石の格
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第五章
「そういうことか」
「そう、もうね」
「石が上にある位何でもないの」
「わかった、ではもうわしは泣かぬ」
石は二人に納得した。
「こんなことでな」
「ええ、そういうことでね」
「納得してね」
「そういうことでな」
岩はもう泣かなかった、そしてだった。
石もそのままだった、二人は岩とのやり取りを終えると帰り道についた、その途中で天は夏織に言った。
「色々言ったら納得したわね」
「岩もね」
「そうね、特にね」
「特に?」
「あんたがうんこを言ったのがね」
夏織に顔を向けてこのことを話した。
「一番効いたみたいね」
「そりゃ誰だってね」
岩にしてもとだ、夏織は天に答えた。
「うんこ乗せられたら嫌よ」
「そうよね」
「頭の上にでもね」
「付くのだけでも最悪だし」
「だからね」
「うんこが一番効いたのね、ただね」
天は夏織にくすりと笑ってこうも言った。
「女の子、女子高生がね」
「うんこを言ったことは」
「ちょっとね」
「いいじゃない、別に」
夏織の返事はあっさりしたものだった。
「女の子が言っても」
「開き直ってきたわね」
「というか誰でもうんこするでしょ」
「もの食べるならね」
「岩は違うでしょうけれど」
それは流石にというのだ。
「けれどね」
「ものを食べるなら」
「普通に出すから」
「いいのね」
「あんたもするでしょ」
夏織は天に聞き返した。
「そうでしょ」
「それはね」
天も否定しなかった。
「やっぱりね」
「だっただね」
「それならなの」
「そう、男の子の前で言わなかったら」
「それでいいのね」
「そうでしょ、じゃあ帰って」
そしてというのだ。
「お風呂入って寝ましょう」
「ご飯食べた?」
「焼きそばとご飯食べてきたわ、お味噌汁もね」
こちらもというのだ。
「そうしてきたわ」
「私まだよ」
「じゃあ帰ってから食べるのね」
「そうするわ、これで一件落着したし」
それでというのだ。
「もうね」
「これでよね」
「お家に帰ってね、肉じゃが食べるわ」
「あんたのお家の晩ご飯それね」
「あとコンソメスープよ」
「和洋折衷じゃない」
「いや、肉じゃがは元々ビーフシチューだから」
「同じ食材で調味料変えたのよね」
醤油やみりんを使うとそれになったのだ。
「だからどっちも洋食なの」
「そうでしょ、まあご飯とお漬けものはあるけれどね」
「それでも肉じゃがは洋食っていうのね」
「そう、それでその肉じゃが食べるわ」
家に帰ってとだ、天は夏織に言ってだった。
二人共それぞれの家に帰った、以後その場所で泣き声が聞こえることはなかった。二人がそこに行っても岩は喋ったがもうそれはなかった。小石を自分の上に置いたままごく普通に話すだけであった。
石の格 完
2020・11・15
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