BanG Dream! ワーカーホリック少女が奏でるオト
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Pastel✽Palettes Ⅰ
#008 Pastel✽Palettes&Sublimatum Re:Birth Live
前書き
お久しぶりです。
この章の最大の見せ場であるライブ回です。
それではどうぞっ!
Pastel✽Palettesメンバー全員とSublimatumメンバー全員、それにさーくんも加えて、大雨の中駅前でチケット配りをして数日後。
その間に彩が案の定風邪をひいたりした事もあったりはしたけれども、何とか私を含めた皆が万全の体調で今日、この日を……『Pastel✽Palettes&Sublimatum Re:Birth_Live』当日を迎える事ができた。
会場の……『さいたまスーパーアリーナ』ではスタッフ達は既に会場準備、物販等の作業で忙しく往来している。
そして開始前の控え室にはPastel✽PalettesとSublimatumのメンバー、それにマネージャーのさーくん、燐子が集まっていた。
私も含めたSublimatumメンバーは久しぶりのバンドでのライブで少し緊張はしている。けども、全員「ライブをしたい」という高揚感が勝っているようだ。
私達の方は特に問題はなさそうだ……。
問題は……彩達の方だ。日菜を除く全員が緊張で萎縮している。
「あ、あの~……亜麻音さんちょっと良いですか?」
「どうしたの? 麻弥」
「あの……今日のライブの観客ってどの位居るんですか……?」
「聴かない方が良いと思うんだけど……キャパ満だし、37000人位ね」
「ぇえ!? 前の3倍強っすか!?」
「それにライブビューイングもあるし、もっと多いわね」
「なんすか!? その数!? どうしてそんなに!?」
私の答えに驚愕する麻弥。それを窘めたのは麻弥の双子の姉でSublimatumの今日はキーボード担当の萌々だった。
「麻弥ちゃん、私達の復活ライブって事でキャパが多いのもあるから」
「モモ姉は緊張してないんすか!?」
「んー、してるよ? 久しぶりのライブだしね。だけど……」
「『だけど』……??」
「それよりも『思いっきりライブを楽しみたい』って感じが強いかな。私は」
「凄いっすね。姉さんは」
「麻弥ちゃんもきっと大丈夫よ」
「な、何を根拠に……」
「全く、麻弥ちゃんは昔からいっつもそう。物事を考えすぎなの!」
「ね、姉さん……!?」
「こういうのは楽しむことが大事なの! 何も考える必要はないの! だよね? 亜麻音、帆乃花」
「いやいや、萌々さ少しは考えてようね? 感覚だけでライブを乗り切ろうとしないで」
「まー、萌々の言った事は極端だけどさ、的は得ているわ。麻弥」
「はい……」
「こっちが緊張してるとお客さんにも伝わっちゃうからさ、自分もファンとして居る感じで挑んでみたら? そうすると上手く行くからさ」
「亜麻音さん……ありがとうございます!」
「良いのよ。御礼は。それよりも今日のライブ、楽しみましょうね!」
「……はい!」
どうやら麻弥の緊張は解れた様だ。
それよりも彩の方は大丈夫かな……?? 私がそう思った時だ。
「亜麻音ちゃん……今日のライブ頑張ろうね!」
彩が私に声を掛けてきた。
「彩、大丈夫なの?」
「え、何が?」
「前みたいにさ緊張でガチガチなのかって思って」
「あー……うん。正直言うと今もすっごく緊張してるよ? でもさ……楽しみなんだ。不思議とね」
「『練習の成果を思いっきり発揮できるから』?」
「うん。それもあるけど、今の私たちには、大好きで凄く頼りになる人がいるから!」
「そっかぁ……。だよね。その人達も今日の思いっきり楽しんじゃお!」
「うんっ♪」
私が彩と会話を終えた直後にさーくんがスタッフに呼び出され、控え室を後にした。
あのスタッフは確か……以前のライブでエアバンドするように提案した張本人だっけ。
「……………………」
「どうか……したんですか? 亜麻音ちゃん」
「あぁ……燐子。ちょっと気になることがあってね」
「『気になること』……ですか?」
「ええ」
「それは……さっきのスタッフさんの事よね? あーちゃん」
「ちーちゃんの言うとおりよ。さっきのスタッフはPastel✽Palettesのエアバンドを提案した張本人だもの」
「えっ……じゃあ……今も……」
「燐子もそう思うわよね……」
「ダーリンが上手く断ってくれればいいのだけれども……」
ちーちゃんの言うとおりだ。
あのスタッフのことだし、今回は彩を『口パク』でやらせるかもしれない。……というか絶対そうに違いない。
それだけは……それだけは絶対に阻止せねばなるまいて。そんな事をやらかせば間違い無く……永遠に終わりだ。
彩だって……必死に練習を重ねてきたんだ。それは私が一番知ってる。だって、SublimatumのVo.陣で徹底的に鍛えたから。
実力だって前とは段違いだ。そしてメンタルも確実に強くなっている。先程のやり取りで判明はつくだろう。
だが、あの無能スタッフはそれを知る由も無いだろうし彩の実力がファーストライブの時と然程変わりないと思うだろう。
だって、Sublimatumのメンバーによる彩の徹底レベルアップはPastel✽Palettesメンバーとさーくん、燐子以外には伝えていない。
これもあの無能共の鼻を明かす為だもの。……と、思っていたんだけど裏目に出ちゃったか。
「大丈夫よ。あーちゃん。ダーリンを信じましょ?」
ちーちゃんが私の表情を察してか私にそう声を掛けた。
少しすると……
「嫌な予感がするわね。あーちゃん、ちょっと来てくれるかしら?」
「どうしたのちーちゃん」
「良いから来て」
私はちーちゃんに手を引かれて、ある所へと向かった。そして向かった所では、何やら言い合いをしているのが聞こえてきた。
「(この声って……さーくん?)」
「(そうよ。スタッフさんと話している内容からして、私たちに関係する事ね)」
そう考えた私たちは、会話を集中して聞くことにした。
「ですから、彩さんには今回のライブでは口パクで歌って頂きたいと」
「承認できるはずが無いでしょう? そもそも、当て振りのライブをしたせいでどうなったのか、貴方方は知ってますよね? 僕としてもこの前の二の舞は絶対に避けたいんです」
「それは充分わかっています。けど、上からの指示で「全く……パスパレを何だと思ってるんですかね」どう言う意味です?」
「良いですか!? デビューから二週間後にライブだなんて、どう考えても無理に決まってます! そしてライブ方法は当て振り!? 冗談もきついですってば! その後に行なったポスター配りによる宣伝も、全部千聖さんのおかげにして……パスパレは貴方方事務所の道具ですか! 本音を言えば、貴方方が性的処理道具としてパスパレを扱ってるだけじゃないんですか!? 衣装もそう、メンバーのキャスティングにしてもそう……それに、彩なんてラストチャンスって所を抜擢されて、舞い上がってた矢先にこれですよ!? 下手したら再起不能寸前まで来たんですよ!? それもこれもみんな貴方方が考え無しだからこんな結果になったんです! 大切な幼馴染や、大切な仲間……そんなかけがえのない存在がそんな目で見られてたなんて、僕としては到底信じられないんですよ!? 彼女たちの尊厳は、貴方方にすべて委ねられている訳では無いんです! お仕事などの内容は仕方ないにしても、本人たちの意思は僕たちスタッフがどうこう出来る問題では無いんです!」
「ぐ、うぅぅ……」
さーくんの正論に、スタッフさんは酷く狼狽えている様子だ。やっぱり、さーくんはかっこいい。
「ちーちゃん、私たちも援護するわよ」
「当然よ。ダーリンの正妻として、旦那様を守り抜かなきゃね」
……私たちは、無能スタッフに立ち向かうべく、さーくんの所へと向かった。
「こんにちは。お久しぶりですね」
「どうして……貴方が此処に居るのかしら? ……松田さん?」
ちーちゃんの言葉にあの全ての元凶であるクソ無能スタッフな松田さんが自身のメガネをつり上げてこう言った。
「いえ、ボクが貴女達のライブを成功させる為にひとつ提案させていただいたんですよ」
「……彩を口パクする事がですか……冗談も大概にしたらどうです?」
「そうですよ。あの時に私も表面上は賛成しましたけど、アレは無いですね。欲望を満たしているだけだったじゃないですか」
「な、何を根拠に……」
「どっからどう見てもですよ? 誰もがそう理解しているのではないのですか?」
「そんな出鱈目を……」
「どうでしょうか。被害者の私達が言うのですよ?」
「それって、結構有力な根拠ですよね?」
「う……ぐぅ……」
松田さんは私とちーちゃんに正論をぶつけられて押し黙った。
ここで論破するのも良いのだけれども、こう言った方がダメージ大きいよね。
私とちーちゃんは互いに頷き合って松田さんにこう告げた。
「松田さん、私達のライブを《《最後まで》》聴いていてくださいね?」
「その最後に私達が伝えたい感情を伝えますので」
「……解りました。楽しみにしていますよ」
松田さんは怪しく光るメガネを更に光らせながら去って行った。
「さて、戻りましょうか。ダーリン、あーちゃん」
「うん……そう、だね」
「そうね。あの松田さんの事も有るし万全のコンディションで挑みたいものね」
私達は控室に戻る事にした。
Pastel*Palettes&Sublimatumの復活ライブ……それは、開幕から大きな盛り上がりを見せていた。
オープニングアクトを飾ったのは、Sublimatumの『METANOIA』。リーダーである私の歌からライブは始まりを告げた。
会場が私のイメージカラーである青色のサイリウムの波に包まれ、由愛と帆乃花のギターイントロが鳴り響く。
最初のラップ部分。ここはSublimatumを知ってくれているファンが一緒にノってくれた。掴みとしては順調だ。
私はそのまま『METANOIA』を歌い切った。
それと同時に大きな歓声が湧き上がり、青のサイリウムのビッグウェーブが起こった。
「皆、ありがとう。次の曲もブチ上がって行くよ! 次の曲は……『TESTAMENT』」
私のMCを挟んで次の曲に移る。まだまだこの不死鳥の再誕の瞬間は終わらない。
私の『TESTAMENT』の後にレイヤがVo.に代わって私がBa.の補佐に回って、次の曲は『UNSTOPPABLE』だ。
会場が暗転し、再びステージにスポットライトが照らされる。
曲が終わり、大歓声が起こる。そのまま熱狂を維持しつつ次の曲へ移る。
『RISE OF SOULS』、その後、由愛がVo.に入り、私がGt.で『Only my railgun』と『sister noize』を披露した。
「皆、ありがとう……」
由愛のその言葉で私達、Sublimatumメンバーは一礼をした。それと同時に私達にスポットライトが当たり、メンバーのイメージカラーのサイリウムの波とファンの大歓声が沸き起こった。
やはりこのボルテージを体感するのは最っ高だよ。
会場自体が暗転して、私達はステージを後にしてステージ袖に向かった。
ステージ袖ではPastel✽Palettesメンバーが迎えてくれた。
「御苦労様! すっごく良かったよ!」
「ありがとう。彩」
「私はあーちゃん達……Sublimatumのライブを初めて見たけど、これ程鳥肌立つものだとは思わなかったわ」
「ちーちゃんにそう言ってもらえるって私も嬉しいわ」
私は彩とちーちゃんに、萌々とますきは麻弥に、レイヤと帆乃花は日菜に、由愛はイヴにそれぞれ労いを受けていた。
暫し会話をしていると会場スタッフからPastel✽Palettesメンバーがステージ袖にスタンバイする様に指示が入った。
「亜麻音ちゃん」
彩が私を呼び止めた。
「どうしたの、彩」
「行ってくるねっ! 私達の勇姿ちゃんと見ててね!」
「ええ。ちゃんと見てるわ。だから……思いっきり楽しんで来て!」
彩の言葉に私は了承してステージに送り出す言葉を掛けた。
「うんっ!」
彩は私の言葉に笑顔で肯定してステージ袖に歩みを進めていった。
そして会場の熱が冷めやらぬままに、次なるアーティスト……アイドルバンド、Pastel*Palettesがステージ袖から姿を見せた。
「先ずは、皆さんに謝りたい事があります! この前は当て振りのライブをして、申し訳ありませんでした!」
彩のその言葉を受けて、観客からはブーイングが飛び交う。今にも彩の心は折れかける寸前まで罅が入っていた。……だが。
『けど、ここからはもう以前の彼女たちではありません!』
突如として聞こえた声。その聴こえて来た声に、パスパレのメンバーは心の底から安堵する。
その声は、Pastel*Palettesのマネージャーを務めている、彼……盛谷颯樹の声だった。
『あのファーストライブを糧に、パスパレは成長を遂げました! しかと、その様を眼と耳に焼き付けて行って下さい!』
「颯樹君……!」
「ダーリンにここまで言わせたのよ。ライブ、必ず成功させるわよ……彩ちゃん」
「うん!」
Pastel✽Palettesのライブが『きゅーまい✽flower』を皮切りに幕を開けた。
会場全体が緑色のサイリウムの波に包まれた。
そして『きゅーまい✽flower』、『春擬き』、『ドリームパレード』、『ふわふわ時間』、『MOON PRIDE』と続く。
会場のボルテージは上がりに上がりきっている。
Pastel✽Palettesの最後の曲に入る前にちーちゃんが彩の隣に並び立ち、MCが入る。
「皆さん、次の曲で私達の最後の曲となります」
「次の曲は私と千聖ちゃん、2人のダブルボーカルになります。それでは聴いてください」
「「ハッピーシンセサイザ!!」」
Pastel✽Palettesの最後の曲は彩とちーちゃんのダブルボーカルで披露する曲だ。
この曲はダブルボーカルとあって会場も盛り上がる分、彩とちーちゃんの息が合ってないと成り立たない難しい代物だ。
しかし、その辺の問題は無さそうだ。2人の歌が完全に同調して素晴らしい旋律を奏でている。
私達……Sublimatumメンバー、さーくん、燐子はステージ袖から彩達の勇姿をしかとその目に焼き付けていた。
「「「「「ありがとうございました!!!!!」」」」
Pastel✽Palettesメンバー全員のその言葉で彩達は一礼をした。それと同時に彩達にスポットライトが当たり、メンバーのイメージカラーのサイリウムの波とファンの大歓声が沸き起こった。
彩達の反応を見る限りきっと先程の私達と同じ心境なのだろう。
会場自体が再び暗転して、彩達はステージを後にしてステージ袖に戻ってきた。
「亜麻音ちゃんっ!!」
「あーちゃんっ!!」
ステージ袖に戻ってきた彩と日菜は私の方に飛び込んできた。
「えっ……ちょっ……」
私は戸惑いつつも何とか2人を受け止めた。
「もー……いきなりどうしたのよ?」
「えへへ……何かこうしたくって」
「だってさ、あーちゃんにこうして貰うの最近無いんだもんっ!」
「あっそ……」
私は彩と日菜の頭を撫でていた。
周囲を見渡せば、ちーちゃんとさーくん、麻弥と萌々、イヴと由愛も同様の現象が起きていた。
ちーちゃんとさーくんのが一番激しい砂糖な気がするのは気のせいだろう。
気付けば彩と日菜がそれに嫉妬の視線を向けていた。
彩、日菜……それには私も激しく同意はするけども今は止めてやれ。
ライブ中に修羅場は勘弁して。収拾つかなくなるし、ライブ自体が崩壊するから。
「ホラ、着替える時間無くなるわよ?」
「えー、でもさぁ、あーちゃん」
「うん。あれはちょっと……」
「アンコールの開始遅くなるとさーくんの出番カットされちゃうんだけど……」
「「今すぐ着替えてくる!!」」
あやひなは神速の速さで更衣室に向かった。
あの二人に『さーくん』はどれだけ重みのあるパワーワードなのだろうか。
さて、私も着替えてきますか……。
着替えの終わった私達のアンコールはサイリウムのビッグウェーブと大歓声に包まれ、幕を開けた。
最初の曲は由愛がボーカルを務める『LEVEL5-Judgelight-』。
ファンの熱狂はギアを上げ、次の曲、私がボーカルを務める『月下美刃』で更にギアを上げて、次は彩がボーカルを務める『奏』。これで観客のボルテージを貯めての四曲目は彩と私のダブルボーカルで『DISCOTHEQUE』。
最初は私と彩のMCから始まる。
「次の曲は私達、SublimatumとPastel✽Palettes、2バンド合同での曲となります」
「そしてこの曲は私と亜麻音ちゃんのWボーカルでお送りします」
「それでは聴いてください。 「「DISCOTHEQUE」」」
曲の序盤から場の熱狂は相当な物であり、更に限界突破を果さんとしない勢いで彩と共に会場のさいたまスーパーアリーナを熱狂への渦へと巻き込んだ。これぞ不死鳥の再誕に相応しい。
四曲目の『DISCOTHEQUE』まで終わった後、私はマイクの所に立ってある事を告げた。
『会場の皆さん、私たちSublimatumとPastel*PalettesのRe:Birth LIVEは、次の曲でラストになりますが……私の話を聞いてください』
会場がザワついた。
……無理も無いな。今から言う事は、残酷なる現実。それを突き付けて改めさせないと、後々に大変な事になる。
『Pastel*Palettesのデビューライブ……皆さんの記憶には、まだ新しいはずです。当て振りのライブ……それは皆さんに失望の色を与えましたが、そのライブ自体は私たちが決めた事ではなく、ある方の一存によって決まりました』
私が述べた後に、ちーちゃんがマイクを手に取ってこう言い始めた。
『その人は私たちの活躍自体も捻じ曲げ、自分たちの思うがままにコントロールしていたんです。それに私たちはただ従うだけの道化師……こんな現実が、歯痒くて仕方がない』
『そして私たちは、この復活ライブでその者たちに今抱えている思いを全部ぶつけたいと思っています。……これからお届けするのは、私たちの大切な仲間、幼馴染……そして、意思すらも弄び、傷つけ苦しませた元凶への……LAST MESSAGE』
私がそう言った後、レイが自分のベースを肩から提げて現れた。その眼には真意が宿り、敵意剥き出しの情が籠っていた。
『私たちの大切な物に手を出した愚か者全てに《終焉》と言う名の宣告をしよう。……《Dead End》』
レイが言い放った言葉で、最後の楽曲《Dead End》が始まった。この曲はさーくんからの提案曲で、何れ私たちSublimatumにも提案すると示されていた曲でもある。……この曲で燐子、さーくん以外の無能スタッフの……心全てをぶっ壊す!
『DEAD END』の演奏が終わった。会場は熱狂への渦に呑み込まれた。そして……松田さんを筆頭に無能スタッフ共は顔面蒼白になっていたが、此処で終わるつもりは毛頭ない。
「皆さん、本日はPastel*PalettesとSublimatumのRe:birth LIVEにご来場頂きまして、誠にありがとうございます」
さーくんは集まってくれた観客の人たちに、簡単にお礼を述べた。……本番はここからだ。
「さて……本題へ。僕は、当て振りのライブを指示した者共を絶対に許さない。そしてそれを見て非難を浴びせた者、それを諦観した者を許す気は毛頭無い」
「ダーリン……」
「颯樹君……」
彼から伝えられる言葉の数々に、ちーちゃんと彩はポツリと彼の名を零す事しかできなかった。
それも構わずにさーくんは続けた。
「今回のライブの前も、最悪なライブになる危険性があった。……けど、それは彩たちが頑張ったからこそ回避されたのだと言えます。本当にありがとう!」
その言葉を聞いた瞬間、観客席から私や彩たちを賞賛する声が響き渡った。
「嬉しいわね……」
「だな。表舞台ではアタシたちが動き、裏ではアイツが動く……無能共の企みなんざ最初から潰えてたって訳だな」
「ますき、言い過ぎだよ。でも、私も同じ気持ちだよ」
そんなふうに会話を交していると、さーくんが言葉の雰囲気を強め始めた。……そろそろ準備かな。
「無能スタッフ共。アンタらの犯した罪は、到底許される行為では無い! 真に支えるべきPastel*Palettesを性処理道具の様な扱いをし、豪雨の中で行われたチケット配布を全て千聖のおかげにして……彩には《《口パクで歌え》》と言う……そんな事を言うテメェらに、Pastel*Palettesを支える資格なんてねぇんだよ!」
その言葉を聞いて、私たちは演奏の準備を始める。……頼むわよ、さーくん!
「この曲で、お前らの性懲りも無い心や腐った人間性も何もかもを……ぶっ壊す! 『FEED THE FIRE』!!!」
さーくんが曲名を宣言し、演奏が始まった。
演奏が終わり、観客から大声援とサイリウムの波が沸き起こった。
そして、私達はさーくんをセンターにして横一列に並んだ。
それと同時に彩達とレイ達も全員ステージ上に再度登板し、私達と同じく横一列に並んだ。
並び順はステージの下手……客席から見て左側の端から帆乃花、萌々、ますき、レイ、由愛、私、さーくん、彩、ちーちゃん、イヴ、麻弥、日菜……という並び順だ。
横に並んだ私達がするのは……
『『『『『『ありがとうございましたっ!!!!!!』』』』』』
全員が手を繋いでこのライブの観客達にお礼をすることだ。
これはSublimatumのライブでは恒例の行事である。今回はPastel✽Palettesと合同ライブなので彩達も一緒だ。
そして、そのセンターを務めるのは今回のライブでの立役者であるさーくんだ。
実を言うと事前の打ち合わせで私と彩、ちーちゃんがそのことを提案し、メンバー全員がそれを快諾した。
だが、さーくん本人がそれを最後の最後まで固辞していた。
本人曰く、
「僕は裏方なんだからセンターは彩かあーちゃんの方が適役だよ」
とのことだった。それを言われて私達は納得するはずも無く、昨日までさーくんを説得し続けた。
……が、さーくんは中々に折れてくれず時間も刻限に迫っていたので私達は強硬手段に出ることにした。
昨日、さーくんが帰った後に結託して外堀を埋めにかかった。おもに私とちーちゃんと彩が主導で。
これは私が女優を引き受ける事になった時のちーちゃんがとった手段と同様である。
その奮闘もあってか、さーくんは折れて最後の挨拶のセンターとなったのだった。
その事を今日のライブ開始前に話した時のさーくんは私がちーちゃんに女優業を始める話をされた時以上の驚きっぷりだった。
その横でちーちゃんは「計画通り……」と言わんばかりの表情をしていた。その策士っぷりに私と彩は「「うわぁ……」」と軽く引いていた。
そんなひと悶着はあったものの、当初の予定通りさーくんをセンターに据えての挨拶を行う私達は鳴り止まぬ歓声とサイリウムの波を送ってくれているファン達に精一杯手を振り返していた。
こうして、私達、SublimatumとPastel✽Palettesの復活の第一歩を示すライブは大成功の結果を持って幕を閉じたのであった。
To_Be_Continued...
後書き
如何だったでしょうか。
前回のファーストライブよりもパワーアップしてお届けしました今回なのですよ。
えっと、次回は『Re:Birth_Live』終演後のエピローグって感じになります。
という事で、やっと第一章が完結します。
大体は内容決まってるんやけどまだ文章化するのは時間かかるかなー?って感じなので気長にお待ちくださいませ。
予告すると……ちゆと令王那が登場します。
では最後に謝辞を。
次回のお話も読んでくれると嬉しいです。
また、この作品を読んでの評価・感想もお待ちしております。
それが次回執筆時の励みになったりしますのでね(本音)
支援絵もバッチコイです。
来れば自分のテンション「るるるんっ」って感じになりますんでね。
なので絶賛お待ちしております。
それでは、更新時期が不透明で全くの未定ですが、また次回のお話でお会いしましょう!。
ばいばいっ!
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