DQ3 そして現実へ…~もう一人の転生者(別視点)
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私は哀れな人質です。
私の首筋には料理用のナイフが当てられており、首輪をした不男に囚われております。
何故にこうなったのでしょうか?
ちょっと振り返ってみましょう…
半泣き不男と共にラダトーム城を家捜しする私達は、家臣達の嫌味に耐え(若干1名だけ毒舌返答)ながら便利魔法『レミラーマ』で、隠し部屋を探します。
ゲームではキッチン付近に隠し部屋があったと記憶していたので、重点的に探してもらおうと思い『きっと薄暗くて探しにくい、こう言った壁際にアイテムが隠されてるんですよ!レミラーマがあれば探し出せますわ…きっと』と発言。
その際に、人々が常用する部分と逆の場所である薄暗い部分へ出張り、皆にアピールしました。
どうやらそれが失敗の元でした…
突如不男が、テーブルに置いてあった料理用のナイフを手にし、私を抱き上げ人質にしたのです!
「おっと…動くなよ。いい加減キサマ等に顎で扱き使われるのは飽きてきたぜ!この娘の命が惜しかったら、オレの首輪を外しな!そうしたら娘は離してやるし、太陽の石も探してやるよ…へっへっへっ、お偉いさん方を怒らしちまったから、アイテムを見つけないと立場がないんだろ?もうオレを殺せねーよなぁ?」
ハッキリ言います…本当に怖いです!!
だって誰も助けられない状態ですよ!
ウルフに目を向けても、剣に手を当ててはいるが身動きが取れないでいます!
もう本当に怖くて泣きそうになってますけど、辛うじて泣くのを堪えていると…
「お、おい!!?う、動くなって言ったろ!!つ、つ、次動いたら…「お前を殺すぞ!」
空気を読まないのか、お父さんが一歩踏みだし恫喝し始めました。
ちょっとヤメテよ!
私、死にたくないの!!
不男も声が裏返るほど動揺してるわよ!
手元が滑ってナイフが首を切り裂いちゃったらどうすんのよ!?
「俺の娘に傷一つでも付けてみろ…その空っぽな頭を握り潰してやるぞ!」
まっず~い!
空気を読んでないどころか、お怒りモードで我忘れちゃっておりますわ!
「お、おい…オレを殺せるのか…?こ、殺したら…レ、レミラーマが使えず…ア、アイテムを探せないだろ…?そ、そ、それでもいいのかよ!こ、この首輪を外せば、手伝ってやるって言ってんだぜ!?」
「もう憶えた!お前に何度も見せてもらったから、レミラーマを憶えた!だからさっさとマリーを離し、ナイフを捨てろ!さもないと殺すぞ…」
あぁ…もうダメだ…
言うに事欠いてそんなハッタリをかますとは…
折角幸せになれたのに、私の人生はもうお終いなのね…
「はぁ?憶えたぁ!?盗賊のみが憶えられるレミラーマを、テメーが憶えたって?あはははは、とんだハッタリ野郎だな!どうやらこの首輪もハッタリなんだろう…その確信が持てなかったから脅えてたけど…もうアイテム探しを手伝ってやる必要はなさそうだなぁ!!わははははは!」
不男に全てのハッタリがバレてしまいましたわ…
ウルフ…私…貴方と別れたくないよぉ………
永遠一緒に居たかったよぉ………
「レミラーマ!」
突如お父さんが左手を翳し、アイテム探知の魔法を唱える。
するとお父さんの左手から眩い光が発し、キッチン内の薄暗い壁に向かって集まって行く!
「ほう………どうやらお前ではなく、俺が先に太陽の石を見つけ出した様だ…コレでお前は用済み…生かしておく価値は無くなった!………もうお前が持っている延命理由は1つ………俺の娘を無傷で解放する事…それだけだ!」
何なのこの男…
一番ハッタリっぽい言葉が、一番真実を語っているなんて…
でも私が人質として、命の危機に晒されている事実は変わらない。
「コレが最後だ…俺の、娘を、さっさと、離せ!」
しかし、そんな事実を無視する様に、お父さんは更なる一歩を踏み込んで不男を脅し続ける。
そんな男の恫喝にガクガクブルブル震える不男…
不男の気持ちも解らないでもない…
『メガンテの首輪』がハッタリであるだろうと薄々は感付いていたのだろうが、確証がなく思い切る事が出来なかったのだ。
しかし、奴が使う『レミラーマ』を見て『憶えた』等とハッタリを言うお父さんを見て、言う事の全てがハッタリだと確信した不男は、内心でガッツポーズをしたのだろう。
時間にして数十秒だが、全てを手に入れた気分になったに違いない。
しかし、それこそが幻だったのだ!
一番ハッタリじみた言葉を、真実にしてしまう男が此処にいた。
三日天下どころか数秒天下という哀れな結末。
不男は力無くナイフを落とすと、私を抱えていた腕からも力が抜けて行く。
私は慌てて不男から離れ、自身の安全を確保する。
ウルフは私の安全が確認出来た途端、凄い跳躍で不男に鉄拳をめり込ませました!
格好いいッス!…マヂで格好いいッスよ!!
今夜は赤玉が出るまで寝かさない!
「マ、マリー!!大丈夫か!?け、怪我は無い?大丈夫なの?」
「大丈夫…うん、大丈夫だよ」
私はウルフに抱き締められ、安堵からか涙が零れてきた。
「な、なぁ旦那…許してやってくれないか?コイツもアンタが相手だったから、あんな事をしちまったんだ…アンタは強すぎるから…」
ゔ~…ぶっ殺してほしいのに、カンダタのアホがヤツを庇ってる!
お父さんは冷たい瞳で不男とカンダタを睨むけど…
「お前がしっかり押さえ付けておけ!ちょっとでも暴れたら、お前事バギクロスで細切れにするぞ!」
と、カンダタの嘆願を受け入れる。
そして私の身を案じて顔面蒼白になっているお母さんへ近付くと、優しく抱き締め涙を受け止める。
私もまた、ウルフの胸に抱き付き泣きはらした。
本当に怖かった…
さて…
お父さん達に不男の始末を任せた私とウルフ…それとアメリアさん・ミニモン・ラーミア達は、先に宿屋へと戻り各自の部屋で休息を取る。
と言っても、私とウルフはファイト一発だ!
ファイト二発目に移行しようと思った所で、お父さん達が帰ってきたらしく、食事の誘いでドアをノックされた。
昨晩のお兄ちゃんとアルルさんくらいビンビン・ヌレヌレでしたが、行かぬワケにもまいりません。
イチャイチャしながら食堂へ行くと、お兄ちゃん・アルルさん・カンダタ・モニカさんが戻ってきてませんでした。
本当は帰って来るのを待つのが礼儀なのでしょうが、さっさと食事を終わらせて、先程の続きを再開させたい私達は、『お父さん…先に食べてはダメかしら?』と、立前で確認を取り返事を待たずに食べ始めた。
そんな私を怒るでもなく、お父さんも食事を始めてしまいました。
そして暫くすると、お兄ちゃん達も戻ってきたみたいで、疲れ切った表情で近付いてきます。
「お帰り…悪いけどお腹空いちゃったから先に食べてるよ。ティミー達の分も頼んであるから、遠慮無く食べてよ」
豪快に食事を掻き込みながら、爽やかな笑顔と共に軽い口調で謝るお父さん。
“ドン!”と大型犬用の首輪をテーブルに置くと、溜息を一つ吐いて、
「ったく…ハッタリならハッタリだと、あの場で教えてくれても良いじゃないですか!」
と、不男の首輪が爆発しなかった事を報告してくれるお兄ちゃん。
良く意味が分かりませんね?
ハッタリなのは分かり切っていた事でしょうに?
何が不満なんでしょうかねぇ?
チラリとお母さんを見ると、
「リュカはね、バコタにハッタリだと教えず、最後までハッタリを貫き通して留置場に置いてきたのよ。首輪を外さず離れて行く私達に、泣きながら懇願するバコタを眺め、悦に浸りながら…♥」
と、コッソリ教えてくれました。
あぁ、だからお兄ちゃん達は、ハッタリなのかを確認する為見届けて来たのか!
やっと彼等だけ帰りが遅かった理由が分かったわ。
あんな不男、放っておけばいいのに!
「(ニヤリ)アイツ…どうだった?」
お父さんは嬉しそうに不男の反応を確認する。
「…首輪が爆発しないと確認すると、凄い勢いで外し床に叩き付けてました。悔しそうでしたよ…」
よしっ!いいね、い~いね!!
私は勿論、ウルフも盛大にガッツポーズで喜びを表す。
そんな私達に呆れながら、カンダタが今回の出来事に不平を言い出した。
「しかし…アイツを騙すのなら、俺達にも全容を教えてくれても良かったんじゃねーの?何で俺達にまで秘密にしたんだよ!」
仲間はずれが気に入らないのか、口を尖らせて拗ねるカンダタ…お前がソレをやっても可愛くねぇよ。
「ダメだね!特にお前には事前に知らせられない…」
「な、何でだよ!俺が裏切るとでも思ったのか!?」
コイツは自分の事を分かってないな…
「そうじゃない…僕はお前の事を信用している。だがお前は嘘が下手だ!事前に知らせていたら、お前は奴を見る度にニヤケてただろう…話では、お前と奴は以前仲間だったそうじゃないか。お前の性格から、昔の仲間が不遇な目に遭っているのに、ニヤケて居る事は不自然なんだ。お前が一際奴を気遣っているからこそ、奴はあの首輪をハッタリだとは断言出来なかったんだ。お前の事を信用してない訳では無いが、今回はその長所が仇となる事例だったんだよ…」
「な、なるほど…でも、ティミーには知らせて、俺達には知らせてくれないのはズルイなぁ…」
違うわよ…今回の事はお兄ちゃんの独断で、お父さんに話を合わせたんですぅ!
「それは僕にも計算違いだった。まさかあそこでティミーが気付き、僕に話を合わせてくるとは…お陰で時間短縮出来たよ!いや~…柔軟な思考が出来る様になったもんだ!愛する者が出来ると、人はこうも変わるものなんだねぇ…」
お父さんはお兄ちゃんの変化に感心しながら、格好良くグラスを掲げ称えてる。
お兄ちゃんも爽やかにサムズアップで答えました。
格好いいんだな、この二人!
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