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歪んだ世界の中で

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第十話 思わぬ、嬉しい転校生その十

「それもかなりね」
「目が悪いって何よ」
「もう一度言ってみなさいよ」
「だから。性格ブスで心の目も悪いのね」
 千春は実際にだ。その野田と永田に言ったのである。
「とてもね。酷い性格なのね」
「初対面の相手によくそんなこと言えるわね」
「クラスメイトなのに」
「千春君達をクラスメイトなんて思わないから」
 剣をだ。言葉に込めていた。見えない剣を。
「だから言えるんだよ」
「言ったわね。よくも」
「許さないわよ」
「許さなくていいから」
 本当に素直な笑顔でだ。千春はその二人に対して言うのだった。
「だから黙ってて。五月蝿いから」
「くっ・・・・・・」
「転校生の癖に」
「転校生とかいう問題じゃないよ」
 歯噛みする二人にだ。また言った千春だった。
「悪いことは悪いんだよ」
「あんな奴と一緒にいて」
「それでそうも言うなんて」
「君達は希望のこと何もわかってないから」
 このことについてもだ。はっきりと言った千春だった。
「だから黙ってて」
「ふん、覚えてなさいよ」
「何時かえらいことになるからね」
「ならないよ」
 彼女達から何を言われてもだった。千春は平気だった。そうしてだ。
 彼女もまた席替えを受けた。その中でだ。
 くじを引いた。そこで何かを願ったのだった。
 そして希望が引く時もだ。彼のその手を見たのだった。
 こうしてくじ引きが行われた。そうしてだった。
 希望と千春は隣同士になった。クラスの窓側で。千春が窓側で希望はそのすぐ右の席になった。その席になってだ。希望は喜びを隠せずに言った。
「嘘みたいだよ」
「隣同士になったことが?」
「うん、嘘みたいだよ」
 こう言ったのである。千春に対して。
「本当に隣同士になれるなんてね」
「だから言ったじゃない」
「絶対になれるって?」
「そう、隣同士にね」
「ううん、僕はそうなりたかったけれど」
「実際になれることは」
「そう。ちょっとね」
 まさか本当になれるとはだ。思えなかったというのだ。
 だがその希望にだ。千春は笑顔でこう言ったのだった。
「千春がお願いしたから」
「それでなんだ」
「そう。なれたんだよ」
「神様にお願いしたのかな」
「したよ。けれどね」
「けれど?」
「よかったよね」
 純粋な笑顔でだ。千春はその希望にこうも言った。
「隣同士になれて本当にね」
「そう思うよ。これでね」
「これで?」
「何か。僕二学期本当に楽しく過ごせそうだよ」
「そうだよね。千春もだよ」
「千春ちゃんもだね」
「楽しく過ごせるよ」
 希望と隣同士だから。だからだというのだ。
「とてもね」
「そうだね。じゃあこれからもね」
「うん、宜しくね」
「こっちこそね」
 こうしてだ。二人仲良く笑みを向け合うのだった。しかし。
 その二人を見てだ。野田と永田がだ。 
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