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アーノルド

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第四章

「今じゃその日本に住んでな」
「日本酒のんで日本の料理食って」
「楽しくやってますね」
「わからないものだ」
 この言葉は笑って出した。
「そしてあんた達と一緒に野茂も応援してるさ」
「そうなんですね」
「かつては敵でも」
「今は応援してますね」
「そうなってるからな」
 それでというのだ。
「変われは変わるものだな」
「そうですよね」
「じゃあ俺達と一緒に飲みますか」
「そうしますか」
「そうするか、じゃあ今日は飲むか」
 老人は日本の若者達に笑顔で応えた、そうしてだった。
 コシュシコはこの日は彼等としこたま飲んだ、そしてその中でこんなことを言ったのだった。
「しかし野茂が前いたチームはな」
「ああ、近鉄ですね」
「さっきアーノルドの話で出ましたけれど」
「あのチーム今大変ですね」
「野茂以外にも主力ごそって抜けて打線も急に駄目になって」
「あれだけ主力が抜けたら弱くなって当然だよ」
 近鉄についてはこう言うのだった。
「本当に」
「そうですよね」
「今年あのチームはいいとこないですね」
「最下位になりますね」
「そうなるな、野茂がアメリカで活躍することはいいにしても」
 それでもというのだ。
「近鉄は大変だな」
「元いたチームはそうですね」
「あれ監督が悪いですね」
「そうですね」
「あの監督はアーノルドじゃないが」
 裏切者ではないというのだ。
「大統領になった時のグラントだな」
「それもよくないですよね」
「今の話の流れだと」
「そうですよね」
「ああ、駄目ってことだ」
 コシュシコは日本酒を美味そうに飲んで言った、そうして今度は野茂の話を詳しくした。その酒の話にはもう裏切者のことはなかった。


アーノルド   完


                 2020・10・18 
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