寒い夜に消防署に
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第二章
「ああ、もう一匹位ならな」
「大丈夫ですね」
「だからな」
それでというのだ。
「その猫もな」
「引き取ってくれますね」
「ああ、それでその猫雄か雌か」
「雌です」
消防士はすぐに答えた。
「調べました」
「そうか、じゃあな」
「不妊もですね」
「してな」
そちらの手術を行ってというのだ。
「そうもするからな」
「可愛がってくれますか」
「任せろ」
ケルビンは笑顔で言ってだった。
その猫を引き取った、そして猫にエンバーという名前を付けた。ケルビンはエルバーを迎えてから親戚の消防士を自宅に呼んで話した。
「いい娘だな」
「そうですか」
「ああ、早速他の子達と馴染んでな」
そしてというのだ。
「一緒に遊んだり寝たりな」
「してるんですね」
「俺達にも懐いてるしな」
ケルビンと彼の妻子にもというのだ。
「本当にいい娘だな」
「それは何よりです」
「ただな」
ここでケルビンはこうも言った。
「そのエンバーがうちに来たのはな」
「それがどうしたんですか?」
「お前と同僚の消防士の人達が消防署に入れたからな」
だからだというのだ。
「それでだよ」
「ここに来られたんですか」
「無事にな、若し入れなかったら」
その時はというと。
「寒い冬の夜だったんだろ」
「はい、そうでした」
「耳とか軽くても凍傷もあったしな」
「じゃあ危なかったですか」
「凍傷は獣医さんに治してもらったけれどな」
「そうでしたか」
「消防士の人達のお陰だよ」
ケルビンは笑顔で話した。
「エンバーが助かって今ここにいるのは」
「そうですか」
「ああ、消防士は命を助けるのが仕事だな」
火事、それを収めてだ。
「その務めを果たしたんだ、よくやったな」
「当然のことですよ」
消防士は笑って返した。
「それは」
「それを当然って言えるのが立派なんだよ」
「ニャア」
ケルビンは笑って返した消防士に彼も笑って返した、そしてその横で。
エンバーが座って鳴いてきた、それはその通りと言っている様だった。ケルビンと消防士はそんな彼女を撫でてさらに笑顔になった。
寒い夜に消防署に 完
2021・3・25
ページ上へ戻る