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レーヴァティン

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第二百一話 関東から戻りその七

「話を聞いて江戸だと思った」
「この浮島でもそのままじゃのう」
「起きた世界程武士は多くなくともな」
「やっぱり武士がおるからのう」
「だからな」
 それ故にというのだ。
「この浮島では安土がそうなってきているが」
「あそこは武士の街になってきちょるからな」
「腹に包丁を入れる、切腹はな」
 これはというのだ。
「あってはならない」
「そうじゃからのう」
「背中から包丁を入れているな」
「そうじゃな」
「これは納得した」
「その地の文化ぜよ」
「まさにな」
「そうでありますな、では今日の昼は」
 峰夫も言ってきた。
「鰻でありますな」
「鰻丼だ、そして吸いものもな」
「肝の」
「それもあり蒲焼きもな」
「鰻尽くしでありますな」
「そうだ」
 まさにというのだ。
「だから俺も楽しみだ」
「そうでありますか」
「確かに俺も鰻は西国だ、いや」
 英雄は自分の言葉を訂正して言った。
「鰻もだ」
「他の食べものもでありますな」
「やはり西国だ」
 こちらの料理だというのだ。
「何といってもな、しかし江戸のものもな」
「好きでありますか」
「第一は西国だが食ってみるとな」
「いいでありますか」
「うどんは抵抗があるが食える」
 こちらはというのだ。
「それでもな」
「あの黒いおつゆも」
「墨汁の様なな」
「あれもでありますか」
「俺は食える」
「そうでありますか」
「私は抵抗があります」
 良太はとてもという口調でうどんについて言った。
「お蕎麦のおつゆもです」
「あれもか」
「はい、ざるのあれも」
 どうしてもというのだ。
「抵抗があります」
「無理か」
「我慢すれば食べられますが」
 それでもというのだ。
「あの辛さが」
「関東のつゆは違うからな」
「昆布が入っていません」
 まずはそれがあるというのだ。
「そしておろし大根のお汁とですね」
「醤油がだ」
「こちらのおつゆですが」
「辛くてか」
「そして噛まないのも」 
 この浮島でも江戸の蕎麦は噛まない、噛まないで飲んでそうして喉ごしを味わうという食べ方であるのだ。
「あれも」
「江戸独特だな」
「あれもどうも」
「噛むな」
「噛まないと消化に悪いですし」
 そもそもというのだ。
「どうしても」
「そうだな、だが俺はな」
「その食べ方もですか」
「いける」
「そうですか」
「そして食える」
「鰻もまた、ですか」
 良太は英雄に問うた。 
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