蛇五婆
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第三章
「わかっておる」
「旦那様のことを」
「左様、どうすればよいかもわかっておる」
「では助けてくれるのか」
夫をとだ、蛇五婆は天海に問うた。
「そうしてくれるか」
「そうする、だから塚まで案内してくれるか」
「それでは」
「そなたの夫は確かに罪を犯した」
天海は知っているという顔のまま述べた。
「この山に入った人を散々驚かせたな」
「それで百年前にある坊主に塚に封じられた」
「そうであるな、しかし人を殺めておらぬし盗みもしておらぬ」
そこまでの悪事はしていないというのだ。
「だからもう罪は償った、百年もいたからな」
「それでというのか」
「うむ、もう出てもいい」
「それで旦那様を塚から出してくれるのか」
「その術は拙僧にはある」
天海はこうも言った。
「だからこれから塚まで案内してくれるか」
「それは確かなのだな」
「拙僧は嘘は嫌いだ」
天海は妖怪に約束した。
「だからだ」
「間違いなくか」
「そなたの夫を塚から出す」
「では」
「今から案内してくれ」
「わかった、ではのう」
蛇五婆は天海の言葉に頷いた、そうしてだった。
弟子を連れた彼を塚に案内した、塚は妖怪がいたその場所の後ろにあった。人の腰位の高さの草に覆われたものだった。
天海はその塚の前に来るとだった、すぐに経の様なものを唱えだした。半刻程唱えると塚が崩れ落ちて。
そこから粗末な身なりをした年老いた男が出て来た、右手には青い蛇左手には赤い蛇がある。その男が出て来て言った。
「やれやれだ」
「やっと出て来れたな」
「全くだ、百年の間塚を守ってくれていたか」
「そうしておった」
蛇五婆は夫に答えた。
「ずっとな」
「悪いのう」
「何、長い間一緒に暮らしておったのじゃ」
蛇五婆は夫に答えた。
「これ位何でもない」
「そうか」
「それよりもだ」
蛇五婆は夫に天海の方を見て話した。
「こちらの僧の方が出してくれたからな」
「そうなのか」
「礼を言わねばな」
「そうだな、かたじけない」
蛇五右衛門は女房のその言葉に答えた、そしてだった。
夫婦で礼を述べた、そうして多くの銭を出したが天海は笑ってそれはいいとした。
「それはいい」
「しかしわしを出してくれたからには」
「拙僧は銭には興味がない」
「そうなのか」
「だからいい、それよりももうな」
「二度とか」
「悪さをせぬことだ、さもないとまたな」
天海は蛇五右衛門に咎める口調で話した。
「塚に封じられることになる」
「そうだな、人を驚かせることはか」
「慎む様にな、また奥方に苦労をさせる訳にもいくまい」
「全くだ、これからは悪さはせぬ」
「その様にな、では拙僧達はこれでお暇する」
妖怪達に微笑んで述べた。
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