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戦国異伝供書

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第百二十六話 推挙その六

「岩屋城は小さいですが」
「はい、確かに」
「あの城は小さいです」
「然程大した城ではありませぬ」
 弟達もこう答えた。
「そして兵も少ないです」
「精々七百でしょうか」
「それ位です」
「一万もあれば攻め落とせるが」 
 五万どころかというのだ。
「しかしじゃ」
「城主は高橋殿」
「あの御仁だからこそ」
「それで、ですな」
「そうじゃ」
 だからだというのだ。
「よいな」
「五万で向かい」
「そして攻める」
「そうしますか」
「そうする、しかしな」
 ここで義久はこうも話した。
「攻める前にな」
「降る様にですな」
「高橋殿に言う」
「そうしますな」
「そうじゃ」
 そうするというのだ。
「よいな」
「戦は出来るだけ避ける」
「恐れずとも」
「そうする者ですな」
「薩摩隼人は何であるか」
 つまり自分達はというのだ。
「一体」
「真の猛者です」
 義弘が堪えた。
「我等は」
「そうであるな」
「天下一の強さであり」
「その兵達はな」
「そしてその薩摩隼人は」
「うむ、強き者は決してじゃ」 
 それこそというのだ。
「迂闊に戦はせぬ」
「そういうものですな」
「無闇に戦を挑むなぞじゃ」
 義久はこうも言った。
「真の強者がすることではない」
「全くですな」
「だからですな」
 歳久も言ってきた。
「我等にしても」
「そうじゃ、岩屋城もな」
「迂闊に攻めず」
「五万の兵で囲んでも」
 それでもというのだ。
「まずはな」
「降るか城を退く様にですな」
「言う」
「そうしますな」
「しかしです」
 家久も言ってきた。
「高橋殿は天下の名将」
「そうであるな」
「神をも恐れぬ御仁そして大友家への忠義は絶対」
「そうした御仁じゃ」
「ですから」
 そうした人物だからだというのだ。 
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