イベリス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三話 少しずつでもその九
「どうも父さん店長やるかも知れないな」
「店長って?」
「店長ってガソリンスタンドだよ」
娘にいただきますをしてから答えた。
「父さんは八条石油で働いているからな」
「それは知ってるけれど」
「だからお店っていうと」
「ガソリンスタンドね」
「それで父さんまだ店長やったことないから」
それでというのだ。
「今度な」
「やるかも知れないのね」
「お店には若い時にいたしな」
ガソリンスタンドにはというのだ。
「その経験もあるということで」
「店長さんになのね」
「なるかもな」
「お父さんが店長さんね」
「ああ、ただどのお店でやるかは」
このことはというと。
「まだやるかもでは」
「わからないのね」
「ただお父さんは関東担当だからな」
「関東からは離れないのね」
「まあ東京か神奈川だな」
おかずの鮭のムニエルでご飯を食べつつ言った。
「店長やるにしても」
「近くね」
「東京が一番お店多いしな」
「人も一番多いしね」
それも日本全体の話でだ、
「だからなのね」
「ああ、お店はな」
「東京の可能性が高いのね」
「ずっと東京担当で働いて来たしな」
「なら問題ないのね」
「それか神奈川だな」
東京でなければというのだ。
「あちらも知っているし」
「問題なしね」
「ああ」
全くとだ、娘に食べながら答えた。
「だからはじめての店長にしても」
「不安はなしね」
「そうだ、流石に群馬はないだろうな」
「群馬って」
そう聞いてだ、咲はどうかという顔になって言った。
「もうね」
「ああ、想像がつかないだろ」
「ちょっとね」
「同じ関東でもね」
「群馬だけじゃなくて」
ファッション雑誌を読みながら父にさらに言った。
「栃木とか茨城もね」
「想像出来ないな」
「ちょっとね」
「ずっと東京にいるとそうだな」
「ええ」
こう父に答えた。
「地域差別する訳じゃないけれど」
「東京にいたらな」
どうしてもというのだ。
「わからないな」
「そうよね」
「父さんもだ、ずっと東京にいるからな」
それでとだ、父も答えた。
「それでな」
「そうした場所に行くとかも」
「想像出来ないな、あと埼玉もな」
「埼玉って隣じゃない」
咲は父にすぐに言った。
「それもね」
「このお家がある足立区の隣だな」
「もうすぐそこじゃない」
それこそというのだ。
ページ上へ戻る