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痩せている理由

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第一章

               痩せている理由
 大学生の小谷由佳は一見痩せている。細面で長く伸ばした黒髪がその顔立ちに似合っている。切れ長の目で睫毛は長く細い眉が映えている。色はやや黒めで赤い唇と高めの鼻に大きな耳が目立っている。背は一六六ありすらりとしている。
 しかし彼女の食事はというと。
「えっ、ごっつい盛り完食!?」
「ご飯普通の四倍トンカツ三枚よ」
「それ完食したの」
「そうしたの」
「ええ、お味噌汁とお漬けものと一緒にね」
 由佳はその店で食べ終えて晴れ晴れとした顔で答えた。
「それでよ」
「凄いわね」
「よくそんなに食べられるわね」
「ある程度お味汁で流し込んだにしても」
「滅茶苦茶食べたわね」
「しかもね」
 自分達は並のカツ丼を食べた友人達はさらに言った。
「食べるのカツ丼だけじゃないしね」
「スパゲティだって五百グラム食べるし」
「パスタの量ね」
「それもぺろりだし」
「冷凍うどん五玉食べて」
「あとステーキ一キロとハンバーグ一キロ」
「インスタントラーメン三袋」
 由佳が食べる量をさらに話していった。
「回転寿司三十皿」
「いつもそれだけ食べるから」
「よくそんなに食べられるわね」
「しかもそれだけ食べてもね」 
 それでもというのだ。
「そのスタイルだから」
「いつもすらりとしてるから」
「普通そんなに食べたらね」
「食べられてもね」
 食べられることは食べられるがというのだ。
「やっぱり太るわよ」
「それもかなりね」
「力士さんみたいになってもおかしくないわよ」
「けれど何でそんなに痩せてるの?」
「それが不思議だけれど」
 皆それがわからなかった、だがそれでもだった。
 由佳は食べるとなるとかなりの量でそれでいて身体はすらりとしていた、彼女の友人達はそれが不思議だった。
 そして由佳もこのことについては笑顔で言われる言葉を聞くだけで何も言わなかった。だがそれでもだ。
 由佳は大学から家に帰るとだった。
 すぐにだ、母に言った。
「じゃあ今日もね」
「トレーニングするのね」
「ええ、それもお仕事だから」
 自分そっくりの母に言った。
「そうするわ」
「トレーニングもよね」
「それでトレーニング頑張って」
「ジムにもよね」
「今日も行くわ」
 そうするというのだ。
「頑張ってね」
「レスラーも大変ね」
 母は娘にこうも言った。
「本当に」
「いや、これがね」
 由佳は私服からトレーニング用のジャージ赤のそれに着替えながら応えた。見れば身体は引き締まっていて筋肉質だ。尚下着は上下共白だ。
「お金にもね」
「なるのよね」
「そう、それに思いきり身体を動かして」
 それでというのだ。
「いいストレス解消にもなるし」
「いいのね」
「そうなの、だからね」
 ジャージに着替え終えてまた言った。 
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