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アマゾンからイギリスに来た犬

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第一章

                アマゾンからイギリスに来た犬
 イギリス人のデヴィッド=フォスターはこの時アマゾンのクルージングツアーに参加していた、額が広く大柄で恰幅のいい中年男性である。
 その彼がある島に入った時にだった。
 黒く痩せ細った耳が立った大型犬を見付けた、デヴィッドはその犬を見て一緒にいる妻のジェーンに対して言った。
「また随分と酷いな」
「ええ。、ボロボロね」
 妻もその犬を見て言った、ブロンドの髪でグレーの目のやはり恰幅のいい中年女性である。背は夫より頭一つ低い。
「これはまた」
「あちこち怪我してな」
「蚤もいそうね」
「随分きお読だ、だからな」
 それでというのだ。
「この子を助けるか」
「そうするのね」
「ああ、この国の保護施設に預けて」
「飼い主を探してもらうのね」
「そうしよう」 
 こう話してだった。
 彼はその犬を保護して船の中に入れた、しっかりと船長に話もした。
 そうして保護施設に預けるまで一緒にいるつもりだったが。
 ネグリータと名付けたその犬、雄だった彼と共にいるうちにだった。彼も妻も愛着が湧いてきてそうして二人で話す様になった。
「出来るだけな」
「一緒にいたいわね」
「そうだな、けれどな」
「ブラジルだからね」
「イギリスに連れて来ることは難しいからな」
「それもかなり」
「だからな」 
 それでというのだ。
「それはな」
「難しいわね」
「本当にな」
 こう話していた、そんな中だった。
 犬が嫌いなツアーの参加者がネグリータを嫌いこっそりとだった。
 彼をツアーの途中で立ち寄った島に置き去りにした、夫婦はすぐにこのことに気付いて船長に直訴した。
「あの娘も命だ」
「ですから助けたいんです」
「悪いが島に戻ってくれないか」
「すぐに助けたいんです」
 船長を必死に説得してだった。
 そのうえで船を島に戻してもらった、するとネグリータは船が去ったその場所でずっと待っていた。その彼を迎えると。
「ワンワン」
「済まない、私達がしっかりしていたら」
「こんなことにならなかったわ」
「もう大丈夫だからな」
「安心してね」
 夫婦で彼を抱き締めて話した、このことからだった。 
 夫は妻に真剣な顔で話した。
「もうな」
「ええ、ネグリータをね」
 是非にと言うのだった。
「助けましょう」
「イギリスに連れて帰ってだ」
「私達の家族に迎えましょう」
「そうしような」
 二人でこう話した、そしてだった。
 二人はツアーの間ネグリータを護り続けそれが終わるとだった。
 ブラジルのある動物保護施設のスタッフで英語を話せるタミス=ボンゾ褐色の肌に肉付きのいいスタイルの彼女に事情を話した。
「そういうことでね」
「お願い出来るかしら」
「書類手続きは全部するから」
「この子がイギリスに来るまで面倒を見てくれる?」
「いいですよ、ただ」 
 タミスは夫婦の願いを受けた、だが。
 どうかという顔になってそうしてこうも言った。
「ブラジルからイギリスまでになると」
「大変だね」
「人間の様にはいかないわね」
「書類手続きや衛生チェックがありますから」
 だからだというのだ。 
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