歪んだ世界の中で
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第十話 思わぬ、嬉しい転校生その十二
そのうえでだ。こう前にいる二人に応えたのだった。
「さっきのことかな」
「そうよ。何なのよ一体」
「私達が性格ブスですって?」
「そうだよ。希望の悪口言ったじゃない」
「本当のことよ」
こうだ。野田は目を怒らせて千春に返した。
「あいつ馬鹿で運動神経もゼロだし」
「しかも今は違うけれどね」
ここで永田も言う。
「デブだったし」
「もう豚みたいにね」
「そんな奴が何だってのよ」
「そうよ。私に告白とか有り得ない?」
「身の程を知りなさいってね」
「そうそう」
こう二人でだ。千春の前で言ったのである。そしてだ。
千春を囲んでいる二人の女友達もだ。こう言うのだった。
「あんな最低な奴の何処がいいのよ」
「何かあんたあいつの彼女みたいだけれど」
「趣味悪過ぎじゃない」
「どういうセンスしてるのよ」
ある者は睨み、ある者は嘲笑してだ。それぞれ千春に言う。しかしだった。
千春はにこりとしてだ。こう言ったのだった。
「皆何もわかっていないんだよ」
「わかっていないって何がよ」
「あの馬鹿のこと?」
「それがわかってないっていうの?」
「そうだよ。皆何も知ろうとしていないんだよ」
こう返す千春だった。
「全然ね。希望のことね」
「だから。馬鹿じゃない」
「ダサいしね」
野田と永田はまた言った。
「あんな奴の何処がいいのよ」
「それにあんた、私達にあんなこと言ってね」
今度は千春自身にだ。二人は絡んできた。
「ただで済むと思ってるの?」
「可愛い顔して言ってくれるわね」
「謝りなさいよ」
顔を前に突き出してだ。野田は千春に脅しをかけた。
「さもないと酷いわよ」
「女の世界って怖いわよ」
永田は野田の一方後ろから千春に言った。
「さあ、それじゃあね」
「謝るのならいいけれど」
野田は一応はこの選択肢を認めた。
だがそれと共にだ。こう言うのも忘れなかった。
「もしそうじゃなかったら」
「わかるわよね」
「千春、嘘は言ってないから」
千春は二人にだ。笑顔で返した。
「それに君達が悪いから」
「悪くないっていうの?」
「じゃあ謝らないっていうの?」
「そうだよ。千春謝らないよ」
実際にこう答えた千春だった。
「絶対にね」
「言ったわね。じゃあね」
「覚悟しなさいよ」
いよいよだ。二人が動こうとした。しかしだった。
千春がその二人の目を見るとだ。それでだった。
二人は急に動きを止めてだ。そしてだった。
お互いに顔を見合わせてだ。こう言い合ったのだった。
「まあいいかしら」
「そうよね。何かね」
「どうでもよくなったし」
「それならね」
こう二人で話してだ。
周りにもだ。こう言ったのだった。
「ねえ、帰らない?」
「そうしない?」
こう女友達に言ったのである。二人で。
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