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レーヴァティン

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第百九十六話 鎌倉入りその十二

「全て手に入るならな」
「それを求める」
「そうした欲はいい」
「左様ですか」
「だから欲を出す」 
 あえてというのだ。
「そうする」
「上様は無欲ではないですが」
「決して」
「贅沢は求められず」
「食も酒も高価なものでなく」
「そして女もです」
 好きなこちらもというのだ。
「御台所様や側室の方々にです」
「買った女達だけで」
「それ以上は求められませんね」
「決して」
「俺は女は女房達か花魁達だけだ」
 相手をするのはというのだ。
「誰でもではない」
「左様ですね」
「決してそれ以上はですね」
「美しくとも他に女を見ても」
「大奥に入れたりもされないですね」
「大奥の女達も抱くが」
 それでもというのだ。
「誰かの女房なり許嫁がいればな」
「決してですね」
「相手にはされないですね」
「飯上げられることはないですね」
「何があろうとも」
「そうした欲はないからな」 
 だからだというのだ。
「俺は」
「はい、そして建築もですね」
「そちらもされないですね」
「幾ら権勢がおありでも」
「むしろそれが最もですね」
「興味のないことですね」
「御殿を建てて面白いか」
 英雄は問う様にして言った。
「果たして」
「つまり一切興味はない」
「上様は御殿等には」
「そういうことですね」
「だから建てられないのですね」
「既に俺には城がある」 
 大坂城がというのだ。
「ならだ」
「それで充分である」
「そう言われるのですね」
「だからですか」
「求められないですか」
「政で必要なものは築くが」
 それでもというのだ、英雄は城塞なりそうしたものは考えていた。だがそれ以外のものは決してであった。
「俺の為の御殿なぞな」
「いらぬ」
「それ故にですか」
「決して築かれない」
「そうですか」
「そうだ、俺はあればそれでいい」
 己のことはというのだ。
「それだけだ、だがこうした時はな」
「欲を出され」
「そうして全て得る様にされる」
「そういうことですか」
「そうだ、ではだ」
 英雄はさらに話した。
「攻めていくぞ」
「城の中の者達を」
「あらゆる手段を用いて」
「そしてそのうえで」
「城も街も手に入れますか」
「そうしていく、では酒をだ」
 これをというのだ。 
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