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歪んだ世界の中で

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第十話 思わぬ、嬉しい転校生その一

               第十話  思わぬ、嬉しい転校生
 二学期がはじまる。その最初の日にだ。
 希望はまずはだ。朝早く起きて走った。それからだ。
 シャワーを浴びて朝食を食べた。そのうえで身支度をして家を出ようとする。その彼にだ。
 両親は何だという顔と目でだ。こう言ってきたのだった。
「全く。何を考えているんだ」
「どういう風の吹き回しかしら」
「朝から走って学校か」
「三日坊主じゃないかしら」
「それでもいいよ」
 歯を磨いた後であっさりとだ。希望は親の言葉を受け流した。
 そしてそのうえでだ。二人にこう返したのだった。
「けれど。これからは毎朝ね」
「ランニング?」
「それをするというのか」
「雨でもどんな日でもね」
 そうするとだ。希望は言うのだった。
「これからはね」
「どうだか。三日坊主だな」
「そうに決まってるわ」
 人の努力、無論我が子のそれも見ようともしない二人はだ。まるで信じないで返した。
「好きなだけやっていろ」
「どうせ続かないから」
「続くだけやってみるよ」
 やはり素っ気無く返す希望だった。もう親には期待していないからだ・
 それでこう返してだ。それからだった。
 希望は親に挨拶もせずにだ。そのうえでだ。
 家を出てまずは真人の家に向かった。その玄関のチャイムを鳴らした。
 するとすぐに八条学園の制服の一つのだ。半袖の白いブラウスにダークブルーのズボンとネクタイの真人が出て来た。彼は笑顔で希望に言ってきた。
「遠井君、おはようございます」
「おはよう、友井君」
 希望も笑顔で真人に返す。そしてだ。
 そのうえでだ。彼にこう言ったのである。
「じゃあ行こうか」
「はい。そういえば」
「そういえば?」
「僕の制服は青ですよね」
 ダークブルー、それだ。その自分の服を見てからだ。
 希望の服を見た。それはだ。
 自分のものと同じ白の半袖のブラウスにだ。それとだ。
 少し濃い緑のネクタイにズボンだ。それが希望の制服だ。それを見て言ったのである。
「それで遠井君は緑で」
「空?かな」
 希望は真人の青をだ。それだと言ったのだった。
「海かな、って思ったけれど」
「そうですね。それで遠井君の緑は」
「草かな」
 屈託のない笑みでだ。希望は真人に返した。
「それになるかな」
「はい。つまり空と陸ですから」
「あっ、そうか。自衛隊だよね」
「そうなりますよね」
「そういえば僕達の冬服は同じだけれど」
「そちらは黒の上下のブレザーにネクタイですね」
「白いブラウスでね」
 二人共冬服はだ。それにしたのだ。二人は冬服は仲良くそれにしたのだ。ただ夏は同じデザインだがそれでもだ。色は変えてみたのである。八条学園の制服は生徒それぞれで様々に選べるのだ。
「それと腕に金色のリングが二本ありますね」
「あの制服がいいって思ったから二人でそうしたんだったね」
「あれも自衛隊なんですよね」
 真人は玄関の扉を開けた。そうしてだ。
 希望の前に来てだ。こう笑顔で言ったのである。
「海上自衛隊なんですよ」
「あれっ、海上自衛隊って黒だったんだ」
「それに金色なんですよ」
「へえ、その二つが海上自衛隊の色だったんだ」
「そうなんです。海軍の頃から黒だったんですよ」
 それが日本の海の防人達の色だというのだ。 
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