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戦国異伝供書

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第百二十八話 僧籍の婚姻その六

「越前を一気に攻められ」
「そして浅井殿を降されました」
「浅井殿は織田家の家臣となられましたし」
「瞬く間にでした」
「ことは織田家のものとなりました」
「そうであるな、しかしな」
 ここで顕如はこうも言った。
「浅井家はお父上が急に織田家に翻意を言われたそうであるな」
「はい、隠居されていた」
「ご子息にそうさせられていた」
「その方がですな」
「急に動きだされて」
「そうしてですな」
「不思議なことではないか」
 顕如は首を傾げさせて言った。
「浅井家の先代殿は大人しい方ですが」
「それでもですな」
「先代殿が急に動かれるなぞ」
「おかしいですな」
「それは」
 このことは本願寺の誰もが首を傾げさせた、誰も久政が急に織田家に対して弓を引いたことがわからなかった。
「織田家と争っても勝てませぬ」
「あの時挟み撃ちにしてもです」
「織田殿がその気なら十万の大軍でしたし」
「勝つことは普通に出来ました」
「糧道を守りながらそうすれば」
「織田家は勝てましたな」
「あの時織田殿はすぐに退かれたが」
 信長はそうしたがとだ、顕如は話した。
「しかしな」
「それでもですな」
「あの時戦うことも出来ましたな」
「そう考えると浅井家に勝算はありませんでした」
「実際に敗れ」
「先代殿は腹を切られましたな」
「織田家に勝てぬことは明白で」
 そしてというのだ。
「しかも朝倉殿は織田家に従わなかった」
「天下人と言っていい織田殿に」
「妙な誇りを以て」
「斯波家の家臣としては朝倉家の方が格上だったので」
「それで、でしたな」
「それで織田家に従わぬなぞ筋が通らぬ」
 朝倉家もっと言えば主の義景の意地だけのことだったというのだ。
「到底な」
「左様ですな」
「あれは朝倉家が間違っていて」
「その朝倉家にお味方するなぞ」
「到底ですな」
「納得出来ませぬな」
「その朝倉家に味方するなぞ」
 顕如はどうかという顔で話した。
「道理が合わぬ、しかも織田殿は公儀を言われた」
「そのうえで攻められました」
「帝そして公方様の詔を以て」
「どう見ても織田家に道義があります」
「そうであった、それで朝倉家に味方するなぞ」
 これはというのだ。
「どう考えてもおかしい、織田家に筋がありな」
「そしてですな」
「織田家の力はあまりにも大きい」
「それで弓を引くなぞ」
「誰が考えても」
「全くじゃ、先代殿はそこまで道理のない方ではなかった」 
 顕如も知っていることだ。
「だから余計におかしい」
「全くですな」
「おかしなことです」
「思えば」
「このことは」
「うむ、おかしな話じゃ。若しや」
 顕如はさらに言った。
「先代殿をそそのかした」
「そうした者がいますか」
「裏に」
「そうなのでしょうか」
「そうも考える、まさかと思うが」 
 それでもというのだ。 
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