまで外道だ」
 人間ではないというのだ、人間はその心で人間となる。心が外道であるのなら姿形が人間でも外道なのだ。 
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