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素直でない後輩

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第四章

「そうしています」
「まあ伊藤君がいいならいいかな」
 津上はあくまで素直でない鈴にこう思った、それでだった。
 今度は伊藤に鈴のことを聞くと彼は津上に笑って話した。
「可愛いですね」
「そうなんだ」
「あの素直でない、ツンデレですね」
「ああ、そうだね」
 鈴がツンデレだと伊藤に言われてだ、津上も頷いた。
「あの娘は」
「はい、外見も性格もそうですが」
「そのツンデレがなんだ」
「可愛くて。あとお母さんが作ってくれたって言って」
 そうしてというのだ。
「お弁当持って来てくれるんですが」
「それ絶対にあれだよ」
「手作りですよね」
「そう思うよ」
「実際にかなり手が込んでいて僕の好きなものばかりで栄養バランスもよくて」
「好きなももの聞いてきたようね」
「どうでもいいとか気になったとか言ってきて」
 そのうえでというのだ。
「聞いてきまして」
「そうなんだね、じゃあね」
「絶対に手作りですね」
「間違いないよ」 
 津上も断言した。
「それは」
「そうですね」
「それでお弁当も作ってきて」
「それでなんです」
「食べさせてくれるんだ」
「毎日。お母さんが作ってくれたのが余ったって」
「お弁当箱一個だね」
 津上はこのことを問うた。
「そうだね」
「そうなんです、お顔赤くして視線を逸らして」
「あの娘らしいね」
「らしいですか」
「最初彼氏欲しいって言った時も視線逸らして素直でない口調だったり」
 それでというのだ。
「そんなのだったし」
「そうでしたか」
「あの娘は素直じゃないから」
「それで僕にもなんですね」
「そうだよ、けれど可愛いんだね」
「そうしたところがまた」
「じゃあこれからもね」
 可愛いというならとだ、津上は伊藤に言った。
「あの娘と仲良くね」
「そうさせてもらいます」
「そうしていってね」
 こう伊藤に言った、そうしてだった。
 津上は部活で鈴のそうした言葉を聞き続けた、素直でない彼女の言葉を聞いてそうして目を細めさせた。伊藤の可愛いという言葉に成程と思いながら。


素直でない後輩   完


                    2020・11・18 
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