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大阪の夜行さん

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第二章

「ここで言ってるの」
「信じられないな」
「けれど気をつけてね、大晦日は」
「ああ、わかったよ」 
「うちの人にも言ってるから」
 夫である彼にもというのだ、玲美は鹿児島から今弟が通っている八条大学に進学してそのまま神戸就職してその職場で夫と出会い結婚し大阪に住んでいるのである。それで自分と同じ大学に進学した弟を両親と話して家に住ませているのだ。
「大晦日の夜は注意してってね」
「まさかな、けれど大学にもな」 
 その八条大学にもというのだ。
「夜行さんの話があるし」
「若しかしたらね」
「大阪にも出て来るか」
「そうかも知れないから」
「気をつけるな」
「ええ、そうしてね」 
 こう弟に言った、そしてだった。
 玲美は弟から大学の話を聞いた、そうして自分が通っていた大学がその頃と比べて随分変わったことも知った。この時は四月だったが。
 拓也は平和で充実したキャンバスライフを送り。
 大晦日も姉夫婦の家で過ごした、そしてだった。
 大晦日彼女とデートの為に家を出た、ここで姉に言われた。
「いい?あの道を通るならね」
「大晦日だしな」
「夜行さんにはね」
 くれぐれもという口調での話だった。
「注意してね」
「わかったよ、じゃあな」
「ええ、それで相手の娘何処にいるの?」
「すぐそこの娘だよ」
「ご近所さんなの」
「たまたま同じバイト先で」 
 それでというのだ。
「近所にいて」
「縁があってなのね」
「付き合ってるんだよ」
「そうなのね。じゃあその娘にも行っててね」
「わかったよ、あの道を通るなら」
「夜行さんには注意してね」
 こう言ってだった。
 玲美は拓也を送り出した、彼は交際相手の家に行ってそのうえで大晦日のデートに出た。大みそかは寺に行って除夜の鐘を聞いて。
 年が変わると神社に行くつもりだった、だが。
 ここでだ、彼が夜行さんの話をすると交際相手はこう言った。
「鹿児島の妖怪だし」
「大阪にはか」
「出ないんじゃないの?」
「いや、それが」
 姉から聞いた話をそのまました。
「そういう訳だからな」
「本当なの」
「だからあの道は通らないで」
 それでというのだ。
「行こうな」
「私妖怪は見たことないけれど」 
 黒髪をショートにした小柄な娘だ、顔はにこやかで胸は玲美程でないが大きい。
「あの道のことは」
「知ってるよな」
「ご近所だからね」
 それでというのだ。
「知ってるわ」
「それじゃあな」
「ええ、あの道は避けましょう」
「そうしような」
 こう話してだった、二人はその道は避けてやや遠回りであるが別の道を歩いていくことにした、だがその時に。
 ふとその道を横に見た、子路の横に見えたのだ。すると。
 そこに白い平安時代の公家が着る官服を身に着けた顔の全てが長い毛に覆われ一つ目で冠を被った男がだった。
 首のない馬に乗って道を走っているのが見えた、二人共それを見た。それで拓也は彼女に思わず言った。 
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