戦国異伝供書
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第百二十九話 灰からはぐれた者達へその十一
「つまりは」
「そうだよね」
獣は毬のその言葉に頷いた。
「要するに」
「そうなるよね」
「傾いていても凄いんだ」
「何かと」
「大器であられてな」
居士は二人にも話した。
「学識豊かで頭が切れてな、戦もな」
「強いんだ」
「そうした人なんだ」
「左様、だからな」
それでというのだ。
「お主達の主にも十分じゃ」
「そうですか、ではですね」
ヨハネスも言ってきた、外見こそ他の者達と大きく違うが距離は近い。そして話す言葉も同じものである。
「その方にお仕えする時まで」
「ここでじゃ」
「修行ですね」
「それに励んでもらう、お主達が大きくなればな」
その頃にはというのだ。
「まさにな」
「その時にですか」
「仕える様になる」
そうなるというのだ。
「その時までな」
「修行にですな」
「励むのじゃ」
「そうすべきですか」
「そうじゃ、ただお主達はな」
居士は優しい声でこうも言った。
「悲しい思いをすることはない」
「それはどうしてなんだ?」
煉獄が問うた。
「わし等がそう思う必要がないのは」
「一人でなくな」
そしてというのだ。
「わしがおってな、お仕えする方もおられ」
「その方も立派な方でか」
「そうじゃ、泰平の世が来るのを見るのだからな」
「悲しく思うことはか」
「ない」
全くと言う言葉だった。
「それこそな」
「そうなんだな」
「確かに皆親と死に別れ」
「寂しい思いもしたけれどか」
「それでもじゃ」
「わし等はか」
「前を向いてな」
そうしてというのだ。
「生きていればいい、だから忍術を教えても」
「それでもか」
「陰ではなくな」
「日向か」
「そこにいる様にしたのじゃ」
こう言うのだった。
「今もな」
「そうか、わし等は日向の者か」
「そうじゃ、そうした忍術もあるのじゃ」
忍術は陰の術だがというのだ。
「そうなのじゃよ」
「それじゃああれか」
煉獄は自分から言った。
「お父も日向の者か」
「わしか」
「そうだよ、わし等にそう教えてくれるならな」
それならというのだ。
「お父だってな」
「それは考えたことがなかったわ」
これが居士の返事だった。
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