戦国異伝供書
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第百二十七話 橙から灰色へその八
「これからはな」
「違いますか」
「織田殿がこのまま天下人になられれば」
「その時は」
「そうなる」
まさにというのだ。
「間違いなくな」
「そうですか、では」
「織田家に対しては」
「争わぬ、むしろな」
それよりもというのだ。
「あの方が天下人になられてだ」
「そうしてですね」
「天下を治められるなら」
「それならば」
「それに協力し」
信長の天下布武、それにというのだ。
「天下泰平をもたらす力になろう」
「では一向一揆も」
「織田家にはですか」
「そして織田家の盟友である徳川家や浅井家にも」
「三河や近江にも門徒は多いですが」
「動かさぬ」
一切という言葉だった。
「むしろ天下泰平の為にな」
「門徒達にはですな」
「それぞれ尽せ」
「己の為すべきことをして」
「そう言いますか」
「そうしたい、百姓は何が一番幸せか」
一向宗の門とにも多い彼等はというのだ。
「一体な」
「はい、やはり畑仕事です」
「それが出来ればです」
「百姓は一番幸せです」
「泰平の中で出来れば」
「町人達も同じ」
彼等もというのだ。
「やはりな」
「街で商いをして」
「そしてものを作れれば」
「それで、ですな」
「幸せですな」
「だからな」
それ故にというのだ。
「門徒達はな、もう一揆は起こさず」
「己の生を過ごせ」
「そう言いますな」
「命を賭けてそうせず」
「泰平に」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「その様にな、織田殿は民には手出しをされぬ」
「ですな、兵に乱暴は一切許さず」
「一銭でも盗んだら切ります」
「むしろ悪者は何処までも追い成敗します」
「そうした御仁です」
「あの方ならば天下を一つにし」
そしてというのだ。
「泰平にしてくれる」
「だからですか」
「そうした方だからですか」
「我等は織田殿に従い」
「戦はしないですか」
「もうな、武器を捨て」
槍だの弓矢だの鉄砲だのをというのだ。
「そのうえでじゃ」
「天下の政に入る」
「そうしますか」
「これよりは」
「左様、あと拙僧のことであるが」
顕如はさらに話した。
「近々な」
「はい、ご結婚ですな」
「その時が迫っていますな」
「いよいよ」
「うむ、三条様の娘殿でな」
本願寺は僧籍であっても妻を迎えられる、このことは親鸞からのことであり顕如もまた然りであるのだ。
ページ上へ戻る