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十年後の再会

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第二章

「この子は」
「ああ、そうだな」
「間違いないわ」
 夫ももう大学生になっている娘も答えた。
「この子はアビーよ」
「外見もそうだしな」
「そうね、歳は取った感じだけれど」
 この十年の間にだ。
「けれどね」
「アビーだ」
「十年経ってやっと会えたのね」
「何処に行ってたのかしら」
 妻はアビーの頭を撫でながら思った、犬は撫でられて尻尾をぱたぱたと振っている。彼も再会を喜んでいた。
「本当に」
「毛並みがいいから」
 夫はアビーを見て妻に話した。
「誰かに飼われていたみたいだな」
「そうね、健康そうだし」
「それだとな」
「野良だとこうはいかないわ」
「それに野良で十年もな」
「まず生きられないわね」
「だからな」 
 それでというのだ。
「この子はな」
「誰かに飼われていたのね」
「この十年な」
 そうだったというのだ。
「そうだったみたいだな」
「そうみたいね」 
 確かにとだ、妻も夫の言葉に頷いた。
「この子は」
「何はともあれまた会えてよかったわ」
 娘はこのことを素直に喜んでいた。
「本当に」
「そうだな、じゃあな」
「ええ、これからはね」
「また一緒に暗そう」 
 父は娘に笑顔で答えた、こうしてアビーは十年振りに家に帰った。すると十年前と同じ様にであった。
 アビーは家族と一緒に暮らした、それはどう見てもアビーであった。
 それで娘はアビーを見て両親に言った。
「もう駄目だと思っていても」
「こうしてな」
「また一緒に暮らせるものなのね」
 両親も娘に応えた。
「十年は長かったけれど」
「それでもだな」
「じゃあこれからその十年分取り戻しましょう」
「アビーとの時間をな」
「そうね、長かったけれど」 
 その十年はとだ、娘も言った。
「また一緒になれたから」
「これからはそうしよう」
「皆でね」
「アビーもそれでいいよね」
 娘はアビーを撫でながら彼に問うた。
「十年分今から幸せに過ごそうね」
「ワンッ」
 アビーも陽気に鳴いて応えた、一家は再び愛犬と暮らせる様になった。その暮らしは非常に明るく幸せに満ちたものになった。


十年後の再会   完


               2021・2・19 
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