歪んだ世界の中で
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第十話 思わぬ、嬉しい転校生その四
「しかし。本当に変わったな」
「ああ。別人みたいだな」
「十何キロは痩せたよな」
「一体何やったらあんなに痩せられるんだよ」
「そうだよな」
こうだ。彼等は希望を見て話すのだった。
希望はその彼等の言葉を聞きながらだ。そうしてだ。こう共にいる真人に言うのだった。
彼は今は真人の席のところに来ている。そうして言うのであった。
「何かね」
「皆遠井君のことを話していますね」
「そうだね。けれどね」
「けれどですか」
「気にならないよ」
そうなったとだ。希望は真人に話す。
「全くね」
「昔は違いましたよね」
「うん。ずっと痩せたいって思っていたから」
そのかつてのことを思い出しながらだ。希望は言ったのである。
「痩せて皆を見返したいって思っていたよ」
「けれど今はですね」
「そんなことはどうでもよくなったよ」
そうなったとだ。希望は言った。
「だってね。彼等は僕を馬鹿にしてきたから」
「そうした人達に言われてもですね」
「どうでもいいよ」
だからだというのだ。
「それに。彼等よりも」
「あの人達よりも」
「うん。友井君と千春ちゃんが見てくれているから」
「僕と。その人がですか」
「僕最近思うんだ。自分に相応しい人が神様は用意してくれて」
「そしてその人にですか」
「理解してもらえればいいってね。だから友達も」
そのだ。友人についてもだ。希望は真人に話した。
「無理して。媚びる様にして作ってもね」
「仕方ないですね」
「うん。仕方ないよ」
こう言うのだった。このことはだ。
「おかしな友達を持ったらね」
「そうですね。その時は」
「あの時みたいになるから」
失恋し切り捨てられただ。その時の様にだというのだ。
「だから絶対にね」
「そうした人とはですね」
「友達にならないよ。友達にしたらいけない人、気にしたらいけない人はね」
「確かにいますね」
「そう思える様になったから」
それでだというのだ。今もだ。
「周りから言われても何とも思わないよ」
「では今はですね」
「うん。友井君と一緒にいるだけでね」
それで満足だというのだ。それが今の希望の考えだった。
それで真人と共にいて楽しく談笑していた。だがその二人の耳にだ。
希望や真人の話ではなくだ。こんな話が入ってきたのだった。
「何か転校生来るらしいな」
「えっ、そうなのか?」
「転校生がうちの学校に?」
「うちに来るのか」
「ああ、そうらしいぜ」
こうした話がだ。彼等の耳に入ってきたのだ。
「一人。一年のクラスにな」
「へえ、誰だろうな」
「どんな人なんだろうな」
「男か?女か?」
すぐにだ。性別の話になった。
「どっちが来るんだ?」
「いや、それはまだわからないけれどな」
しかしだ。性別はだ。まだ誰も知らなかった。
それで今度は憶測になった。その転校生とやらがどんな人間かとだ。
「男だったらどうだろうな」
「凄い勉強ができるとかか?」
「それかスポーツができるとかな」
「奇麗な人だったらいいわね」
女子の間ではこんな願望も出ていた。
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