英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~
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外伝~連合の思惑~ 後篇
~レヴォリューション・格納庫~
一方その頃、レヴォリューションに帰還してヴァリマール達から降りた際にリィン達の帰還を待っていたアルフィン達に労われた後雑談をしていた時にアルティナがふと呟いた疑問――――――ノルティア州奪還軍を殲滅てきる戦力を保有していながら、リィン達に助力を頼んだクロスベル帝国の意図に関しての疑問を口にするとミュゼがエルミナがパティルナに説明した内容と似たような説明をした。
「そのような理由があったから、クロスベルはリィン少将達にも助力を頼んだのか……」
「やれやれ、貸し借りを気にしてわざわざそんな回りくどい事をするとか、ホント”外交関係”ってのは面倒で厄介なものだぜ。将来はそんな世界に関わることになるリィンには同情するぜ~。」
「ふふ、確かにリィンさんは現時点で将来はクロイツェン州統括領主に内定しているのですから、クロイツェン州を統括する立場の者として、自国の関係者達だけでなく、他国の外交官を始めとした様々な立場の方達と関わらなければなりませんものね。」
「う”っ………参ったな……訓練兵時代もそうだがトールズの頃も政治方面に関してはそんなに深く学ばなかったからな……そんな俺がそういった外交関連を専門とする人達とまともに渡り合えるなんて、正直想像できないな……」
ミュゼの説明を聞いたクルトが考え込んでいる中、フォルデは溜息を吐いた後ステラと共に苦笑しながらリィンを見つめ、二人の話を聞いたリィンは唸り声を上げた後疲れた表情で溜息を吐いた。
「そもそも、訓練兵時代にしてもトールズ時代にしても、どちらも”政治家”ではなく”軍人になる為の教育”だったのですから、政治方面に明るくないのは仕方がないことかと。」
「ですが将来を考えるとわたくし達は政治に関して深く学ばなけれなりませんわね……」
「――――――その件に関してはリフィア達が貴女達が将来クロイツェン州を統括する立場の者やその関係者としてやっていけるように手配をしているから心配する必要はないわ。」
「え……姉様、それはどういう事なのでしょうか?」
困っている様子のリィンにアルティナが静かな表情で指摘した後に呟いたセレーネの言葉を聞いてある事を指摘したエリゼの話が気になったエリスは不思議そうな表情で訊ねた。
「貴女達も既に知っているようにメンフィル帝国は”実力主義”。戦場での戦功を評される等といった何らかの手柄を立てることで領主に命じられる例もあるのだけど……幾ら軍人や政治家としても優秀だとしても、それが領地経営者として相応しい能力があるとは限らないでしょう?だからメンフィルは世襲ではない方法――――――要するに立身出世によって領主となる人達には相応の教育を受けさせるようにしているのよ。」
「メンフィル帝国は新たに領主となる方に対してそのようなサポートまでされるのですか……」
エリゼの話を聞いたアルフィンは驚きの表情を浮かべて呟いた。
「ちなみに兄様達の場合はメンフィル帝国が兄様達に領地経営をする者として相応しい能力があると判断するまでクロイツェン州の”臨時統括領主”を務める事になっている方々の補佐として、その方々の仕事を手伝いながら学ぶという事になっています。」
「ハ、ハハ……俺達の為にそこまで考えてくれている事にありがたいと思うべきか、既に俺達の将来を決められている事を複雑に思うべきか悩む所だな……ちなみに俺達の将来だが、この戦争が終結してからそうなる事になっているのか?」
エリゼの説明を聞いて冷や汗をかいて苦笑したリィンはエリゼに訊ねた。
「”義勇兵”のセレーネやエリスはともかく、”現役の軍人”である兄様の場合は今回の戦争が終結しても”軍人”を続けたいのであれば、領地経営関連の教育は兄様がメンフィル帝国軍人を退職するまで待って頂けるとの事です。――――――とは言え、メンフィル帝国としてもいつまでも領主を”臨時”のままにはしておけませんから、待つにしてもせいぜい10年あたりが限度と思われます。」
「そうか…………ちなみにセレーネとエリスの場合はどうなるんだ?」
「セレーネとエリスも希望するなら一般的な高等学校卒業の年齢である18歳まで領主を支える者としての教育を待って頂けるとのことです。ですから二人――――――いえ、セレーネとエリスもそうですが、アルフィンさんも望むのであればこの戦争が終結した後、トールズとアストライア以外の学術機関に転入して新たな学生生活を送っても構いませんし、アルティナさんもエリス達のように学術機関に入学したかったら、希望の学術機関に入学して学生生活を送っても構いませんよ?――――――ちなみに先に言っておきますが”学費”に関しては心配する必要はありません。セレーネはルクセンベール卿やサフィナ様達が学費を出してくれますし、エリス達の学費に関しては私と兄様が出します。」
リィンの質問に答えたエリゼはセレーネとエリス、アルフィンとアルティナに順番に視線を向けた後微笑み
「そんな……お兄様を差し置いて、わたくし達だけ学生生活を楽しむ訳にはいきませんわ。」
「ハハ、俺の事は気にする必要はないさ、セレーネ。学生生活はトールズでもそうだが、黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)でも十分経験したからな。しかも幸いにも今の俺の軍位は”少将”だから毎月メンフィル帝国から俺に支払われる給料もエリゼ程ではないにしても高額な給料だから、エリゼと協力すれば3人分の学費くらい余裕で出せるさ。」
エリゼの申し出に対して申し訳なさそうな表情を浮かべて呟いたセレーネに対してリィンは苦笑しながら答えた。
「リィン少将はエリゼさんを例えに出されましたが、もしかしてエリゼさんはいわゆる”高級取り”な方なのでしょうか♪」
「ミルディーヌ、貴女ね……もう少し遠回しな言い方はできなかったの?」
興味ありげな様子で訊ねてきたミュゼの質問にその場にいる全員が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アルフィンは呆れた表情で溜息を吐いた。
「……ですが、ミュゼさんの仰る通り、エリゼ様は今どれ程稼いでいるのか気になりますね。何せ”少将”のリィンさんと協力すれば3人分の学費の負担も余裕で可能との事ですし。」
「そうだな………リィン少将の話から察するに、メンフィル帝国の皇族専属侍女長の給与が高額なのはほぼ間違いないだろうな。」
静かな表情で呟いたアルティナの意見に頷いたクルトは考え込み
「確か俺の知り合いのメイドの話だと、”皇族専属侍女長”はボーナスも含めたら1年の稼ぎだけで家1軒を購入できるって話だぜ?」
「ええっ!?そ、そうなのですか、姉様……?」
「……まあ、フォルデさんの仰っている事は間違いではないわね。私の今の給与はこの世界の貨幣で言えば一月につき80万ミラ、年に一度ある賞与は400万ミラになるわ。」
口元に笑みを浮かべたフォルデの話を聞いて驚いたエリスはエリゼに訊ね、訊ねられたエリゼは困った表情で答え、エリゼの答えを聞いたエリス達はそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「一月につき80万ミラでしたら、ボーナスも合わせると1年で1460万ミラを稼いでいるという事になりますね。」
「フフ、確かに約1500万ミラもあれば、一般的な家1軒くらいなら一括で購入できるでしょうね。」
目を丸くして呟いたアルティナの意見に続くようにステラは苦笑しながら答え
「ちなみにリィン少将自身の給与形態はどうなっているのでしょうか♪」
「ちょっと、ミルディーヌ……兄様に失礼でしょう?」
「ハハ、別にそのくらいの事、俺は気にしないさ。――――――俺が”灰獅子隊”の”軍団長”に任命された後にセシリア教官から説明された俺の待遇についてだが、”少将”の給与は一月につき60万ミラ、1年に1度だけもらえる賞与は300万ミラで、更に”灰獅子隊”の”軍団長”を務めている事から”特別手当”として連合軍、もしくはヴァイスラント新生軍から灰獅子隊に対して直接出される要請を一つ成功するごとに100万ミラが俺の口座に振り込まれる事になっていると聞いている。」
からかいの表情を浮かべたミュゼの質問を聞いたエリスが冷や汗をかいた後ミュゼに注意している中リィンは苦笑しながら答えた。
「リィンさんは”少将”ですから、給与も高額とは思っていましたが、わたくしの予想以上ですわね……」
「連合かヴァイスラント新生軍から直接出された要請を一つ成功するごとに100万ミラという事ですから、今回の要請を含めて既に4回成功させていますから、400万ミラもの大金をリィンさんは既に稼いでいるという事になりますね。」
「今の話を聞いて気になったのですが……連合側から直接出された要請を成功するごとにリィン少将が”特別手当”を得ているという事は、リィン少将と同じ”軍人”のフォルデさんやステラさん達もそうなのですか?」
「ええ。さすがにリィンさん程ではありませんが、私を含めた灰獅子隊に所属しているメンフィル帝国軍は全員それぞれの軍位に応じて”特別手当”を頂くことになっていますよ。」
「ちなみにクルト達”義勇兵”組は戦争が終わった後に支払われる報酬に上乗せされることになっているんだぜ?」
リィンの話を聞いたアルフィンが驚いている中アルティナは静かな表情で計算し、クルトの疑問にステラと共に答えたフォルデは口元に笑みを浮かべて指摘した。
「そうなんですか………」
「えっと……お兄様達の雇用状態を聞いて気になっていたのですが、ツーヤお姉様は一体どのくらい稼がれているのでしょうか?お姉様はプリネ様の”専属侍女長”だけでなく”親衛隊長”も務めていますが………」
フォルデの話を聞いたクルトが目を丸くして呟いている中ある事が気になったセレーネは不思議そうな表情でエリゼを見つめて訊ねた。
「私はプリネ様関連の財務には関わっていないから、ルクセンベール卿の給与形態はどうなっているかはわからないけど………確か領地を持たない貴族の当主――――――いわゆる”法衣貴族”の場合、それぞれの爵位に応じた月給が支払われることになっていて、ルクセンベール卿と同じ”伯爵”の爵位があるゼルギウス様やシグルーン様はそれぞれこちらの世界の貨幣で言えば100万ミラ相当の月給が親衛隊長、副長としての給料に上乗せされているわ。ちなみに年に一度ある賞与は”伯爵”の場合は500万ミラよ。」
「ええっ!?」
「ルクセンベール卿は”専属侍女長”と”親衛隊長”を兼任していますから、そこに更に”専属侍女長”と”親衛隊長”の給料や賞与も上乗せされているという事にもなりますよね……?」
「フフ、それを考えるとルクセンベール卿はかなりの資産家でもあられるのでしょうね♪」
「確かに毎月の給料がそれ程の高額ならば、セレーネさんの学費もルクセンベール卿一人で余裕で負担できるでしょうね。」
エリゼの答えを聞いたセレーネは驚きの声を上げ、エリスは表情を引き攣らせて呟き、ミュゼはからかいの表情で呟き、クルトは苦笑していた。
「知り合いがどのくらい稼いでいるかの話はそのくらいにして、今回の要請の件でメンフィル帝国もそうだがクロスベル帝国も”エレボニア帝国の存続”を容認する事を考えている可能性がある事がわかったのが、リィン達にとって一番の収穫じゃねぇのか?」
「え……それはどういう事なのでしょうか?」
フォルデの話を聞いて驚いたアルフィンは戸惑いの表情で訊ねた。
「連合がこの戦争でエレボニアを滅亡させるつもりだったら、エレボニアを存続させる為に戦場での手柄を求めているリィンにわざわざ手柄――――――それも、大軍相手に僅かな戦力で撃退したみたいな大手柄をたてさせることなんてしねぇだろ?」
「あ………」
「確かに言われてみればそうですね……」
「はい。そもそもメンフィル帝国がエレボニアを”本気”で滅亡させるつもりであるのならば、リィンさんを”灰獅子隊”の”軍団長”に任命しないでしょうし。」
フォルデの説明を聞いたアルフィンは呆けた声を出し、クルトは考え込みながら呟き、クルトに続くようにアルティナは自身の推測を口にした。
「お兄様はあまり驚かれていないようですが……もしかして気づかれていたのですか?」
「ああ。老師から教わっていた”観の眼”のお陰で、”灰獅子隊”として本格的に活動し始めた頃あたりには気づけたよ。」
「”観の眼”とはどういうものなんですか?」
セレーネの質問に答えたリィンの答えが気になったステラは不思議そうな表情で訊ねた。
「”観の眼”とは”あらゆる先入観を排し、あるがままを見て本質を捉えるという思考法、あるいは境地”の事です。兄様の洞察力や気配察知が優れているのはこの”観の眼”を修めているからでもあります。」
「”八葉一刀流”はそのような境地を修めているのですか……」
リィンの代わりに答えたエリゼの説明を聞いたクルトは興味深そうな表情を浮かべた。
「……ミルディーヌ。貴女の事だから、貴女も兄様のように連合の思惑について気づいていたのじゃないかしら?」
「フフ、さすがは私の事をよくわかっているエリス先輩ですわ♪――――――私は”連合が戦後エレボニア帝国を存続させる事も考えている事についてはユーディお姉様達とアリシア女王陛下達にご挨拶する機会を頂いた時点で気づきましたわ。”」
「君はそんなにも前から連合のエレボニアの存亡をどうするかについての思惑に気づいていたのか……」
真剣な表情を浮かべたエリスに訊ねられたミュゼは苦笑しながら答え、ミュゼの答えを聞いたクルトは驚きの表情でミュゼを見つめた。
「リィンさんもそうですが、ミュゼさんも連合がリィンさんの件がなくても戦後エレボニアを存続させるかもしれないと思ったのでしょうか?」
「そうだな……いくつか推測はあるが一つはメンフィル帝国が掲げている”理想”だ。」
「”メンフィル帝国が掲げている理想”というと………」
「――――――”全ての種族との共存”、ですね。」
ステラの質問に答えたリィン恩答えを聞いたアルティナが考え込むとエリゼが答えを口にした。
「ああ。”共存”を目指している以上、自国に対する周辺国家の”印象”は気にするはずだ。――――――特にメンフィル帝国がゼムリア大陸で本格的に活動する為に色々とお世話になったリベール王国との友好関係は重視しているようだから、そのリベール王国のメンフィル帝国に対する印象を悪化させるような事は可能な限り避けるつもりなんだと思う。」
「リベール王国のメンフィル帝国に対する印象を悪化…………―――――!”不戦条約”ですか……!」
「”アルスター襲撃”の件でエレボニアとリベールが戦争勃発寸前の状況に陥っているとはいえ、リベールは未だ連合に加わらずエレボニアとの”開戦”も宣言していませんから、もしかしたらリベールは今でも”対話による和解”で今回の戦争を終結させることを望んでいるかもしれませんね。」
「そしてもしこの戦争でメンフィル帝国がエレボニア帝国を滅亡させれば、リベール王国のメンフィル帝国に対する印象の悪化は避けられない為、それを避ける為にもエレボニア帝国との戦争に勝利しても、エレボニア帝国を存続させることを考えている……という事ですね。」
「あ………」
リィンの話を聞いてある事を察したクルトは目を見開いて声を上げ、アルティナとステラは静かな表情で推測し、リィン達の話を聞いたアルフィンは呆けた声を出した。
「メンフィル帝国はそれでいいとしても、クロスベル帝国はどうしてなのでしょう?………こんな事は言いたくありませんが、”不戦条約”が締結されるまでクロスベルの状況――――――”クロスベル問題”の件を考えるとクロスベルのエレボニアに対する印象は”最悪”だと思われるのですが………」
「実際、その”クロスベル問題”の原因の一つである旧カルバード共和国を滅ぼしていますものね……」
エリスが複雑そうな表情で新たな疑問を口にするとセレーネも複雑そうな表情で呟いた。
「エリス先輩達もご存じの通り、クロスベル帝国は”新興の国家”――――――しかも建国されてからまだ半年も経っていません。その為戦争状態に陥っていない他国との新たな国交を開きやすくするためにも他国のクロスベルに対する印象を良くする手段として敗戦後のエレボニアを国として存続させることを考慮しているのだと思われますわ。ましてやクロスベルは”クロスベル問題”をリベールが提唱した”不戦条約”によってかなり緩和されたという”恩”がある事で戦後のクロスベルの国交を良好なものにする為にも今回の戦争の件で”不戦条約を提唱したリベールに対する一定の配慮をクロスベルがする必要がある”のだと判断しているのではないでしょうか?」
「そうですね……ディル=リフィーナと違い、ゼムリア大陸は”国際社会”なのですから、他国との国交を結ばず、孤立した国家等国として存続させることは現実的に考えて不可能です。」
ミュゼの推測に頷いたエリゼは静かな表情で続きを答えた。
「それともう一つは単純な理由として、クロスベルが統治する領土を減らす事で早期に建国したばかりのクロスベル全土の統治状態を良好にすることも狙いの一つかもしれませんわ。」
「え……ですが、クロスベル――――――いえ、ヴァイスハイト陛下とギュランドロス陛下は二大国を呑み込む事でクロスベルを大国へと成り上がらせようとしていますわよね?実際、既に旧カルバード共和国を呑み込んでクロスベルの領土とした訳ですし……」
ミュゼが口にしたもう一つの推測を聞いたセレーネは自身の疑問を口にして指摘した。
「……それに関してだが恐らく内政に強いかつエレボニアの領土を統治する上で必要な人材が不足しているからじゃないか?エレボニアはカルバードと違って、貴族達によって領土を統治されてきたのだから、幾ら何でもそれを完全に変えてしまえばオズボーン宰相のように貴族達の反感を買って、領土の統治どころか最悪内戦に発展しかねないのだから早期に戦争で得た領土の統治を良好にしたいクロスベルにとってはそんな暴挙はできないと思うし。」
「ええ。ラマールはヴァイスハイト陛下の第一側妃として嫁がれたユーディお姉様とクロスベル皇家が”クロスベル側のカイエン公爵家次期当主”として内定しているキュアさんの存在によってある程度の数のラマールの貴族達も納得せざるをえないでしょうが、ノルティアはノルティアの貴族達を納得せざるを得ない人物をクロスベル帝国政府もしくは皇家に引き込んでいないのですから、ノルティア州の領土の一部はともかくノルティア州全土の統治には時間がかかると思われますわ。」
「”ノルティア州の貴族達が納得せざるを得ない人物”というと……」
「”四大名門”の一角にしてノルティア州統括領主である”ログナー侯爵家”か。」
リィンの推測とリィンに続くように説明したミュゼの推測を聞いたアルティナとクルトはそれぞれ静かな表情で呟き
「今までの話を纏めて判断すると、今回の戦争でエレボニアが敗戦してもエレボニアが存続できる可能性は決して低くないという事ですわね……!」
「ああ、そうなるな。」
アルフィンは明るい表情で声を上げ、アルフィンの言葉にリィンは静かな表情で頷いた。
「”そうなるな”って……意外と冷静じゃねぇか。お前、エレボニアを救うためにメンフィル帝国軍に戻って、その目的が現実にするのも”夢物語”じゃないのに、何でそんなに冷静なんだ?」
「”可能性”は確率が高くても、あくまで”可能性”です。それこそこのまま俺達が何もしなかったら敗戦後のエレボニアが滅亡する可能性も十分に考えれます。――――――”例え勝率が高くても実戦では何が起こるかわからないから、自分達がどれだけ有利な状況であろうとも決して楽観視や油断をするな。”―――――セシリア教官が俺達に常に心掛けるさせるように何度も口にしてきた教えを俺が忘れると思っていたのですか?」
「フフ、懐かしい言葉ですね。」
不思議そうな表情で訊ねたフォルデに対して答えた後静かな表情で呟いたリィンの話を聞いたステラは懐かしそうな表情を浮かべ
「さすがメンフィル帝国軍の”総参謀”を務めているだけあって、とても慎重かつ堅実な考え方を持っていらっしゃる方ですね。」
「クスクス、”脳筋”の紫電殿とはまさに真逆の考え方ですわね♪」
「ミュ、ミュゼさん……最近何となくそう思うようになったのですが……もしかしてミュゼさんはサラ教官の事が嫌いなのでしょうか……?」
「”嫌い”というよりも、性格もそうですが”考えが合わない”のでは?セシリア将軍もそうですがミュゼさんのような思慮深い人にとって、紫電のような”状況が悪くなってもその場で実際に動いで状況を変えればいい”みたいな考えが浅い人とは決して相容れないと思いますし。」
「ミルディーヌの場合は単に”腹黒い”から、サラさんのような正義感溢れる方は”天敵”だからだと思いますよ。」
クルトは感心した様子でセシリアを思い浮かべ、微笑みながら答えたミュゼの言葉を聞いたリィン達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中困った表情を浮かべながら疑問を口にしたセレーネの言葉に指摘したアルティナの推測を聞いたエリスはジト目でミュゼを見つめた。
「フフ…………――――――話は変わりますが兄様。ヴァイスハイト陛下――――――クロスベル帝国政府から灰獅子隊に対する新たな要請が先程出されたのですが……」
リィン達の様子を微笑ましそうに見守っていたエリゼだったがすぐに気を取り直してリィンに声をかけた。
「ヴァイスハイト陛下から?一体どんな要請なんだ?」
「端的に言えば”幽霊退治”です。」
そしてリィンの質問にエリゼは静かな表情で答えた――――――
後書き
今回の話の最後でもうお察しの人もいるかもしれませんが、次回はリィンの新たなる使い魔キャラが登場します(まだ増えるんかい!?)なお、そのキャラで他の物語とは比べ物にならないくらい増え続けているリィンの使い魔キャラもストップする予定です。(既存のキャラが後に使い魔になる可能性はありますが(汗))ちなみに次回登場する新キャラは今回の話の最後で大ヒントを出していますから、それを考えると候補キャラは大分絞られますからこの時点で誰が出るか確信している人もいるかもしれませんね(苦笑)
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