優しいゴールデンレッドリバー
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第一章
優しいゴールデンレッドリバー
この時新潟に住んでいる岡部家では夫の徹も妻の幾重も苦い顔になっていた。
「本当に今年も雪が多いな」
「そうね」
こう話していた、夫は一八〇以上の長身できりっとした顔で黒髪を左から右に流している、身体は丸々としている。妻は小さい目で愛嬌のある顔立ちで黒髪をショートにしている。一五五程の背で胸も尻も大きくウエストはそこそこだ。
その二人が休日の朝窓の外を見て話していた。
「新潟だから」
「そうだよな」
「けれど今日は休日だから」
それでというのだ。
「それでね」
「ええ、会社行かなくていいし」
「まだいいよ」
「そうよね、私もね」
妻も言った。
「今日はパートないから」
「コンビニに行かなくていいから」
「よかったわ、ただ雪かきはね」
「後でしようか」
「あと雪溶けも撒いて」
これもというのだ。
「そうしておきましょう」
「そうね」
二人でこう話してだった、とりあえずは朝食を食べた。そうしてだった。
雪かきをしてから家に戻ったが。
「ワン」
「ああ、悪い」
夫は家の中にいるゴールデンレッドリバーが自分のところに来たのでついこう言った。
「アンのご飯忘れてたよ」
「今あげるわね」
妻も言った。
「ご飯をね」
「ワンッ」
犬、雌でこの家に子供の頃から一緒にいる彼女は妻の言葉に尻尾を横に振った。そうして二人が入れたご飯と水をだ。
心から楽しんだ、その彼女を見て夫は妻に言った。
「雪が降ったらついついな」
「そっちに気がいってね」
「アンのことは忘れるな」
「ご飯のことはね」
「それは悪いな」
「反省してるけれど」
それでもというのだ。
「それでもね」
「ついついな」
「雪に気がいって」
「アンのご飯はその次ね」
「そうだな、けれどいつもやってるよな」
夫は妻に自己弁護の様に言った。
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