歪んだ世界の中で
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第八話 友情もその七
「希望といつも一緒にいられる様に」
「それじゃあ今はね」
「今は?」
「泳ごう」
そうしようというのだ。
「このプールでね」
「そうね。今はね」
「泳いでそうしてね」
「二人で楽しくね」
「僕。泳ぐ様になって」
どうかというのだ。そうなってから。
「身体がどんどん軽くなってきてるんだよ」
「そうよね。毎日やってるとね」
「違ってきてるよ。それにね」
「それに?」
「体重も減ってきたよ」
このことを心から喜んでいる言葉だった。
「痩せてきたよ」
「そういえば今の希望って」
「痩せてきてるよね」
「うん。そうなってきてるよ」
「だよね。昨日体重計で計ってみたら」
「どうなってたの?」
具体的にだ。どれだけ痩せたかというのだ。
「九十四キロあったのに」
「今は?」
「八十四なんだ」
「十キロも痩せたの」
「夏休みの間だけでね。だから」
「もっと泳いでそうして」
「走って。痩せるよ」
そうするというのだ。
「それで目標は」
「どれだけになるの?」
「七十四キロかな」
それ位になりたいというのだ。
「それ位まで痩せたいね」
「そうなのね。そこまで」
「もう太ってるとか言われたくないし」
今までの様にだというのだ。
「だから。痩せてね」
「そうしてよね」
「千春ちゃんと一緒にいたいよ」
「痩せてもっと」
「そう。もっとよくなって」
「痩せることはやっぱりいいことなんだ」
「ううん、痩せることはいいことじゃないよ」
千春はこのことは否定した。
「そうじゃなくてね。希望は自分がそうなりたいっていう体型があるのよね」
「うん、すらりってなりたいんだ」
そうなりたいとだ。希望は千春に答えた。
「やっぱりね。そうね」
「そうなりって思って。それを目指すことが」
「それがいいんだ」
「そうなの。目指してそれをね」
まさにだ。それがだというのだ。
「実際のことにするのがいいことなの」
「痩せること自体がじゃなくて」
「だって千春希望が好きだから」
彼自身を。そうだというのだ。
「どんな希望でも好きだよ」
「そうだったんだ。僕自体が」
「そうなの。けれど努力して何かになろうとする希望はね」
「そんな僕は?」
「一番好きだよ」
どんな彼でも好きだがだ。そうした彼はとりわけだというのだ。
「とてもね。だからね」
「痩せようと思ってそれを目指す僕が好きなんだ」
「そうなの。だから頑張ってね」
「うん、僕頑張るよ」
目を輝かせてだ。希望は千春に答えた。
「痩せてそれで」
「それで?」
「勉強も出来る様になるよ」
それも目指すというのだった。それもまた、だ。
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