歪んだ世界の中で
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第九話 決意を述べてその三
「二度とね。嫌だから」
「寒い場所よりは暖かい場所に」
「誰でもいたいよ。そういうものだと思うよ」
だから家を出たかった。まさにそういうことだった。
「じゃあ今も暖かくなろう」
「どうするの?」
「まだ門限には少し時間があるからね」
だからだというのだ。街の中を見回しての言葉だった。
「ちょっと遊んでいく?」
「何処で遊ぶの?」
「ゲームセンター行かない?」
具体的にはだ。そこに行こうというのだ。
「ちょっとね」
「ゲームセンターになの」
「スタープラチナっていうカラオケボックスがあって」
そこから話すのだった。そのカラオケボックスからだ。
「その一階にね。ゲームセンターがあってね」
「そこに行くの?」
「そう。そこで少し遊ぼう」
純粋な微笑みに戻ってだ。希望は千春を誘った。
「そうしよう。今から」
「そこでゲームして遊ぶの」
「そうしよう。そしてね」
「そして?」
「できるかどうかわからない。いや、できるね」
言葉を訂正させた。自分で。
「千春ちゃんにプレゼントするから」
「そのゲームセンターで」
「楽しみにしてて。千春ちゃんにあげるから」
「そうしてくれるのね。それじゃあね」
どうするかと。千春も純粋な笑顔で応えた。
「楽しみにしてるね」
「うん、そうしてね」
「楽しみにしてね」
希望も笑顔だった。今も。
「じゃあ行こう」
「うん。そのお店にね」
「ゲームセンターはね。よく行くんだ」
そこにはだ。そうするというのだ。
「ただ。いつも一人か友井君と一緒で」
「千春とはだよね」
「殆ど。いや今がはじめてかな」
「前に一緒に行かなかった?」
「どうだったかな。行ったかな」
この辺りの記憶はだ。希望も千春も曖昧だった。
それでだ。希望ははっきりしない顔で首を捻りながらだ。こう言ったのだった。
「よくわからないな」
「そうよね。けれどそれだったらね」
「それだったら?」
「今行ってはっきりさせようよ」
これが千春の提案だった。はっきりとした笑顔になっての言葉だった。
「ゲームセンターに一緒に行ってね」
「うん、そうしてだね」
「そうしよう」
陽気な笑顔でだ。千春は希望に言う。
「そうすれば行ったことになるよ」
「そうだね。それじゃあね」
「一緒にね」
こう言葉を交えさせてだ。そのうえでだった。
希望は千春と共にそのゲームセンターに向かった。ビルの一階にあるその店は奥がかなり深い。暗い、ゲームセンター独特の雰囲気だがそれでもだ。
店の中は清潔で客の雰囲気もよかった。ゲームは色々とありその中のUFOキャッチャーの前にだ。希望は来てそのうえで自分の隣にいる千春に言った。
「今からプレゼント取るから」
「そのプレゼントって」
「そうだよ。この中のね」
UFOキャッチャーの中のだ。それを見ての言葉だった。
「ぬいぐるみ取るから。何がいいかな」
「千春が選んでもいいの?」
「プレゼントだからね」
だからだというのだ。希望は笑顔で千春に話す。
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