戦国異伝供書
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第百二十九話 灰からはぐれた者達へその三
「それがしは八十八年前に生まれまして」
「では」
「はい、歳は八十八になります」
「それはまたかなりの」
「まあたまたま長生きしまして」
「それは仙人だからでしょうか」
「いえ、そうではなく」
仙人であることは否定した。
「不老不死ではありませぬ」
「ではやがては」
「それがしもこの生を終えます、そしてそれはです」
八十八歳という高齢だけあってだ。
「そう遠くはありませぬ」
「そうですか」
「はい、まあ何時死ぬか」
このことは笑って言った。
「わかりませぬ、都に生まれ両親は都で商いをしていましたがそれがしが子供の時に流行り病で世を去ってそれがしは一人で商いをしてましたが」
「その時にですか」
「ふと前に妖術を収めた師となる方が来まして」
そしてというのだ。
「そうしてです」
「その方にですか」
「誘われて弟子になり」
そしてというのだ。
「後は飛騨で修業し」
「妖術を身に着けられ」
「それで長く妖術を使いつつです」
そのうえでというのだ。
「この国を巡っていましたがその中で魔界衆のことを知り」
「あの者達を」
「そして何とかせねばと思い」
「世を乱すあの者達に対して」
「それでなのです」
「彼等を集めましたか」
「はい」
飛騨者達を見つつだ、果心居士は顕如に答えた。
「そうしました、星を見ると間もなく尾張に天下に泰平をもたらす方も出られると出たので」
「上様ですな」
「そのことも見ましたので」
だからだというのだ。
「それがしも動きはじめました」
「そうでしたか」
「はい」
果心居士はさらに話した。
「天下に身寄りのない」
「そうした者達をですか」
「子を見付けては」
そうすればというのだ。
「引き取り」
「飛騨においてですな」
「その山奥において」
誰も入らないそこにというのだ。
「そうしました」
「そしてですか」
「その話をです」
「これよりですな」
「させて頂きます」
「おお、わし等の話ですか」
煉獄は居士の言葉を聞いて楽しそうに言った。
「ここで」
「うむ、そうなった」
居士はその煉獄に笑って応えた。
「これよりな」
「いや、我等の話なぞ」
「思わなかったね」
大蛇も言った。
「本当に」
「一介の忍に過ぎぬのにな」
「それがね」
「いや、お主達はもうそれぞれ旗本ではないか」
前田が彼等にこのことを話した。
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