十四個のケースの中身は
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第二章
「多指症なんだ」
「そうなんですね」
「そのせいでな」
「この猫達は捨てられたんでしょうか」
「悪魔の血とかでも思ったんだな」
「そんな話多いですね」
「障害があったり奇形だな」
スペンサーはマルカーノに曇った顔で答えた。
「そういうのでな」
「ありますよね」
「ああ、けれどな」
「それでもですよね」
「障害とか奇形なんて誰でもあるし生まれついてなくてもな」
「後で、ですね」
「ちょっとしたことでなるんだ」
その現実を話した。
「そうなるからな」
「だからですね」
「もう一々な」
それこそというのだ。
「悪魔の血だの何だのな」
「迷信信じるなんて馬鹿ですね」
「そうだ、それで捨てるなんてな」
「言語道断ですね」
「まだこんなことする奴がいること自体がだ」
「恥ですね」
「人間にとってな、そしてな」
スペンサーはさらに言った。
「指が多くてもそれだけでな」
「何の問題もないですね」
「指は手術で切ってな」
「普通の数にしますか」
「それで終わりだ、それでこの子達もだ」
十六匹全員をというのだ。
「助けるぞ」
「わかりました、里親探しましょう」
「どんな子でも引き取ってな」
「助けるのがですね」
「うちの方針だからな」
それ故にというのだ。
「十六匹全員をです」
「助けるぞ」
「そうしましょう」
マルカーノはスペンサーに強い声で応えた、そうしてだった。
二人も他のスタッフ達も猫達の指を手術してそのうえで。
保護して食べてトイレもさせつつだった、里親を募集し。
全ての猫達が心ある人達に引き取られた、そうなってからスペンサーはマルカーノに対して話した。
「指が多くてどうだっていうんだ」
「そんなことで捨てるなんて」
マルカーノもこう答えた。
「間違っていますね」
「そうだ、自分の指が多かったらどうなんだ」
「人間でもありますしね」
「ある、指が多い以外にもな」
「色々ありますね」
「そんなことはどうでもいい、命は命だ」
スペンサーは言い切った。
「それがわかっていないとな」
「誰でも駄目ですね」
「そんな奴こそな」
まさにとだ、スペンサーは言い切った。そのうえでマルカーノに言った。
「それでこれからもな」
「そうした生きものを助けていきましょう」
「そうしていくぞ」
「はい、ここで」
二人で誓い合った、そうしてだった。
二人も他のスタッフ達も共に施設の中で働いていった、そのことで多くの命を護り助けていった。それは今も続いている。
十四個のケースの中身は 完
2021・3・24
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