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戦国異伝供書

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第百二十七話 橙から灰色へその十一

「大変なことになる」
「ですな、伴天連の言う通りにしますと」
「それならです」
「天下はどうなるか」
 神仏を認めぬならというのだ。
「伴天連の思うままになりはすまいか」
「そうですな」
「そうなってもおかしくないですな」
「では、ですか」
「法主様としては」
「あの者達に油断出来ぬ」 
 その目を険しくさせて言った。
「そう思うしかない」
「やはりそうですか」
「そうなりますか」
「伴天連の者達には」
「どうにも」
「いむ、表向きは穏やかでもな」
 それでもというのだ。
「腹の中はどうか」
「剣を持っている」
「そうであってもおかしくはない」
「それも世にはありますな」
「そうした者がな」
 顕如は剣呑な声で話した。
「伴天連の者達にはな」
「多い」
「そうだというのですか」
「教えはよくとも」
「その腹にあるものは」
「教えが幾らよくともそれを説く者次第であるな」
 顕如はこうも言った。
「そうであるな」
「はい、それを悪く使えばです」
「忽ち邪法になります」
「御仏の教えも然り」
「八百万の神のそれも」
「世にはそうして邪法を説く者もおる」 
 顕如もよく知っていることだ。
「そうであるな」
「はい、今もいますし」
「これまでもですな」
「まやかし坊主とも言いますが」
「この世にいます」
「そうした者も仏門におるなら」
 それならというのだ。
「伴天連、耶蘇教というな」
「あちらの教えにもですな」
「そうしたまやかしの者がおる」
「それも多い」
「そうだというのですな」
「仏門や神道と比べてかなりな、あの者達の目を見ると」
 それをというのだ。
「そう思える」
「今堺に多いですが」
「そして都にも」
「教会というものを建ててそこから布教していますが」
「その中にはですか」
「邪な者が多い、これはまさかと思うが」
 顕如は眉を顰めさせて話した。
「民を他の国に売っておるそうじゃ」
「民をですか」
「本朝の者達をですか」
「そうしておるのですか」
「そしてそこで奴婢として使っておるとのことじゃ」
 そうしているというのだ。
「これはないと思いたいが」
「恐ろしいことですな」
「もう本朝では奴婢はいませぬ」
「しかも他の国に売るとは」
「拙僧もまさかと思いますが」
「その様なことをしていますか」
「これが事実なら許せぬ」
 顕如は強い声で言った。
「そうであるな」
「はい、何としても」
「本朝の民を他の国に売るなぞです」
「そして奴婢として使うなぞ」
「言語道断です」
「左様、我等一向宗は民を救う教え」
 本願寺のその教えのことも話した。 
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