ロックマンX~Vermilion Warrior~
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Mission:10 フェラム
エックス達がエンシェンタス戦で負ったダメージをマッシモ以外が修理を終え、それぞれ体を休めていた。
「…決して楽な戦いではないと覚悟はしていた。例え我が身が滅びようと私構わない…だが、仲間を失うのは辛いな…」
「気紛れで、ちょっと謎めいていて変わったところのある奴だったけど…良い奴だったな、スパイダー…」
悲しげに言うアルやマッシモに同意するようにアクセルが頷いた。
「もう…死ぬのは悪い奴だけでいいのに…スパイダー、格好良かったね…」
「ギミアラ採掘場での戦いが終わってもいつも通りだと思っていたのに…こんなのって…」
「イレギュラーハンターを続けてきて、シグマとの戦い、新世代型レプリロイドの反乱、そして今までの戦いで俺は仲間を何度も失ってきた……その度に俺はそいつらの意志を継いで強くなることを誓ってきたんだ…俺は今、リベリオンの奴らの手当たり次第に叩き斬ってやりたいくらいだ…」
シナモンとゼロの声も暗く、目の前で仲間を失った痛みはシナモンにもゼロにも相当の傷を与えたようだ。
「あ~あ~、もう…あんたらしんみりさせるんじゃないよ。これだからつるむのは嫌いなんだ。」
「ちょっとマリノ」
その言い方を諫めようとしたルインだが、ゼロに止められる。
「それにしても…ちぇっ!また私も助けられたって訳だ…こうなったら、とことんまでやるよ…リベリオンをぶっ潰してやる」
それだけ言うとマッシモが横たわるメンテナンスベッドの傍にある椅子に腰掛けた。
「正直…まだ信じられないんだスパイダーのことを…スパイダーが…死んだことに…」
「うん…」
「あいつはいつも軽くて、いつも人をからかって…俺とあいつは水と油みたいだったけど……でも、時々助けてくれる大切な仲間だった…助けてくれた借りを返すことも出来なくなった俺はどうすれば…あいつはもう…いないのに…」
拳を握り締め、脳裏を過ぎるのはスパイダーと共に過ごした日々であり、時々スパイダーにからかわれたりしたがとても楽しかった。
「スパイダーのことを忘れないことじゃないかな…?」
「忘れないこと…?」
「うん、私達がスパイダーの生き方、スパイダーなりの友情、スパイダーが私達に残してくれたことを忘れないこと…そして、スパイダーが繋げてくれた命で最後の最後まで生きて戦うことが、スパイダーの想いに報いる唯一の方法だと私は思うんだ。」
「ああ…そうだな、スパイダーのためにも…戦わなければならないな…」
「あのさ、ある奴から聞いたんだけど…俺達レプリロイドには死ぬって概念はないらしいぜ」
全員の武器のメンテナンス…特にゼロのソウルセイバーを修復をしていたルナの言葉に全員の視線がルナに向けられた。
「え?それって…」
「どういうこと?」
シナモンとアクセルが全員の気持ちを代弁するかのようにルナに尋ねた。
「俺達レプリロイドは壊れたり、機能停止してもその体から新しいレプリロイドとして造り直されるから…例え別のレプリロイドになっても他のみんなのメモリー…記憶に、魂に残り続けるんだとさ……俺はこう言うの良いと思ったな…例え死んでも…みんなに覚えてもらえるってのは…だからな、スパイダーもいなくなった訳じゃないよ。スパイダーは俺達のメモリーの中で生き続けているんだ…みんなも部屋で休んでろよ。俺もちょっと仮眠取るわ」
「そうだね」
「私は残ってマッシモの看病してるよ」
ルナの言葉にルインが同意し、ルナはメンテナンスを切り上げて仮眠を取りに仮眠室に向かい、エックス達もマッシモをマリノに任せてメンテナンスルームを後にした。
「スパイダーは私達のメモリーで生き続けているか…確かに無理に死んだことを受け入れるよりよかはマシかもね」
「そうですね…でも、もし俺がもっともっと、もっともっと強かったら…マッシモ師匠みたいに強かったらあいつを救えたんでしょうか…?」
「馬鹿言うんじゃないよ。あの時誰にも何も出来なかった。あんた1人で背負い込むんじゃないよ」
「…はい」
「そう言えば、あんたに礼を言ってなかったね…ありがとう助けてくれて」
「え?」
マリノからの突然の礼に首を傾げるマッシモに苦笑しながらマリノは説明する。
「ほら、エンシェンタスの攻撃から庇ってくれただろ?」
「あ、いえ…別に礼を言われるようなことじゃあ……」
「言われるだけのことさ…あんたさ、いつも戦いになると私を庇ってくれるけど…どうして?」
「え…?そ、それは…その…」
想いを寄せる人物からの問いに赤面するマッシモ。
アーマーで肝心の顔が隠れているから赤面していることにはマリノに気付かれてないが。
「マッシモ?」
黙り込んでいるマッシモをマリノは不思議そうに見つめる。
マッシモは想いを伝えてしまおうかと思ったが、脳裏に師とスパイダーの死が過ぎり、拳を握り締めるとマッシモはマリノに頭を下げる。
「すみませんマリノさん……今はまだ言えません…」
「今は…?」
「はい…俺がこのアーマーを纏うのに…マッシモの名を名乗るのに本当に相応しい男になれたら…あなたに言います…すみませんが…それまで…待っていて下さい…」
頭を深く下げながら言うマッシモにマリノも苦笑しながら溜め息を吐きながら頷いた。
「分かったよ…待ってるよ。その時までね」
「すみません……」
「でもさ、マッシモ」
「?」
「あんたは私から見ても充分過ぎるほど強いよ」
それだけ言うと、飲み物を取りに行くマリノにマッシモは軽く頭を下げると再び空を見上げた。
そして休息を取って心身の傷を癒したエックス達は超フォースメタルのことをリディプスに報告しようとしたのだが、通信妨害によって全く繋がらない。
「くっ…駄目だ!」
「う~ん。リベリオンの通信妨害が酷くなったのかな?リディプス大佐に全く通じなくなっちゃったよ。」
「超フォースメタルとやらのことを大佐に報告したかったのだがな…」
「ねえルナ、何とかならないの?」
「いやいや、流石の俺でも無理な物は無理。ガウディル博士でも駄目な時点でお察しだ。そもそも俺は武器専門なんだぜ?」
ルインの問いにルナは申し訳なさそうに笑いながら言う。
確かにルナは色々なことをこなせる万能型だが、本職は武器製造とそのメンテナンスなので本職には劣る部分もあるのだ。
「リベリオンとの決戦を控えて、リディプス大佐との連絡が断たれたのは厳しいね」
「ああ、未だにリベリオンの戦力は未知数なとこがあるからな。リディプス大佐の支援無しとなると…ちょいと厳しいかもしれねえ」
「…何とか、奴らの妨害を止めることは出来ないかな?」
「通信妨害波の発信地点を絞り込みました…でも…」
ナナがモニターに通信妨害波の発信地点である場所を映すとアル長官が目を見開いた。
「あれはオノバン・デザート!!」
「どうしたんだよアル長官?オノバン・デザートってとこが何か問題でもあんのかい?」
「ルナさん、オノバン・デザートはギガンティスの中でもとても危険な場所なんです」
疑問符を浮かべるルナにナナがそう言うと、ガウディルが説明を始める。
「うむ、予測の出来ない流砂がいくつもあってな。あれに飲み込まれたらどんなレプリロイドも一巻の終わりじゃ!リベリオンの奴らめ、とんだ場所に施設を作りおったもんじゃ!!」
「いくら何でもあそこに乗り込むのは…」
あまりにも危険度の高い場所に顔を顰めるアルにマッシモはランサーを握り締めながら叫ぶ。
「行こう!どんなに危険でも、もう俺達はやるしかない!!」
「はい、きっとスパイダーさんが生きていたらこう言うと思いますよ?“これ以上リベリオンの好き勝手はさせない”って」
「その通りだ。それにこれから決戦に向けて危険じゃない任務なんて1つもない。そうだろう?」
「大丈夫です。必ず生きて帰りますから」
「よし、行こう。」
エックス達が早速向かおうとした時、ルナが呼び止めた。
「ちょっと待った。流石に砂漠を行くとなるとそのままじゃヤバいぜ。このローブを持っていきな。」
ルナは全員分のローブを取りに行くとエックス達にそれを渡した。
「これは何だ?」
マッシモが渡されたローブを見つめながら首を傾げる。
「バナリア大砂漠の砂嵐から身を守るための物だよ。念のための装備だよ」
砂嵐はただの砂嵐ではなく、視界を奪うだけではないレプリロイドを麻痺させる等の機能を含む化学兵器である可能性もあるのだ。
出来るだけ砂嵐から身を守れというのだろう。
「気をつけて下さいね。バナリア大砂漠には施設へと繋がっているケーブルがあるらしいので、出来るだけケーブルの向きに沿って歩いてみて下さい」
【了解!】
ナナのアドバイスに頷きながら転送システムに乗り込み、バナリア大砂漠に向かう。
バナリア大砂漠に着いたエックス達だが…。
「痛っ!?痛たたたたた!痛い痛い!これ地味に痛い!!」
いきなり猛烈に吹き荒れる砂嵐をまともに喰らったアクセルが悲鳴を上げた。
全員が即座に顔を出来るだけ露出しないようにルナから貰ったローブで身を守る。
「まさか、砂嵐がここまで酷いなんてね…ルナからローブを貰っておいてよかった。」
砂漠での任務は多々あるが、ここまで砂嵐が酷い場所はなかった気がする。
「これがナナの言っていた施設に繋がっているというケーブルか?」
ケーブルが伸びている装置を発見し、砂に埋もれているケーブルを見つめる。
「うへえ…何て面倒な任務なんだろ…」
「そう言うなアクセル…とにかく、ケーブルの向きに沿って進んでみよう」
「分かったよエックス。シナモン、はぐれないようにね?」
「はい、ルインさんも気をつけて下さい」
「マッシモ、病み上がりなんだから無理すんじゃないよ」
「分かってますよ」
ローブで砂嵐から身を守りながらゆっくりと確実に前に進んでいくエックス達。
少しでも離れてしまえば、誰かも分からなくなってしまうために固まりながら進む。
しばらく歩き続けるものの、バナリア大砂漠に来て何時間過ぎただろうか?
全く変わらない景色に感覚も麻痺しかけてきた時であった。
「ああー、何時になったら見つかるのさ…早く終わらせてルナが淹れてくれたカフェオレが飲みたいよ…」
流石のアクセルも代わり映えしない風景に嫌気が差したのか、基地に戻りたそうにしていたが、次の瞬間に前を歩いていたルインが悲鳴を上げた。
「痛いっ!?」
少し前を歩いていたルインが何かにぶつかって尻餅をついた。
「ちょっと大丈夫ルイン?あれ?これ、建物?」
ペタペタと触るアクセル。
歩く途中で散々見てきた装置とは違う感触に目を輝かせる。
「本当だ。扉もあるぞ!!」
マッシモも喜色を浮かべながら扉に手をかけるが開かない。
「あらら、ご丁寧にロックが掛かってる。こりゃあ私じゃあ解除出来そうにないね」
「仕方がない。俺はこの辺りを見てくる。もしかしたら、何かあるかもしれない」
「俺も行こう。1人で行くのは流石に危険だ」
「マッシモの言う通りだ。せめて俺も連れていけ、ルインはアクセル達を頼んだぞ」
「了解」
「分かったよ、そっちも気をつけてね」
エックス、ゼロ、マッシモの3人が辺りを見に行く。
「さてと」
入り口付近に腰掛けるルインとアクセル達。
ようやく緊張の糸が解けたのか、砂嵐が入ってこないこともあり、全員がローブを脱いだ。
「しばらくこう言う場所は遠慮したいや」
ルインは早速携帯型のエネルギーパックを取り出し、一口啜り、アクセル達もエネルギーパックの中身を啜る。
全員が此処まで来るのに消費したエネルギーを補充した。
「ルインさん、エックスさん達…大丈夫でしょうか?」
「大丈夫だと思うけど…しかしこの砂漠、レーダーも何も使い物にならないね…」
「大丈夫だよ。エックス達がそう簡単に死ぬもんか。スパイダーから貰った命を無駄になんかしないよ」
「そうだね、あいつらのことは気に入ってるからね…死なれたら困るよ」
「はい…でも…嫌な予感がするんです…」
「シナモン…あまり縁起でもないこと…」
アクセルがシナモンに注意しようとしたその時である。
僅かだけ全員の耳にエックス達の声が聞こえたのだ。
「この声は…!?ま、まさか!!」
「あっ!?待ってよルイン!僕も行くよ!!」
いきなり駆け出したルインをアクセル達が追いかけて声が聞こえた場所に辿り着くと、そこには流砂と飛行型の女性レプリロイド。
「あら?お仲間?」
「あんた…エックス達をどうしたのさ?返答次第じゃタダじゃおかないよ?」
「エックス達?ああ、坊や達なら流砂に飲み込まれちゃったわよ?落としたのは私だけど」
「そ、そんな…エックスさん達まで…」
スパイダーに続いてエックス達まで死んでしまった。
そのことに力なく膝を着いてしまうシナモン。
「しっかりしなシナモン!あいつらがそう簡単に死ぬわけ…」
「死ぬわけない!!絶対に!!」
マリノがシナモンを支え、ルインがエックス達の死を認めようとはしなかった。
「あんたさ…覚悟は出来てるよね?」
「覚悟?何の覚悟かしら?」
「スクラップになる覚悟さ…!!」
殺気を放ちながら、オートバレットを構えるアクセルに女性は嘲笑を浮かべる。
「スクラップ?悪いけどそれになるのは坊や達よ。それから私の名前はフェラムよ」
「どうでもいいね。イレギュラーの名前なんか…マリノさん…シナモン連れてここから離れて。」
「アクセル!?」
「こいつとまともにやり合えるのは空中戦が出来る僕とルインだけだ。全員で戦えば楽かもしれないけど、視界も何も利かないこの場所じゃ、同士討ちになるかもしれないから」
「…そうだね、シナモンを連れて早く離れて」
この酷い砂嵐ではセンサーもまともに機能しないために、同士討ちを避けるためにもマリノとシナモンには離れてもらうことにする。
「ルイン、アクセル…」
「お願い、私達に任せて早く」
「分かったよ。死ぬんじゃないよ2人共!」
マリノはシナモンを抱えてこの場を離脱し、ルインとアクセルがZXセイバーとオートバレットを構える。
「行くよアクセル!」
「OK!!」
ルインはフェラムの弱点属性のHXアーマーに換装し、アクセルは背部の可変翼を展開して空を舞う。
「私の動きについて来れるかしら坊や達!!」
「私はかなり昔のレプリロイドなんだから子供扱いされる覚えはないよ!」
「僕も同じくさ!」
オートバレットを構えると、フェラムに向けて放たれるショット。
フェラムは空中戦に特化したレプリロイドであるために機動力を得るために装甲は薄いはずだ。
「ふふ、どこを狙っているのかしら?」
「え!?」
ショットがすり抜けたことに驚愕するアクセル。
確かにフェラムに直撃させたはずなのに。
「アクセル、あれは半実体のエネルギー分身!カゲロウと同じ原理だよ!!」
「ご名答。私のクリムゾンシェードの正体に気付くなんて流石は伝説のイレギュラーハンターね。そおら!!」
電磁ウィップをアクセルの背中に叩きつけて吹き飛ばす。
「うぐっ!?」
「アクセル!離れて!!」
HXアーマーの推力に物を言わせた機動力でフェラムとの距離を詰めてダブルセイバーで両断しようとするが、伊達にイプシロンの側近ではないのか、フェラムもルインと互角かそれ以上の機動力で迎え撃つ。
「こいつ、速い!」
「旧世代のレプリロイドに負けられないのよ、喰らいな!!」
「くっ!!」
電磁ウィップの攻撃をセイバーで受け流すものの、変幻自在の攻撃にルインは顔を顰める。
「テラブリザード!!」
「うわっ!?」
氷属性のテラブリザードを喰らい、落下してしまう。
多少のダメージは受けたが、落下するほどではなかったはずだと頭部と背部のバーニアを確認すると、バーニアが凍結していた。
これではエアダッシュもホバーも使えない。
「まだまだ!!」
続いてアクセルの足に電磁ウィップを巻き付け、細い腕からは想像出来ない力でアクセルを何度も地面に叩き付ける。
「うわああああ…!こ、このおっ!!」
叩き付けられながらもオートバレットを構えてショットを放ち、フェラムの電磁ウィップを切断するとハイパーモード・ステルスモードを発動する。
発動中は光学迷彩で姿を消し、攻撃性能も飛躍的に上昇するのだが…。
「そこよ!テラブリザード!!」
「がっ!?」
テラブリザードをまともに喰らい、地面に墜落するアクセル。
「アクセル!?大丈夫!?」
「ふふ、馬鹿ね。こんな砂嵐が吹き荒れる場所で光学迷彩を使ってもバレるに決まっているじゃない」
「っ…しまった…」
頭に血が上り、こんな初歩的なミスをしてしまった。
「私を相手によく頑張ったわ坊や達。今からエックス達の後を追わせてあげる」
「…ふざけないで…私達は死ねない…スパイダーの想いに応えるためにも!こうなったら真の力を見せてあげる。後悔しないでよね!!OXアーマー起動!!」
最強のアーマーであるOXアーマーを解放し、ルインはアルティメットセイバーを構える。
「へえ、何かと思えば空も飛べないアーマーなんてね。それで私を倒せると…!?」
次の瞬間、ルインの姿が掻き消え、フェラムは悪寒を感じて上昇すると先程まで自分がいた場所にルインがセイバーを横薙ぎしていた。
もし少しでも反応が遅れていたらフェラムは真っ二つに両断されていただろう。
「どうしたの?顔が恐怖で引き攣ってるよ」
「舐めるんじゃないよ!」
電磁ウィップを振るってもOXアーマーで五感も機動力も上昇しているルインには掠りもせず、不意のテラブリザードにも対応されてしまった。
「ふふ、余裕が無くなってきたね。地獄行きはどうやら君のようだよ?」
「少しくらいのパワーアップで調子に乗るんじゃないよ!こっちには超フォースメタルの力があるんだ!」
「それじゃあ、そのガラクタの力と私の力のどっちが上か確かめてみようか」
更にスピードを上げてフェラムに斬りかかるルインにフェラムは防戦一方となる。
「くっ!どこまでスピードが上がるんだ…!あんたは底無しなの!?」
「さあどうだろう?それよりも私ばかりに目を向けていて良いのかな」
「何…?ぐあっ!?」
何もない空間からの銃撃を翼にまともに受けたフェラムは体勢を崩して地面に叩き付けられる。
「ふう、意外にバレないように調整するのは疲れるね」
「何だって…!?こんな短時間でこの砂嵐に対応したって言うのかい!?」
「そう言うことだよ!!さあ、たっぷりと喰らいなよ!!」
ステルス時の攻撃力アップを活かしてフェラムにオートバレットでの連射を浴びせる。
「きゃああああっ!!」
防御力が低いフェラムにはかなり効果絶大で、相当なダメージを負ったようだ。
「とどめっ!!乱舞!!」
一瞬で間合いを詰めると、全エネルギーを解放して超速の連続斬りを浴びせ、最後はジャンプしながらの斬り上げが炸裂した。
「ぐっ!!」
斬り上げをまともに喰らって吹き飛んだフェラムのボディに深い裂傷が刻まれており、戦闘続行が不可能なのが分かる。
「ふう…君を倒してスパイダーへの手向けとしようか」
「きゃああああっ!?」
セイバーを構えて膝をついているフェラムに近寄るルインだったが、シナモンの悲鳴に慌てて振り返ると巨大なメカニロイドであるDーREX数体にシナモンとマリノが襲われていた。
「アクセル!!」
「仕方ないね!了解!!」
フェラムを放置してシナモン達の救助に向かい、その隙にフェラムは逃走してしまった。
構わずに2人はDーREX達を破壊し、シナモンとマリノを救出し、疲弊したルインとアクセルはOXアーマーとステルスモードを解除して先程の建物に戻り、休息を取った。
「ありがとうございます…」
「悪いね…あんなデカブツ相手じゃ分が悪くてさ」
「大丈夫だよ、フェラムは逃がしちゃったけど…一度戻って救助隊の要請を…」
「その必要はない」
【え?】
背後から聞こえたゼロの声に振り返ると、背後の建物の扉が開いて体のあちこちが汚れているものの、五体満足のエックス達が姿を現した。
「エックス!ゼロ!マッシモ!良かった、無事だったんだ!!」
「運が良かったんだ。運良く砂漠の下の地下断層に出たようで何とか九死に一生を得たよ」
ルインが3人の生存を喜び、マッシモが生き延びた理由を説明してくれた。
悪運が強い3人に全員が安堵の息を吐いたのであった。
一方、フェラムは悔しげに唇を噛み締めており、最初は優位に戦っていたのにルインがハイパーモードを発動させられた途端に逆転されたという事実はフェラムのプライドを激しく傷つけた。
「次は…こうはいかないよ」
激しく傷付いた体に負荷をかけない速度で、フェラムはバナリア大砂漠を離れたのであった。
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