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レーヴァティン

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第百九十五話 東国攻めその六

「そうした病でして」
「何故そうなるのかわからずです」
「困っている者が多かったですが」
「西の浮島ではあの腫れはない」
 一切というのだ。
「それは何故かというとな」
「あちらでは麦をよく食いますね」
「我々は米ですが」
「その違いですね」
「玄米なら問題ない」 
 こちらを主食にするならというのだ。
「それならな」
「しかし白米なら」
「それを食うのなら」
「腫れますか」
「脚気になる、あちらの医学ではわかっていたが」
 その病、脚気の原因がだ。
「しかしだ」
「この浮島には伝わっておらず」
「どうも忘れられたらしく」
「それで、です」
「上様が言われるまでは」
「そうだ、麦も食え」
 米だけでなくというのだ。
「そうすればだ」
「それで、ですね」
「晴れなくなる」
「元気なまま動け」
「そして戦えますね」
「あの病は食いものだ」
 それによってなるものだというのだ。
「白米だけ食っているとなる、だからな」
「麦もですね」
「そちらも食っていきますね」
「そしておかずもですね」
「充実させますね」
「そうだ、野菜も魚も肉もだ」  
 そうしたもの全てをというのだ。
「常にだ」
「ふんだんに食わせる」
「そうしてですね」
「常に充分に戦える様にしますね」
「兵達も」
「だから飯は麦飯だ」
 そちらにするというのだ。
「いいな」
「それですね」
「常にそれをたらふく食わせ」
「そうして大坂腫れを防ぎ」
「そのうえで、ですね」
「戦っていく、脚気になってはな」
 そうした病に罹る者がいてはというのだ。
「戦どころではない」
「全くです」
「それで満足に戦える筈がありません」
「大坂腫れが多くては」
「どうにもなりません」
「そうだ、実際にだ」
 英雄は自分達が起きた世界の話をここでもした。
「戦に支障が出たしな、俺達が起きた世界では」
「そうでしたか」
「実際にですか」
「上様が起きられた時の世界では」
「そうなっていましたか」
「そして多くの者が倒れた」
 日清戦争と日露戦争ではそれで多くの者が動けなくなり死んでいった、それは全て白米ばかり食べていたからだ。
「しかもおかしな医者がいてだ」
「余計にですか」
「事態は悪くなりましたか」
「そうなったのですか」
「そうだ、森林太郎という男だ」
 作家としてのペンネームを森鴎外という、陸軍軍医総監として陸軍の医学の頂点に立っていたのだ。 
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