戦国異伝供書

「もうです」
「上様もですな」
「そして跡継ぎ様も」
　信忠もというのだ。
「まずです」
「安心出来ますな」
「はい、そしてです」
「そしてとは」
「実はあの者達の師である」
「果心居士殿がですか」
「今この安土に来ておられます」
　そうだというのだ。
「丁度。そして飛騨者達も」
「ここにですか」
「おりますので」
　それでというのだ。
「話してもらいましょう」
「それでは、しかしです」　
　ここで顕如は驚きを隠せない声で言った。
「そもそもあの御仁ですが」
「果心居士殿ですな」
「拙僧はずっとあの御仁が実際におられるのか」
「そのことからですか」
「かなりです」
　首をどうかと横に振りつつ話した。
「疑っておりました」
「そうですか、それはです」
「滝川殿もですか」
「はい」
　そうだったとだ、滝川は顕如に話した。
「果たしてと」
「仙人とも妖術使いとも呼ばれ」　
　佐久間も言ってきた。
「その逸話は実に奇々怪々で」
「いや、それを聞きますと」
　林も言うことだった。
「果たして実際におられる御仁か」
「疑ってしまいますな」
「どうにも」
「それがしはまずおられぬと思っていました」
　丹羽はそうであった。
「まことに」
「左様でありましたか」
「だから実際におられるとわかった時は」
　丹羽も顕如に話した。
「驚きました」
「拙僧もでした、実際にこの世におられ」
「そして飛騨においてです」
「多くの優れた忍を育てていたので」
「まことかとなりました」
　そう思って驚いたというのだ。
「実に。ですが今ではです」
「この安土城にも来られますな」
「左様です、では」
「その果心居士殿と」
「そして飛騨者達も呼んで」
　そうしてというのだ。
「話を聞きましょう」
「それでは」
　こうしてだった、場にその果心居士と飛騨者達が呼ばれた。果心居士は今も飄々とした態度と粗末な服であった。
　飛騨者達は彼等の後ろにいる、そうしてだった。
　果心居士は一同の前に出ると促されて座った、そうしてこう言った。
「我等の話ですか」
「はい、そして宜しければですが」
　顕如は果心居士に言った。
「果心居士殿ご自身の」
「それがしがどういった者かですか」
「お聞きしたいのですが」
「はい、別に隠してはです」
「いませんか」
「ですから」
　だからだというのだ。
「お話を聞きたいのなら」
「それならですか」
「お話させて頂きます」
「さすればお願いします」
　顕如が応えてだった。
　早速果心居士の話を聞いた、彼はまずは自分のことを話した。