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ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル

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第77話 さらばベジタブルスカイ!GODの鍵を握る存在、その名はニトロ!

side:小猫


「えへへ……先輩とコンビを組んじゃいました」
「嬉しそうだな、小猫ちゃん」
「それはそうですよ。だってずっとそうなりたいって思っていた事が叶ったんですから」


 イッセー先輩とコンビを組むことになった私は、その嬉しさから未だにニヤけてしまっています。先輩はそんな私を見ながら苦笑していました。


「さて、オゾン草も無事に捕獲できたし皆を呼ぶか。きっと待ちきれなくてワクワクしているはずだ」
「そうですね。それに私達がコンビを組んだことも報告したいですし」
「よし、じゃあ早速呼びに行くか」


 私達はリアス部長達を呼びに行きましたが、何故か皆の姿がありませんでした。


「あれ、いないですね。まさか何か遇ったんじゃ……」
「いや争った跡はない。リアスさん達は自分から何処かに行ったみたいだ」


 私はリアス部長達が何者かに襲われたのかもしれないと思いましたが、先輩は辺りの状態を確認して冷静にそう言いました。


「匂いは向こうからするな。ただ何故か分散しているようだ。全員が必ず2人か3人に分かれていて単独で動いている人はいないな。まるで何かを探しているようだ」
「とにかく皆と合流しましょう」
「そうだな」


 私達は一番近くから匂いがした所に向かいました。するとリアス部長と祐斗先輩と合流することが出来ました。


「リアスさん、どうしたんですか?勝手にいなくなったら心配するじゃないですか」
「あっ、イッセー!大変よ!GTロボの足跡を見つけたの!」
「何だって……!?」


 リアス部長の言葉に先輩は驚きの声を上げました。つまり美食會がここに来ているという事ですか!?


「確かですか?」
「うん、洞窟の砂浜で見たGTロボの足跡とよく似たものがあったの。スマホで撮影しているから見てちょうだい」


 イッセー先輩と私はリアス部長のスマホを見ると、確かにGTロボの足跡が写っていました。


「間違いない、確かにこれはGTロボの足跡だ」
「じゃあ美食會が来ているって事ですか?」
「ああ、かもしれないな。オゾン草は俺達の細胞をレベルアップさせるほどの食材だ、狙っていてもおかしくない」


 オゾン草を狙っているのかもしれないと言う先輩の言葉に、私はトミーロッドを思い出しました。


「とにかく皆を集めてください。何かわかるかもしれない」
「分かったわ、直ぐに集めるから待っていて。祐斗!」
「はい!」


 そして皆が集まって情報の交換をしましたが誰も怪しい物は見ていないと言いました。


「仙術や魔法で捜索して見ましたが何の発見もありませんでしたね」
「私も空の上から見て回ったけど怪しい物は無かったよ」
「うーん、俺達がいるのを見て逃げたのか……?ただの下っ端ならあり得るが……」


 私とイリナさんの言葉にイッセー先輩は敵は逃げたのかと言いました。確かに今更下っ端クラスの奴が出てきても私達の相手ではないですしね。


「……とにかく敵がいないのなら急いでオゾン草を捕獲して帰ろう」
「大丈夫でしょうか?他のオゾン草を奪われたら……」
「俺ぐらいの嗅覚が無ければオゾン草の捕獲は無理だ。美食會は食材を大事にしない奴ばかりだがバカじゃない。細胞を進化させられるかもしれない食材を悪戯に腐らせたりはしないだろう。その間に親父に報告して対処してもらった方が良い」
「確かにそうですね」


 敵の正体が分からないのにこの場に留まるのは危険です。オゾン草を捕獲するには一番強い刺激臭がする葉を同時に二枚剥がさなければなりません。一人なら絶対に無理ですし二人いてもそんなチームワークがあるとは思えません。


(でもトミーロッドやグリンパーチ、それに先輩が言っていたヴァーリという人なら難なく捕獲してしまいそうですが……)


 私はそう思いましたが本当に来ていたら嫌なので頭からその考えを消しました。


「……!?ッこれは……!」


 するとイッセー先輩が何か険しい表情を浮かべていました。


「先輩、どうかして……!?」


 そして私も遅れて気が付きました。私達が捕獲したオゾン草の側に生命体の氣を感じたんです。


「この匂い……誰かがオゾン草の側にいるぞ!」
「ま、まさかGTロボ!?」
「分からない、あの時は何も匂わなかったが……急いで戻るぞ!」
「はい!」


 先輩の言葉にリアス部長がGTロボが現れたのかと聞きました。でもあの時はオゾン草に集中していたとはいえ先輩の嗅覚でも私の仙術にも反応はありませんでした。


(つまり敵は私達の能力が及ばない遠くで私達を観察していて、隙が出来た一瞬でオゾン草に接近したという事ですか!)


 そんなことが出来るのは間違いなく幹部クラスの奴でしょう。私達は緊迫した様子でオゾン草に向かいました。


「あれは……!」


 そしてそこにいたのはGTロボでした。私達に気が付いたGTロボはこちらに振り返り……えっ!?


「氣が流れています……!あれはGTロボじゃない、生き物ですよ……!」
「ええっ!?」


 私の言葉にリアス部長が驚きの声をあげました。


「本当なのかい、小猫ちゃん?」
「はい、間違いありません。GTロボはパイロットの気迫を感じることはできますが氣は流れていないんです。でもあの生物には氣が流れています!」
「イッセー君はどう思いますの?」
「俺もあいつは生物だと思います。GTロボ特有のチタン合金の匂いがしないし得体の知れない匂いがする」


 祐斗先輩は私に確認しましたが生物で間違いないと返しました。朱乃先輩はイッセー先輩にも確認しましたが先輩もアイツは生物だと言いました。


「皆、今は動くな。あいつから敵意は感じない。警戒だけしておくんだ」
「分かりました……」


 GTロボによく似た生物を私達をジッと見ていましたが、直ぐに興味を失ったのか後ろのオゾン草に視線を向けました。そして屈んでオゾン草に顔を近づけるとガブッと齧りました。


「……」


 私達はそれを警戒しながら見ていましたが、謎の生物はオゾン草を吐き出してしまいました。そして私達を無視して大きく跳躍し、雲の海に沈んでしまいました。


「な、何だったの……?」
「あの生物、かなり強かったな。戦いになっていたら危なかったかもしれない」


 イリナさんは何故の生物の行動が分からずに困惑してゼノヴィアさんは生物の強さを冷静に判断していました。


「ねえイッセー、あれってGTロボじゃないのよね……?」
「ええ、間違いないです。あれは野生に生息する生物でしょう」


 リアス部長はあれがGTロボでないことに驚いていましたが、イッセー先輩は野生の生物だと言いました。


「私達ってGTロボは初めて見たけどあんな感じなの?」
「美食會の専用のロボがアイツとよく似ているんだ。他のGTロボは人間の姿であるのが多い」
「ふむ、ということはあの生物はベジタブルスカイに生息している固有種ということか?」
「それも違うだろう。奴の体からはベジタブルスカイにはない匂いがした。俺が嗅いだこともない未知の匂いだ。別の土地から来たんだろう」
「もしかしてオゾン草を食べにですか?」
「だろうな」


 イリナさんは初めてGTロボを見て驚いていました。GTロボが全てあの姿なのかと先輩に聞きましたが、先輩は違うと答えます。


 するとゼノヴィアさんは美食會のGTロボによく似た生物はベジタブルスカイに生息している固有種なのかと聞きますが先輩は嗅いだことのない匂いがしたと言いました。


 ルフェイさんの言う通り態々オゾン草を食べにここまで来たという事でしょうか?


「でもオゾン草を吐き出していたわよ?」
「オゾン草は二人同時に齧らないと腐ってしまうんだ。一人で食べたから腐ってしまったんだろうな……ってなにィ!?」


 ティナさんはあの生物がオゾン草を吐き出したことに首を傾げましたが、先輩はオゾン草の食べ方を説明しました。そして腐ったオゾン草を見て驚いてしまいました。


「腐ってないだと……!?」


 そう、あの生物が齧ったオゾン草は腐っておらず瑞々しいままでした。


「馬鹿な、オゾン草は二人で食べないと腐るはずだ。何故腐っていないんだ?」
「先輩、オゾン草をよく見てください。私と先輩が齧った二か所以外に二回噛んだ跡があります」
「なっ……!?」


 オゾン草に私達が齧った以外に噛まれた箇所が増えていました。それも二つです。


「信じられない、あいつはオゾン草が気が付かないほどのスピードで二回齧ったんだ。それもほぼ同時に……なんて瞬発力と首の筋肉しているんだ!?」


 先輩の言葉に私は驚きを隠せません、ほぼ二回同時に噛むなんて私達には到底出来ないでしょう。


「あいつは恐らく俺達を監視していたんだ。オゾン草を食べに来たのはいいが捕獲方法が分からなかった、そこで現れた俺達を匂いを嗅げないほど遠く離れた場所で監視して隙を見て現れたんだろう」
「まるで人間みたいね……」
「ええ、高い知能と身体能力を持った生物なんでしょうね」


 人間のような行動を取るあの生物に私達は未知なる恐怖を感じました。まさかそんな生物が存在していたなんて……


「……まあ知性は高いのかもしれないが舌はあんまり良くないみたいだな。何せあんな美味いオゾン草を吐いたんだからな」
「……ふふっ、それもそうですね」


 場の雰囲気を変える為にイッセー先輩はそう言いました。確かにあんなに美味しいオゾン草を吐いてしまうなんて考えられません。味の良さまでは分からないのかも知れませんね。


「そんなに美味しかったの?私も早く食べてみたいわ!」
「よし、それじゃあ皆でオゾン草を食べようぜ!」
『おお―――――ッ』


 私達はそう言ってオゾン草を堪能しました。


「んーっ!すっごい美味しい!シャキシャキとした触感に瑞々しい果肉が体中に染み渡るみたい!」
「こんな美味しい野菜を食べてしまったら、もう地上の野菜では満足できなくなってしまいますわ♡」


 リアス部長と朱乃先輩は一番長い付き合いなだけあって一発で食べられるほどの息の良さを見せてくれました。


「ぐわっ!?また腐ってしまったぞ!?」
「ちょっとゼノヴィア!ちゃんと息を合わせてよ!」
「なんだと!イリナ、お前が先走ったせいじゃないか!これで二回目だぞ!」
「さっきのは間違いなくゼノヴィアが焦って先に噛んじゃったせいでしょうが!」


 普段は息の合っているゼノヴィアさんとイリナさんですが、食べ物の事になると上手くいかないみたいですね。というか葉を剥がすのは私とイッセー先輩なんですからもっと慎重に食べてくれませんかね……


「凄い美味しいわ!こんな野菜は食べた事がないわ♡」
「ティナさんと息がピッタリだったから直ぐに食べられましたね」
「そ、そうね……祐斗君と私って相性がいいのかもしれないわね……」
「えっ……」


 何故かピンクの空気を出す祐斗先輩とティナさん、見ているだけで胸焼けしそうです。


「あの、イッセー先輩……」
「おっ、どうしたんだ、ギャスパー?」
「僕と一緒にオゾン草を食べてくれませんか?ここまでこれた記念にイッセー先輩と一緒に食べたいんですぅ」
「なるほど、そういう事か。喜んで一緒に食べるよ」
「は、はい!」


 ギャー君もすっかりイッセー先輩に懐いてしまいましたね。まるで兄弟みたいです。


「イッセーくーん!このままだといつまで経ってもオゾン草を食べられないから一緒に食べようよ♡」
「イッセー!イリナと一緒では埒が明かない!私に協力してくれ!」
「落ち着けよ。二人とも……」
「あはは!」


 私はそんな光景を見ながら楽しくなって笑みを浮かべました。


「あっ、そうだ!皆、少しいいか?皆に伝えたいことがあるんだ」
「私達に伝えたいことですか?」
「ああ、そうだ」


 イッセー先輩が皆に伝えたいことがあると言いアーシア先輩は首を傾げます。先輩は頷きながら私に視線を向けました。


 おお、遂に言うんですね。私は緊張しながらもイッセー先輩の隣に向かいました。



「実は俺と小猫ちゃんなんだが……この度コンビを組むことに決めたんだ!」
「コンビって美食屋と料理人のコンビの事?」
「ああそうだ。俺と小猫ちゃんはそのコンビになったんだ」
「おめでとう、イッセー!小猫!」


 先輩が私とコンビを組むと言うと祐斗先輩が美食屋と料理人のコンビになるのか聞きました。先輩が頷くとリアス部長が拍手をしながら喜んでくれました。


「うふふ、小猫ちゃんが選ばれるとわたくしは思っていましたわ」
「小猫ちゃん、頑張ってください!私、応援していますね」
「ありがとうございます。朱乃先輩、アーシア先輩」


 朱乃先輩とアーシア先輩は恋のライバルであるにも関わらず喜んでくれました。


 えっ、同じ男と付き合っているのにライバルなのかって?例え将来的に家族になると言っても女の子は好きな人の一番になりたいものなのです。アーシア先輩はともかく朱乃先輩は私を正妻と言っていますが、一番を奪う気は満々ですし。


「えー、小猫ちゃんを選ぶのー?イッセー君、私じゃだめぇ?」
「味噌汁を劇物に変える人が何を行ってるんですか」
「ぶー!」


 イリナさんは不満そうでしたが仕方ありません。前に一回だけ朝ご飯を作ってもらいましたが酷い物でした。味噌汁も満足に作れない方はNGです。


「俺達はこのG×Gで一番のコンビになる。だから応援よろしくな!」
「が、頑張ります!」


 そして全員の拍手を受けながら私達は正式にコンビを組みました。その後は何時間もかけてオゾン草をグルメケースに保存できるようにプログラムを設定する事になりましたが、無事にオゾン草を保存することが出来ました。


「よし、じゃあ親父に渡す分も捕獲できたしそろそろ帰るか」
「やっぱりフロルの風を使って帰るの?」
「まあそうなんですけど折角空の上にいるんですしアレやっていきませんか?」
「アレ?」


 リアス部長は首を傾げますがイッセー先輩は雲の海を指さしてニヤっとしました。



「スカイダイビングですよ!いこうぜ、小猫ちゃん!」
「はい!」
「ちょ、ちょっとイッセー!?小猫!?」


 私と先輩は手を繋いで雲の海にジャンプしました。


「あはは!気持ちいいですね、先輩!」
「ああ、爽快だな!」


 先輩と手を繋いで雲の海に沈んでいきます。飛べるとはいえこんなに高い所から落ちるのは初めてなのでスリルがあってすごく面白いです。


「小猫ちゃん!」
「何ですか、先輩!」
「これからは恋人だけじゃなくてコンビとしてもお互いに助け合っていこうな!」
「はい!これからもよろしくお願いしますね、イッセー先輩!」


 私達はお互いに見つめ合ってニコッと笑みを返しました。そして暫くはイッセー先輩と一緒に空の旅を楽しみ続けました。




―――――――――

――――――

―――


 
「あー、空の旅も楽しかったな!」
「はい、風が凄く気持ちよかったです」


 スカイダイビングを終えた私達はフロルの風を使いスイーツハウスに戻ってきました。ですが今はIGOが手配してくれた車に乗ってグルメタウンに向かっています。


「イッセー、今から何処に行くの?」
「もう疲れたから寝たいです……」


 リアス部長は今から何処に行くのか先輩に確認します。ルフェイさんは長旅もあってか眠そうです。


「済まないなルフェイ、もう少しだけ我慢してくれ。親父が丁度節乃婆ちゃんの店にいるみたいだからオゾン草を渡そうと思ってな」
「一龍会長が節乃さんのお店に?そういえば知り合いだったわね」
「ええ、後あの謎の生物についても報告しておこうと思いまして。それと小猫ちゃんとコンビを組んだこともな」


 節乃さんのお店に一龍さんが来ているのですか。まさかこんなにも早く先輩とコンビを組んだことを報告する事になるとは思いませんでした。


 でも私は先輩に選んでもらいコンビを組んだんです。恐れたりするなど先輩に失礼です、たとえ誰であっても私はイッセー先輩のコンビです!ってハッキリ言います。


「おっ、着いたみたいだぜ」


 車が節乃さんのお店の前に到着しました。私達は運転手さんにお礼を言って車から降り、節乃さんのお店に入りました。


「おお、待っておったぞ」
「よう、親父……って次郎さんも一緒だったのか」


 お店の中にいたのは一龍さんだけでなくノッキングマスター次郎さんもいました。


「久しぶりじゃな、イッセー。今日はイチちゃんと一緒に飲みに来ていたんじゃ」
「そういえば二人は美食神アカシアの弟子だったな。楽しんでいる所に邪魔をして悪かった」
「いやいや、そんな気を遣わんでもええぞ。いいツマミも持ってきてくれたようじゃしな」


 次郎さんはそう言うと私の持っているオゾン草を見ていました。なるほど、ツマミとはこれのことですか。


「イッセー、皆、御帰りんしゃい」
「にゃー!イッセー!白音ー!お疲れさまだにゃー」


 厨房から節乃さんと黒歌姉さまが顔を出して出迎えてくれました。


「どうやら無事にオゾン草を捕獲できたようじゃな」
「ああ、大変だったけど皆と協力して乗り越えることが出来たよ」
「……ふふっ、どうやら環境への適応力や細胞のレベルアップ以外にも得たものがあったようじゃのう」
「ああ、今回の旅はとても有意義なものだったよ。この調子で残りの食材も全て集めてやるぜ」
「馬鹿者、調子に乗るでないぞ」
「分かってるさ」


 一龍さんとイッセー先輩はそんな会話をしていました。流石イッセー先輩の義理の親、先輩が精神的にも成長したことを見抜いたんですね。


「じゃあ早速オゾン草を頂こうかの。セツのん、調理頼むよ」
「ほいさ」


 私は黒歌姉さまにオゾン草の入ったグルメケースを渡しました。


「あれ、このグルメケースオゾン草に適応した保存にプログラムされているね。白音がやったの?」
「はい。先輩にも手伝ってもらいましたが何とか出来ました」
「ほう、小猫や。もしかすると食材の声が聞けるようになったのかじょ?」
「まだおぼろげですが……」


 黒歌姉さまはオゾン草の保存に適したプログラムをされていることに驚き、節乃さんは私が食材の声を聞けるようになったのかと聞いてきたのでおぼろげながら聞こえると話しました。


「ふふっ、これは思っていた以上に才能を秘めているようじゃのう」
「そうだ、親父に報告することが二つあるんだ」
「なんじゃ?」
「俺、小猫ちゃんとコンビを組むことにしたんだ」
「ほう、小猫とな……」


 一龍さんはジッと私の顔を見てきました。め、目を逸らしては駄目です!私は先輩のコンビなのですから!


「……そうか。お前もコンビを組みたいと思う相手が出来たんじゃな。大事にしろよ」
「ああ、勿論だ」
「小猫もイッセーを頼むぞ」
「は、はい!」


 一龍さんにイッセー先輩を頼むと言われて私は力強く答えました。


「二人を見ていると昔を思い出すのぅ、セっちゃん」
「そうじゃのう、次郎ちゃん……」


 次郎さんと節乃さんが温かい眼差しでそう言いました。お二人も昔はコンビで活動していたんですよね、もし機会があったら何かコンビとしての心構えなどを聞いておきたいです。


「出来たにゃん、オゾン草の即席漬けだよ」


 すると姉さまがオゾン草を調理して一龍さんと次郎さんの前に出しました。


「姉さま、どうやって調理したんですか?オゾン草は二人で同時に噛まないと食べられなかったのですが……」
「だから二回同時に包丁を入れたの」
「なるほど……」


 調理する際もほぼ同時に二回斬らないといけないとは……これは食べる側も調理する側も苦労させる食材ですね。


「いや普通に納得してるけど普通は二回もほぼ同時に包丁を入れるなんて無理だよ、小猫ちゃん!?」
「諦めろ、ギャスパー。この世界の強者は平然と不可能を可能にする」
「えぇ……」


 驚くギャ―君にゼノヴィアさんはそう答えました。


「それじゃ頂くとするかのう」
「そうじゃな。それじゃあイッセー達のオゾン草捕獲を祝福して……」
「かんぱーい」


 一龍さんと次郎さんはそう言うと一瞬顔が見えなくなるほどの速度でオゾン草の即席漬けを食べました。


「ん~、美味いのう。アッサリとしていながらも深い味わいにモチモチとした触感が良い具合じゃ」
「ねえイッセー君、お二人共もしかしてほぼ同時に二回齧ったのでしょうか?」
「普通に味わっているのでそうでしょうね。まあ出来るとは思っていたけど……」


 普通に美味しそうに味わっている二人を見て、朱乃先輩がイッセー先輩にあの生物のように二回齧ったのかと聞いて先輩は頷きました。


「うん?ワシら以外にこの食べ方が出来る奴を見たのか?」
「ああ、実は……」


 そしてイッセー先輩はベジタブルスカイで謎の生物に出会った事を報告しました。


「まさかニトロと接触するとはのう。想定よりも早かったな」
「親父はやっぱりあの生物について知っているんだな」
「うむ、時期を見てお前にも話すつもりじゃったが、接触したのなら説明しなければならん」


 一龍さんはあの生物について知っているらしく私達に説明してくれました。


「今から話す内容は重要な事だ。決して口外してはならんぞ」
「分かったよ、親父」
「うむ。ではまずあの生物の名前は『ニトロ』、約600年前に美食神アカシアが発見してそう名付けたんじゃ」


 なんと美食神アカシア様が発見した生物だったとは思いませんでした。


「どういう生物なんだ、親父」
「分類は不明じゃ、奴らには生殖器もなく繁殖方法も不明なんじゃよ」
「生殖器がないなら繁殖できないじゃない。まさかアメーバみたいに分裂するの?」


 生殖器が無いのなら産んだりは出来ないですよね。リアス部長の言う通り分裂したりするのでしょうか?


「そうではないらしい。だが個体の数は少ないが複数のニトロが過去に発見されている。更にこのニトロは寿命がとても長くいつから地球に生息しているのか分からないが、数億年前の地層からこいつに似た化石が発見されている」
「数億年前……太古の恐竜時代から存在していた可能性があるのか……」


 G×Gの地球にも恐竜の栄えた時代があったんですね。しかしその頃から潜在していた可能性があるとはニトロとは悪魔以上の寿命を持っているのかもしれないですね。


「ニトロの特徴として大きく上げられるのがまず『生命力』じゃ。ニトロは生きていく事が困難な環境になった時、『乾眠』と無代謝の休眠状態に入りそのまま何千年も眠り続けることが出来るんじゃ」


 乾眠……どこかで聞いたような……うーん、思い出せません。


「イッセー、乾眠とはなんだ?」
「乾眠っていうのはクマムシという緩歩動物が行う行動だ。このクマムシは自ら仮死状態になり高熱や絶対零度、真空、乾燥、気圧、更には放射線にすら耐える恐るべき適応力を発揮するんだ」
「つまりどんな環境でも生きていける状態になるという事か。凄いな」


 ゼノヴィアさんはイッセー先輩に乾眠について聞いてくれたので、先輩は説明してくれました。つまりニトロはいざとなれば乾眠によってどんな環境になっても生き残ることが出来るという訳ですね。


「乾眠か。ベジタブルスカイで見た奴は肉体も生命力で溢れていたしずっと前に目覚めていた個体なのか?」
「かもしれないな。そしてニトロの二つ目の特徴はその『どう猛さ』じゃ。自分よりも強く巨大な獣にすら躊躇なく襲い掛かるほど凶暴で凶悪な性質を秘めておる。扱いの難しさ、そして危険な存在として発見したアカシアは『ニトログリセリン』から取ってニトロと名付けたという一説もある」
「まるでゼブラ兄みたいだな……」


 ニトログリセリンってダイナマイトを作る原料として使われている少しの刺激で爆発する危険なモノですよね。それから名前を取られるなんてよほど危険な生物なんですね。


 後ゼブラさんについてももう何も言いません、先輩の話から凄く危ない人だって事はもうわかっていますから。


「でもベジタブルスカイで会ったニトロはそんなどう猛さを感じなかったよね?」
「ああ、寧ろ知性すら感じたな」


 祐斗先輩とイッセー先輩はベジタブルスカイで出会ったニトロについてそう言いました。確かに私達に襲い掛かってこなかったし、あのニトロからはどう猛さは感じなかったです。


「ふむ、そのニトロについては後で聞くとしよう。今はニトロの生態について続きを話すぞ。ニトロの三つ目の特徴は『知性』じゃ。ニトロは個体こそ少ないがかつて地上に文明を残していたと言われている。実際にこのG×Gの人間界にある得体の知れない建築物などにニトロによく似た生物が彫られていたこともあるんじゃ」
「文明を築き上げるなんて高度な知能を持っていますのね。もしかしたらベジタブルスカイで出会ったニトロとなら会話もできるのかもしれませんね」


 朱乃先輩の言う通りあのベジタブルスカイで出会ったニトロは、私とイッセー先輩を利用してオゾン草を食べるという知性を発揮させました。言葉が分かるかはともかく喋れてもおかしくないかもしれません。


「そして四つ目の特徴が『グルメ度』じゃ」
「グルメ度……?」
「美味なる食材を求めるのは他の猛獣と同じじゃが奴らは人間のように食材を調理してより美味い料理を作れるんじゃ。最早人間と変わらんほどにな」
「料理までするなんて……ニトロの作る料理、何だか気になるわね」
「止めておけ。ニトロの料理には人間が使われている可能性がある」


 ニトロの料理にティナさんが興味を示しました。でも一龍さんは手を振って衝撃の一言を言いました。


「人間を……!?」
「うむ。実は数十年前からG×Gの人間界でニトロの目撃情報が増えておるんじゃ。奴らは腕のある料理人を誘拐しておるらしい」
「料理人を?」


 イッセー先輩はニトロが人間をさらう事に驚き、私は料理人が攫われていると聞いて何故なのかと思いました。


「アカシアがグルメ細胞を発見したのが今から605年前……それによって食のクオリティは一気に高まり腕の立つ料理人が何人も生まれてきた。ニトロは人間の調理方法を会得したいのか、もしくは……」
「……あまり言いたくないが人間を調理しているということか?」


 ゼノヴィアさんは顔を青くしてそう言いました。人間もニトロからすれば立派な食材なのかもしれません。


「ワシらIGOもニトロの監視をしておるんじゃ。もしまた目撃したら直に報告をしてくれ」
「分かったよ。でも料理人を襲うのか……小猫ちゃんや黒歌も狙われるかもしれないな」
「姉さまはともかく私は狙われるような腕なんて……」
「いや、小猫ちゃんの才能は誰にも負けていないって俺は思っているからな。ニトロがその才能に気が付いて襲いに来てもおかしくない」


 イッセー先輩は私や姉さまがニトロに襲われないか心配してくれていました。そ、そんなに褒められると照れてしまいますよ、もう♡


「にゃーん、それは怖いにゃん。怖くてイッセーから離れられないにゃん」
「く、黒歌……くっ付きすぎだぞ……」
「イッセー、照れてるの?可愛いね♡」


 姉さまがイッセー先輩の腕に抱き着いてその大きなお胸で先輩を誘惑しました。そもそも姉さまはグルメ界に行ける実力があるんだからそんなに簡単に誘拐されると思わないんですが……


「まあ仮にニトロが来ても小猫ちゃんも黒歌も俺が守るさ。特に小猫ちゃんは俺のコンビなんだからな」
「イッセー先輩……」
「イッセー……」


 真面目な表情でそう言う先輩に私も姉さまも見惚れてしまいました。


『一龍、美食會のGTロボがニトロとやらによく似ているのは訳があるだろう。話してもらうぞ』
「鋭いのう、ドライグ。そんなに警戒しなくとも話してやるから落ち着け」


 すると赤龍帝の籠手からドライグの声が聞こえて一龍さんにニトロが美食會のGTロボとよく似ている理由を聞いてきました。急かす辺り過保護ですね、ドライグも。


「美食會のGTロボがニトロとよく似ているのは、ニトロがGODの入手のカギを握っていることを美食會の連中が知っておるからじゃ」
「ご、GODの情報をニトロが……!?」


 これは今日一番驚きました。まさかGODの入手の鍵をニトロが握っているとは思ってもいなかったからです。


「美食會のボス『三虎』はこの情報を早くから掴んでおった。GTロボをニトロに似せたのもニトロに近づきGODの入手を確実にするためじゃ」
「そうだったのか……」


 美食會のボス、三虎……確か一龍さんと次郎さんに並ぶアカシア様の弟子でしたね。彼はニトロがGODのカギを握っていることを早くから知っていたという事ですか。聡明な人物なのかもしれません。


「どちらにせよ美食會はニトロを利用して何かを企んでいるのは間違いない。それにニトロが活発に動き出すとき、それはグルメ日食が近づいているという証だ。直ぐではないだろうが遠い未来の話でもない、いずれグルメ戦争が起こるだろう」


 戦争が起こる、その言葉に全員が黙ってしまいました。かつて美食神アカシア様はGODを使い戦争を止めたと言われています。


 ですが戦争をも止めてしまうGODの出現によって今度は戦争が起きてしまう可能性が高い……なんて皮肉なんでしょうか。


「……問題ねえよ」
「イッセー先輩?」


 重くなったこの場で最初に話したのはイッセー先輩でした。


「GODを奪い合うなんてさせないさ。皆で一緒に食えば戦争なんか起きねえよ、いや俺が起こさせねえ」


 先輩はニカッと笑みを浮かべてそう言いました。


「……ふふっ、そうね。美味しい物は皆で食べれば幸せになるものね」
「うん、僕も皆と一緒にGODを食べてみたいよ」


 先輩の一言にリアス部長と祐斗先輩も笑みを浮かべてGODを食べたいと話しました。


「俺は美食會の奴らだって一緒にGODを食べたいって思っている。何故なら美味いものを食うのに立場や資格なんていらないからだ!皆が一緒に同じものを食べれば絶対に分かり合えるさ!だからその為にも親父の依頼を全てこなしてグルメ界に入れるようになってみせるぜ!なあ、皆!」
「はい!」


 先輩の言葉に私達は全員が頷きました。そうですよね、皆で一緒にGODを食べれば戦争なんて起こりません。


「ふっふっふ。ひよっこが吠えるじゃないか。だがこう言えるイッセー達だからこそ食材が寄ってくるのかもしれないな」
「うんうん、若いというのはええものじゃのう」


 一龍さんや次郎さんもそんな私達を見て笑みを浮かべていました。


「よし、これからも俺達は一緒に冒険して共に頑張っていくんだ。そして必ずいつかGODを手に入れる!」
『応っ!!』


 私達は更に絆を強くしていつか必ずGODを手に入れると誓いあいました。

 
 

 
後書き
 リアスよ。小猫とイッセーがコンビを組んで良かったわ。二人なら凄いコンビになれるはずだもの。

 
 さてと、次回予告をしなくちゃね。


 ベジタブルスカイでの冒険を終えた私達は遂に三大勢力のトップが集う会議の開催日を知ることになるの。それまでは修行を控えて準備に回っていたんだけど、どうやらアザゼル様がイッセーに接触したみたいなのよね……問題ごとを起こさないと良いんだけど……


 次回第78話『朱乃よ、父と向き合え。家族の和解と本当の愛』で会いましょうね。 
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