CROSS MY PALM
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第三章
「それをあげてね」
「教えてもらったの」
「そうしたら上機嫌で教えてもらったわ」
「それも賄賂よね」
「お金を贈らなくても」
「それでもなのね」
「賄賂になるわ、それが犯罪に入るものでなくても」
それでもというのだ。
「そうなるわ」
「そういうことね」
「そう考えたら私達もね」
「賄賂贈ってるわね」
「課長さんから決算前に焼き肉奢ってもらったけれど」
「あれも賄賂ね」
「もう細かく言えば」
そうすればというのだ。
「もうね」
「私達も賄賂使ってるわね」
「そうなるわね、昔は賄賂じゃなくて付け届けで」
そうしたものでというのだ。
「普通に贈りものしてたし」
「それも賄賂と言えば賄賂で」
「世の中普通にあるものよ」
そうだというのだ。
「これがね」
「そうなるわね」
「私も今気付いたけれど」
「考えてみればそうね」
「私達賄賂とは無縁と思っていたけれど」
「実はそうじゃないわね」
「世の中には結構あって」
そうしてだ。
「潤滑油にもなってるわね」
「ええ、あまりよくないものだろうけれど」
「世の中を動かしているものなのは事実ね」
「そうよね」
二人でこう話した、そしてだった。
私は正直先輩に二つのお菓子を贈って本当によかったと思った。それが無事に難しい仕事を成功させるもとになったのだから。賄賂は私達にも縁があるものでそしてそれでいいことにもなる。それでいいのかとも思うがそれもまた世の中と思うことにした。仕事が上手くいってよかったと思う満足感と充足感の中で。
CROSS MY PALM 完
2020・11・15
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