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歪んだ世界の中で

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第十話 思わぬ、嬉しい転校生その十四

「お友達にならないよ」
「おい、それならな」
「こうなったらな」
 千春に言われてだ。二人はお互いに顔を見合わせた。
 そしてそのうえでだ。こう千春に言ったのだった。その顔はかなり歪んでいる。そしてその歪みはだ。極めて悪意に満ちたものであった。
 その悪意を露わにしてだ。二人は言ったのだった。
「腕づくで来てもらうからな」
「こうなったらな」
「腕づく?」
「そうだよ。あんな馬鹿よりもな」
「俺達の方がずっといいって教えてやるよ」
 こう言ってだ。千春に近寄ろうとした。しかしだった。
 千春はにこりと笑ったままだ。二人の目を見た。するとだ。
 二人もだ。急に脱力した感じになってだ。
 目が虚ろになり表情が消えた。そしてだった。 
 お互いにだ。こう言うのだった。
「じゃあ今から」
「どうしようか」
「帰ればいいと思うよ」
 千春は何でもないといった感じで二人に言った。
「それでもう二度と千春にも希望にも声をかけないでね」
「うん、そうするよ」
「それじゃあ」
「君達にはこれ以上何もしないけれど」
 だがそれでもだというのだ。
「千春君達のこと大嫌いだから。顔も見たくないから」
「そうなんだ。じゃあ」
「せめて声だけはかけないよ」
「そうしてね。希望にしたこと絶対に忘れないから」
 にこりとしてだ。二人に言ってだ。
 二人が虚ろに立ち去る後姿は見ようとしなかった。そしてだ。
 希望がそこに来た。しかしだった。
 そこに希望が来た。彼は千春が何をしたのか見ていない。それでだ。
 陽気な笑顔でだ。こう彼女に言ってきたのだった。
「待ったかな」
「ううん、ちょっと前に来たところだよ」
 千春も笑顔でだ。こう希望に返した。
「そんなに待ってないよ」
「けれど待ったよね」
「待ってないよ」
 それ程までとだ。希望を気遣って言ったのである。
「気にしないで」
「そうなんだ。それじゃあ」
「うん、じゃあ一緒に帰ろう」
 こうしてだ。二人は一緒に歩きはじめた。しかしだった。
 希望は校門を出たところでだ。少しだ。
 顔を顰めさせてだ。そして言ったのだった。
「あのさ。クラスの女子がさ」
「どうかしたの?」
「うん、何か千春ちゃんを生意気だと言ってるらしいから」
 それでだというのだ。
「気をつけてね。何されるかわからないから」
「大丈夫だよ」
 千春はだ。こう返したのだった。
「もう終わったから」
「終わったって?」
「皆千春とお話してわかってくれたから」
「わかってくれたって」
「そう。千春のことわかってくれたからね」
 それでだというのだ。
「何の心配もないよ」
「ううんと。よくわからないけれど」
 希望は千春の言葉に首を傾げさせた。彼女が今言っている意味がよくわからないからだ。
 それで首を傾げさせたがだ。しかしだった。
 千春はその希望にだ。こう言ったのだった。
「ねえ。希望ってね」
「僕が?何かな」
「希望は部活しないの?」
「部活、ね」
「うん。ちらって思ったけれど」
「部活は興味ないんだよね」
 こうだ。希望は千春に答えた。 
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