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ドリトル先生と不思議な蛸

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第九幕その五

 その場所を調べました、暫くはこれといって気になる生きものはいませんでした。ですが先生がでした。
 周りにいる皆にこう言いました。
「いたよ」
「いたの」
「その蛸が」
「本当にいたの」
「この場所に」
「うん、いたよ」
 実際にというのです。
「こっちに来て見てみて」
「うん、わかったよ」
「その蛸をね」
「そうするわ」
「今からね」
「是非ね」
 こう言ってでした。
 皆は先生のところに集まりました、そして先生が指差した先を観ますと。
 そこに不思議な蛸がいました、何とです。
 全身黄色と青のストライブ模様です、赤いものは何処にもありません。皆その不思議な蛸を見てでした。
 目を丸くしてです、こう言いました。
「何この蛸」
「見たこともないよ」
「あの、黄色と青って」
「赤くないし」
「こんな蛸いるの」
「日本に」
「うん、これはヒョウモンダコだよ」
 先生は皆にその蛸の名前を言いました。
「これはね」
「ヒョウモンダコっていうんだ」
「そんな蛸もいるんだ」
「赤くない蛸が」
「そしてこんな模様の蛸が」
「うん、そしてね」
 先生は皆にです、その蛸を持っているカメラで撮影しました。それも何度も。
 水中カメラも出して撮影します、そしてです。
 周りもしきりに撮影して言いました。
「写真、画像の証拠はね」
「今ね」
「物凄く撮ったね」
「日時も入れたり」
「完璧な証拠ね」
「そしてこの蛸だけれど」
 先生はさらに言いました。
「墨を吐かずに毒を持っているんだ」
「毒をなんだ」
「じゃあ毒の息を吐くとか?」
「墨じゃなくて」
「いや、噛んでね」
 そうしてというのです。
「そしてなんだ」
「毒を相手の身体に入れるのね」
「噛んだ相手の」
「そうしてくるんだ」
「だから迂闊に近寄ったらね」
 そうしたらというのです。
「危ないんだ、河豚と同じ毒も持っているから」
「えっ、河豚って」
「猛毒じゃない」
「あたったら死ぬ様な」
「物凄い毒だよ」
「その毒もあるから」
 だからだというのです。
「凄くね」
「危険なんだね」
「あの蛸は」
「物凄い猛毒で噛んでくるから」
「それで」
「しかしね」
 皆はその蛸、ずっとその場にいてじっとしているそれを見て言いました。
「これまで散々探したけれどね」
「もう随分とね」
「それで伊勢の色々な生きものを見て」
「蛸だって一杯見てきたのに」
「これまでずっと見付からなかったって」
「どうしてかしら」
「実はあの蛸は珍しい蛸なんだ」
 先生はいぶかしむ皆にお話しました。 
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