Fate/WizarDragonknight
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ムー大陸
「ムー大陸は、この世界の暦で言えば、一万二千年前にあった大陸。それは知っているな?」
キャスターは、どこからともなく分厚い本を取り出し、机に置いた。辞典のように分厚い、十字架のブックカバーがついたそれは、彼女が戦闘の時にいつも使っているものだった。
「遺跡でも言ってたよな」
そういったのは、コウスケだった。カウンター席でクルクル回転しながら、「確か」と始める。
「一万二千年前の高度な文明。今よりも進んだ文明を持っていたにも関わらず、なぜか一夜にして海の底に沈んだって言われてるぜ」
「コウスケさんも結構詳しいね」
と友奈。
「これでも考古学専攻だからな。ま、教科書にも滅多に乗らねえ眉唾物だがな」
「眉唾物?」
「ああ。確か、太平洋に存在したって言われててな。ハワイとか、イースター島が地続きになっているって言われていたんだぜ。で、一夜で水没した。でも、調査でいろいろと信憑性が下がっていったんだ。この前博物館でやっていた展示だって、否定している学者は大勢いるぜ?」
「もともとムー大陸は普通の大陸ではない。発展した電波文明により、空を飛んでいたのだから」
「「「空!?」」」
可奈美と友奈と真司は同時に驚愕した声を上げた。
「遺跡でも言ってたな」
ハルトの言葉に、キャスターは頷いた。
キャスターは続ける。
「栄えた電波文明のムー。それは、互いの繋がりが弱まったことによって滅びた。自ら強大になりすぎた力を制御できなかった」
「……」
ハルトは押し黙った。
だが、それに耐えられなかったのは、真司だった。
「待ってくれ。その……ムー? ってのがすごいのは分かったけど……ハルト、そいつが俺たちと何の関係があるんだ?」
「そいつはオレが答えるぜ」
ハルトが口を動かすよりも先に、コウスケが口を挟んだ。
「響の体に起こった変化、さっきほむらがオレたちの前で見せた暴走……それはきっと、ムー大陸と無関係じゃねえ」
「は? 響ちゃんの変化って……」
そこまで言って、真司は口を閉じた。
ハルトは彼がなぜ口を閉じたのか分からず、「どうしたの?」と聞き返した。
「もしかして……さっきの、あの騎士みたいな姿のことか?」
「!? 見たの!?」
「あ、ああ……」
「ベルセルク……やはり発現したか」
キャスターがその言葉を発した時、彼女が目を細めたのをハルトは見逃さなかった。
「知ってるよね? そもそも、キャスターだってあの石を狙ってたんだから」
「……」
彼女は本の上で手を撫でる。すると、触れてもいない本が勝手にパラパラめくられていった。風に煽られるようにページが入れ替わり、やがて恐竜の頭の化石をしたような石が描かれたページが現れた。
「オーパーツ、ベルセルク。それが、ランサーの体内に取り込まれた石の名前だ」
「……それをバングレイは、ベルセルクの剣って呼んでたのか」
「ムー大陸は異世界にも侵略を企てていた。外宇宙にも進出しようとしていたとしても不思議ではない。あのバングレイは、そこからムー大陸の力を知って地球に来たのだろう」
「迷惑な古代文明だね」
ハルトはため息をついた。
キャスターは本のページに指を差し込んだ。すると、ページの表面が波立ち、彼女の指が描かれている恐竜の石を引っ張り出した。
開いた本の形をしたケースみたいだな、とハルトは思った。
「さきほど私とマスター。そして、ライダーとランサーのマスターとともに入手したこれは、ダイナソーのオーパーツ。そしてもう一つ。シノビのオーパーツの三つが、現在ムーの封印を司っている」
「シノビ?」
ハルトは眉をひそめた。
「シノビってことは、忍者? でも、そんな石、この局面になっても影も形も見せてないよ?」
「あの……」
その声は、友奈だった。彼女は可奈美とも顔を合わせ、「間違いないよね」と頷きあっている。
「多分それって、前にリゼちゃんの家から盗まれたものじゃないかな」
「何?」
それはキャスターにとっても初耳だったらしく、目を大きく見開いている。
友奈の言葉を、可奈美が引き継いだ。
「ハルトさんには言ったよね。前に私と友奈ちゃん、あとココアちゃんとチノちゃんと一緒にリゼちゃんの家に行った時、怪盗の処刑人が現れたって」
「ああ。確か、盗まれたものがあいつに……ソロに盗まれた……まさか……」
「あれが、オーパーツ、シノビだったんじゃないかな」
「手裏剣の形をしてたよ!」
友奈の言葉に、キャスターの顔が険しいものに変わる。
「ベルセルクのオーパーツがこの地を訪れたのは、偶然が生み出した不幸としか言えないな。すでにこの騒動の根本には、ムー大陸の復活がある」
「滅んだ文明の復活……」
「でもよ。それって悪いことなのか?」
コウスケが水を飲みながら聞いた。
「自業自得で滅んだ文明っつってもよ。今よりも発展した技術が山盛りなんだろ? 空飛ぶ大陸なんてくらいだからな。それがあれば、今の文明だって発展するんじゃねえの?」
「……無理だな」
キャスターは首を振った。
「ムー文明は、今の世界とは全く比べ物にならない文明だ。赤子に精密機械を作らせるようなものだ。解析の一つも出来ないだろう」
「それ大袈裟じゃね?」
コウスケの言葉に、キャスターは首を振るだけだった。
「ねえ、だったら、響ちゃんはどうなるの?」
友奈が話に割り込む。
「そのオーパーツを取り込んだ、響ちゃんはどうなるの? さっきの騎士みたいな姿、とても尋常じゃなかった。あれで、もしかして響ちゃんの体を壊したりするのかな?」
「本来ならば、取り込まれた時点でベルセルク……サンダーベルセルクになり、そのまま死ぬまで暴走するはずだ。だが、彼女は無事だ。シンフォギアというものの特性なのか、それとも彼女自身の器が成せる業なのか」
「そっか……じゃあ、当面は心配ないんだね?」
「おそらく」
だが、彼らが話している間、ハルトはもう一人の当事者のことを思い出していた。
「キャスター。あいつは……ソロのことは、何か知らないか?」
「……」
その名前に、キャスターは目を細めた。
すると、可奈美が後ろからツンツンと、ハルトの肩を小突く。
「ハルトさん。ソロって?」
「可奈美ちゃんも会ったんでしょ? 突然襲ってきた、黒と紫の戦士」
「ああ……あの人、ソロって言うんだ……」
可奈美は目を少し大きく見開く。
「もしかして、ハルトさんも?」
「さっき戦った。俺とコウスケは、遺跡に行ったんだけど、そこがムー由来の遺跡だったらしくてさ。そのオーパーツを巡って、ソロと戦ったんだ」
「そうだったんだ……」
「彼のことは、私にも分からない。だが、あの姿は……」
キャスターは目を閉じる。
「知ってるの?」
「……ブライ」
「ブライ?」
彼女は頷く。
「ムーの戦士の名前だ。どこかの遺跡で、ムーの遺産を手に入れたのだろう。私も直接見るのは初めてだが」
「ブライ……」
その名前に、可奈美は顔をしかめた。
ハルトは続ける。
「あいつも、聖杯戦争の参加者みたいだった。サーヴァントはまだ召喚していないみたいだけど、これから先、あいつも俺たちの敵になるかもしれない。……キュゥべえが、最大の敵になるみたいなこと言ってたけど」
「あの人の剣……今まで受けてきた剣と、何かが違っていた」
「何か?」
可奈美は、自らの右腕を抑えた。
「何か……ほら、私たち……剣を使う人って、誰でも相手と打ち合ってこそ、強くなるものでしょ? それが敵にしろ、味方にしろ」
「ああ、そうだね」
ハルトのウィザーソードガンの腕も、ファントムと幾度となく戦ってきたからこそ磨かれたものでもある。可奈美の剣も、見滝原で生活を始めてから何度も見てきて、その分彼女の腕も上がったのを感じている。
「でも、あの人の剣は違う。自分だけを信じて、自分以外の全てを拒絶する剣だった。あの剣は、ワクワクと同じくらい……冷たい剣だった」
「……」
「……待て」
キャスターが、可奈美を直視している。
「お前は以前、ブライと戦ったのか?」
「え? うん。多分、そのシノビのオーパーツ? っていうのを持っていかれたと思う」
「……」
キャスターは、自らの手に置かれたダイナソーのオーパーツを見下ろす。
「オーパーツは、その膨大な力故、使い方を知らなければ手にした瞬間、暴走する。私も、マスターに教えてから使わせるつもりだった」
「……?」
「もともとのシノビの持ち主は、おそらくオーパーツさえも取り込むことができない体だったのだろう。だが……ブライに変身できる者が、なぜオーパーツに取り込まれない?」
ラビットハウスに、沈黙が流れたのだった。
後書き
響「いやあ、食べた食べた……」
チノ「響さん、すごい食べっぷりでしたね」
響「ごはんありがとう! 美味しかった!」
チノ「以前学校で助けられましたから、ほんの恩返しです。それに、私、あれから響さんのことしか考えられなくなったんです」
響「あれ?チノちゃん、何か目が怖いよ……?」
チノ「そんなことありません。命を助けてくれた人に心惹かれるのは当然です」
響「ええ……」
チノ「そんなことより、今回のアニメ……」
ココア「チノちゃんにお兄ちゃんがいたって風の噂で聞いたよ!」
チノ「ココアさん!? いませんよ!」
ココア「うそ! 今朝のニチアサでお兄様って言ってたよ!」
チノ「私じゃないです!」
ココア「私、お姉ちゃんって呼ばれてないのに! お兄様って言ってたよ! うわあああああああああああああああ!」
チノ「ココアさんのせいで、今日のアニメ紹介ができません!」
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