レーヴァティン
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第百九十六話 鎌倉入りその十三
「さらに飲むか」
「そうしますか」
「この相模の酒を」
「その様にされますか」
「そうする、相模の酒も美味いな」
飲んで実際に思ったことだ。
「実にな」
「東国の酒はまずいと聞きましたが」
「決してそうではないですな」
「相模の酒も美味いです」
「武蔵の酒もでしたし」
「西国の酒も美味いが」
このことも飲んでわかったことである。
「しかしな」
「東国の酒も美味い」
「噂とは違いますな」
「いや、これは中々」
「飲めるものです」
「俺は旗揚げ前にも飲んだが」
東国の酒をというのだ。
「その時に思った」
「美味い」
「実際に飲まれて」
「そうでしたか」
「その時に思い今もだ」
こうして飲んでいてというのだ。
「思っている、だからお前等もだ」
「こうして飲めばいいですね」
「すき焼きを食いつつ」
「相模の酒も」
「思う存分な、その国の酒を飲むこともな」
このこともというのだ。
「その国を知ることだ」
「政にとって必要ですね」
「天下の政に」
「それで、ですね」
「酒を飲むことも大事ですね」
「それもまた」
「酒は米と水だ」
この二つだというのだ。
「どういった米で水かでだ」
「味が変わりますね」
「米がよいと酒の味がよく」
「そして水がよくとも」
「逆にその二つが悪いとだ」
米や水がというのだ。
「酒はまずくなるな」
「左様ですね」
「酒は米から造りますし」
「また水が大いに関係します」
「そのどちらかが悪いとです」
「まずくなります」
「そうだ、そもそも米自体水が多く必要だ」
水田、英雄はこれを念頭に置いて話した。
「陸稲もあるがな」
「はい、それでもですね」
「やはり米は水が多く必要です」
「麦等よりも」
「どうしてもそうなります」
「若し水が悪いとな」
田があるその場所がというのだ。
「どうしてもだ」
「米もまずくなりますね」
「そうならざるを得ないですね」
「そして水が少ないと米を作れませぬ」
「そうなってしまいます」
「そうしたものを見る為にもだ」
その国のそうした事情をというのだ。
「米を食い酒もだ」
「飲むことですね」
「それもまた政ですね」
「そういうことですね」
「そうだ、もっと言えばその国のものを広く食うことだ」
米や酒だけでなくというのだ。
「水もな」
「そうしてその国を知る」
「一体どういった国であるか」
「そうすべきですね」
「政というものは」
「政はその国を知ってはじめていい様に出来る」
英雄は酒を飲みつつ周りに話した。
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