戦国異伝供書

「言って来るしね」
「だからか」
「そう、私達は今出来ることをするだけだよ」
「じゃあこれからもか」
「そう、殿をお助けして」
「そうして働いてか」
「そしてね」
　そのうえでというのだ。
「闇が何か調べて考えていって」
「見付けたらか」
「そう、その時にね」
　さらにというのだ。
「どうするかだよ」
「そういうことか」
「そういえばです」
　命が怪訝な顔で言ってきた。
「松永殿はどうも」
「ああ、あの人か」
「はい、妙なものを感じるのですが」
「あの人はあれだろ」
　煉獄は松永にについてどうかという顔でこんなことを言った。
「もうな」
「悪い人とですか」
「わかってるだろ」
「天下の大悪人ですね」
「主家の三好家を乗っ取ってな」
　煉獄はまずこのことから話した。
「公方様を手にかけてな」
「奈良の大仏もですね」
「燃やした様なな」
　そうしたというのだ。
「もう殿の義理のお父上の斉藤様とな」
「備前の宇喜多殿ですね」
「その御二人と並ぶだろ」
「天下の大悪人ですね」
「そうした方だからな」
　煉獄は松永についてはこうしたことから話した。
「だからな」
「闇ではなく」
「悪の気ってやつじゃないか？」
　それがというのだ。
「あの人から出てるんじゃないのか」
「そうでしょうか」
「あれっ、けれど松永殿を見ていたら」
　大蛇がここで言った。
「別にね」
「別に。どうしたんだ」
「悪いもの感じないよ」
　こう煉獄に言った。
「それでお話をしてもな」
「そういえばそうだな」
　拳も言ってきた。
「松永殿はな」
「特にだよね」
「悪い人とは思えぬ」
「そうだよね」
「言われてみればそうだな、わしもあの方と話したことはあるけれどな」
　煉獄も難しい顔で述べた。
「しかしな」
「悪いものはだね」
「今わしが言ったことだがな」
　それでもというのだ。
「悪いものはな」
「感じないよね」
「悪党ってのは何かドス黒い気を背負ってるものだが」
「あの人はね」
「特にな、そんな人がどうしてなんだ」
　連合はかえって不思議に思って言った。
「あそこまでのな」
「悪いことをしているのか」
「それがな」
　どうにもと言うのだった。
「言われてみるとな」
「わからないよね」
「ああ、じゃああの人から感じられるのは何だ」
「それがです」
　命はまた言ってきた。