双子に愛されてしまった男
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序章
2095年度の九校戦は色々と波乱があった。だけどその中でも一番観客を驚かせ沸かせたのはなんと言っても第四高校の快進撃だろう。今まで第四高校が九校戦に勝ったという歴史は存在しない。それは今回も達成する事は出来なかったが例年の第四高校の結果を見れば今回の結果は良いものだろう。では何でそんな事が行ったのかと言うとそれは一重に……一人の一年生の快進撃が故だろう。一年生の部において出場した競技は全て優勝を掴んだ男。その男の出ている種目を見ていたものは誰もが凄さ故に言葉を忘れてしまうほどにその男は凄かった。
そしてその男の快進撃が周りの者たちにも影響を与えたのだろう。そして最終的には良い結果に結びついたのであろう。
この年、第四高校は……歴代の九校戦の中で最高順位である第二位をつかみ取ったである。
そしてその場に姉を見に来ていた瓜二つの双子はその少年に釘付けになってしまった。
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2096年度 4月上旬 ある家
僕は面倒な事をこの上なく嫌う。何もしなくても良いのなら何もしないに越したことは無い。無駄な体力は態態、使う必要性はない。
だから今の状況を早く抜け出したい。
「聞いているんですか!!!??」
目の前に座っている四十代の女性が声を張り上げた。何でこの人は無駄に大きな声を出すのだろう。そんなに大きな声を出さなくても聞こえる事ぐらい分かるだろうに。
「聞いています。母上」
「それなら良いですが………それでさっきの話に戻りますが一条家のご子息であり次期当主である一条将暉さんからお会いしたとの連絡を受けているので今月の末にこの屋敷でお会いする事になりましたから知っておいてください」
そう言って母上は僕の前から去っていった。
一条くんと会うのは一か月振りぐらいか。最近はかなり頻繁なペースで会っている気がする。まあ、会って何をするかというと遊ぶだけなんだけなんだよね。具体的な内容としては将棋をやったりチェスをやったりするだけ。
極まれに真面目な話をする時もあるけどほとんどない。
何で僕のような人が一条家の次期当主である一条将暉くんと知り合いなのかと言うとそれは……僕が二木舞衣の子供だからだ。幼い頃の交流があってもう物心が付く前から知り合いだった。その縁が今でも続いており、たまに遊ぶこともある。
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同時刻 七草家 ある部屋
「お父様も頑固ですね」
「そうだよね~私たちは只、第四高校に通いたいって言っているだけなのに……」
普通であればお姉さまが通っていた第一高校に通うのが普通。確かにボクたちも昨年の7月の中旬ぐらいまではそう思っていた。だけどお姉さまの活躍をこの目に焼き付けるために行った九校戦でボクたちは見てしまった。華麗に競技をこなして全ての競技で優勝を掴み取るあの人の姿に一瞬で心を奪われてしまった。逆にあんなものを見せられて何も思わない人は絶対にいないと思うな。
それからは彼の素性を調べ上げた。七草家の力を行使すれば素性を調べるのも楽だからね。
「一度でも良いからあの方とお話をしてみたいです!」
「そうだよね~どんな風に話すのかな?普段どんなものを食べているのかな?学校以外でよくいる場所はどこなのかな?」
気になりだすと気になって仕方がない。こんなにも誰かの事を考えたのは生まれて初めてかもしれない。食事を食べている時も学校にいる時も寝る前もいつでも彼の事が頭から離れない。まるであの人の事しか考えられない頭にさせられたかのようだ。
「家は特定出来てるけど……さすがに何もアポも取っていなのに訪問なんかして第一印象が悪くなるのだけは避けたいですしね」
「そうだね。だけどアポを取るといってもお父様がそれを許してくれるかな」
「それは確かにそうですね。でも、何か適当な理由を考えていえば案外騙せるかも」
泉美はこういう時はボクよりも行動力がある。それを去年の九校戦の終わりから実感するようになった。普段はおとなしくて自分の意見をあまり言う事もないし周りに合わせている感じなのにあの人の事になるとまるで性格が変ってしまったかのうように思ってしまうほどだ。
ボクも泉美もこういう気持ちになるのは初めてだからまだ確実には分からないけど多分、これは……世間一般で言う………「恋」なのかな。
小学校の頃に友達が「恋」とか何とか話していてあの頃は一生ボクはそんな事を思う事はないだろうと思っていた。
「早くあの人に会って話したいな~……」
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