戦国異伝供書
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第百二十五話 誘い出しその七
「まさに」
「はい、ではです」
「ここは待ちましょう」
「龍造寺家の軍勢が来るのを」
「そしてそこで鉄砲の間合いに入れば撃つが」
その鉄砲をだ。
「だが前にいる軍勢は柵からはじゃ」
「まずは出ぬ」
「柵の前に着た敵を撃つ」
「そうしますな」
「織田殿の戦に倣ってな」
そうしてというのだ。
「まずは柵から出ぬぞ」
「長篠の戦ですな」
家久が言ってきた。
「柵から出ず鉄砲を放ち続け」
「そして敵を寄せ付けぬ」
「まさにそうしますな」
「それで龍造寺家の先陣を止め」
そしてというのだ。
「そのうえでな」
「時が来れば」
「その時にじゃ」
まさにというのだ。
「伏兵を動かす」
「そうしてですな」
「さらに攻める」
「伏兵もですな」
義弘が強い声で言ってきた。
「鉄砲を使いますな」
「そうじゃ、繁みの者達もそうでな」
「沼の者達も」
「皆じゃ」
まさにというのだ。
「一斉に横そして後ろからな」
「鉄砲を撃つ」
「そうするのじゃ」
「さすれば前から攻めても柵と鉄砲で邪魔をされて立ち止まっているうえに」
「伏兵に攻められてな」
「敵は一気に浮足立ちまする」
「そこでじゃ」
義久はさらに言った。
「さらにな」
「はい、船からもです」
歳久が応えた。
「岸辺の龍造寺家の軍勢を撃てば」
「もう決まりじゃな」
「ですな、では」
「ここはな」
「龍造寺殿が先陣で拙速ならば」
「思う存分衝かせてもらおうぞ」
「そうしますな、では飯も」
歳久はこちらの話もした。
「それもですな」
「たんまりと食ってな」
「そうしてですな」
「英気を養うのじゃ」
「飯は食ってこそ」
「そうであるからな、ふんだんに食うぞ」
こう言って実際にだった。
義久は兵達に飯を好きなだけ食わせた、そのうえで総大将である隆信自ら先陣を務め急いで来る龍造寺家の軍勢を待った、そして。
四万の軍勢が慌ただしく目の前に出たのを見てだ、義久は言った。
「見えるであろう」
「はい、実に慌ただしいです」
「敵の軍勢の動きは」
「列は保っていますが」
「しかし随分乱れていますな」
家臣達は口々に答えた。
「周りも見えておりませぬ」
「我等の伏兵に」
「今先陣が一本道に入っていますが」
「その先陣には」
ここで彼等ははっきりと見た、まさにだ。
そこに隆信を乗せた輿があった、そこにいる巨漢こそがまさにだった。
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