戦国異伝供書
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第百二十七話 橙から灰色へその六
「親鸞様の再来にも思えます、今の世は乱世」
「だからですか」
「そなたが必要なのでしょう」
「では」
「より学び徳を備えるのです」
「わかりました、そしてですね」
「この乱世を変えていくのです」
こう孫に言うのだった。
「貴方の父も言っていましたね」
「そうでした、拙僧にそれだけのものがあると言われ」
「そうです、ですから」
それでというのだ。
「今以上にです」
「学も徳もですね」
「備えるのです、今は」
「政を見ると共に」
「そうです、まだ子供です」
「そうですか、ですが学と徳は」
ここでだった、顕如は。
祖母にだ、こう言った。
「この生である限り」
「していくというのですか」
「そうしていいでしょうか」
「そう言うとは」
祖母は孫の言葉にかえって唸った、そして言った。
「そなた、まことですね」
「そう言ってくれますか」
「生きている限り学び徳を積むとは。では」
「これからもですね」
「学ぶのです、そして徳も」
そちらもというのだ。
「積んで下さい」
「そうします、そして本願寺も門徒達も」
「全てをですね」
「守るのです、よいですね」
「はい、そして戦は」
これもというのだ。
「やはり」
「避けたいですか」
「それは」
こう祖母に答えた。
「誰が苦しむか」
「戦があり」
「それを考えますと」
「民ですね」
「ですから」
それ故にというのだ。
「拙僧はです」
「戦はですね」
「避けるべきとです」
「思いますか」
「ですから一揆も」
一行一揆、それもというのだ。
「これまでよく起こしてきて特に加賀では」
「あの国はですね」
「今は我等の国となっていますが」
本願寺のというのだ。
「百姓の国として」
「それでもですね」
「一揆も戦です」
「だからこそですね」
「どうしてもという時は起こさず」
「泰平にですか」
「努めたいと思っています」
「そなたはそう考えていますか」
「戦で苦しむのは民です」
顕如はまた祖母にこう言った。
「ですから」
「そうですか、そこまで考えていますか」
「この考えは間違っているでしょうか」
「いえ」
祖母の返事は確かなものだった。
「それでこそ御仏に仕える者です」
「そうなのですね」
「そうです、確かに今は戦国の世」
このことは事実だというのだ。
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