仮面ライダーディロード~MASKED RIDER DELOAD~
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第3部~希望と絶望の宝石~
第20話『新世代、失敗する』
「リミッター解除!ブラスター1!」
ティアナはクロスミラージュにかけられていたリミッターを独断で解除する。
「嘘!?何これ!?」
ティアナは目の前に出現した想定以上の魔力光を見て驚き、なんとか制御しようとするが、基礎から離れたその状況を制御など出来るはずもなく、弾の1つが機動を外れスバルのいる方へ飛んでいってしまう。
「スバル!?」
ティアナは目を瞑る。しかし、その弾はスバルに当たる直前にヴィータによって破壊される。
「てめえ、何やってんだ!」
全滅したガジェットドローンを見つつヴィータはティアナを叱る。
「それは…」
怒るヴィータを前にティアナは言葉が詰まる。そうして、ティアナの独断行動こそあったものの、ホテル アグスタへ行われたガジェットドローンの襲撃は食い止めることに成功し、なのはとティアナは面談をしていた。
「ティアナ、どうして許可の出ていないリミッター解除を勝手にしちゃったのかな?」
「それは、あの状況ではそれ以外手段が無かったから…」
「本当にそうだったのかな?賢いティアナなら解るよね。とにかく、今日はこれから報告書の作成ね。」
面談を終わらせて立ち去るなのはの後ろ姿を見て、ティアナは不安な目をしていた。
「なのは、丁度よかった。少し話しがしたかった。」
面談室から出たなのはを雅は呼び止める。
「はい、雅国家象徴。」
雅に呼ばれたなのはは二人で個室に入る。
「確かに、ティアナさんのしたことは魔導捜査課としては規則違反かもしれないが、機動六課の在り方としては個人的に問題だとは言えないかな。」
「どうしてですか?」
「基礎訓練しかしていないあの二人だけであの数のガジェットドローンを倒せ、だなんて無理難題を突きつけられれば、あの判断は仕方ない。相手は常にAMFを展開しているんだ。スバルの事情は知ってはいるが、二人共純粋な魔法しか使えない。スバルにはまだリボルバーナックルでの近接格闘が出来るが、実弾を扱えないティアナはあの状況ではAMFによって撤退することすら封じられている。当然、増援を待つ時間稼ぎも出来ないだろう。その状況でリミッター解除の許可をもらう時間や、なのは達が駆けつける時間があるか?」
「あの子達なら出来るはず。」
「どうやって?」
「それは、なんとかして!」
「なんとか、では駄目なんだ。あの時は僕だって全力を出したくらいだ。今の二人だけでは、ティアナさんがリミッター解除を行わなければ、今頃二人共殉職していただろう。」
「そんな…」
「いいかい?全員が高町なのはではないんだ。魔力量だって高いわけではない。魔法のクラスだって高いわけではない。そのことをきちんと理解していないと、上手くいっている歯車もいずれズレてしまう。僕から言えることはそれだけだ。」
そう言うと雅は部屋から出て行く。
ホテル アグスタでの一件から数日後、雅はフェイトに誘われてスバル、ティアナのコンビとなのはの模擬戦を観戦していた。
「あの二人、良くも悪くも基礎だけはしっかり出来ているな。」
「どういうこと?」
「良い部分としてはなのはが何度も教え続けた成果が実を結んで、戦闘の基礎は出来ている。それに連携も二人の持ち味を活かせている。ただ、機動六課ができてから相応の時間が経つのにまだあの程度なのかという疑問と、なのは自身が楽しんでいるように見える部分が不安点だ。教える立場なら、本来は私情は挟んではいけない。」
雅は戦況から成長具合を確認する。
「すごい、たったこれだけの戦闘でそれだけ分析できるなんて。」
エリオは感心する。
「これでも、昔はチームディロードのリーダーとして、戦況を見極める必要があったからね。」
雅はエリオに話す。すると、ティアナ達の戦闘に変化が発生する。
「行くわよスバル!」
「うん!」
ティアナは自身の分身を複数出現させる幻影魔法、フェイク・シルエットを展開してなのはに照準を合わせ、なのははティアナの幻影の中から本体を探そうとするが、その間にスバルはウィングロードを展開し、ティアナはそれを駆け上って飛び降り、クロスミラージュから防御破壊の効果を持つダガーブレードを展開して堅牢ななのはのバリアジャケットを破壊しようとする。
「なるほど、なかなかいい戦術だ。だが、一つだけ欠点があるとするなら…」
雅はティアナを評価しつつも問題点をあげようとする。その答えはなのは自身が証明する。
「レイジングハート…」
[floater.]
なのはは浮遊魔法をティアナに発動して落下しながら攻撃するティアナの戦術を封殺し、ダガーブレードを素手で掴む。ダガーブレードを掴んだ手はバリアジャケットが破壊され、血が流れる。
「おかしいな、こんなこと、教えていないはずなんだけどな。」
なのはは呟き始める。
「模擬戦はね、喧嘩じゃないんだよ。練習の時だけ素直に聞いて、本番で無茶されたら、練習の意味が無いじゃない。私の言っていること、私の訓練、何か間違っていたのかな?」
なのはの口調からは悲しみとも怒りともとれる感情があふれ出る。
「なのはにあの戦術は通用しない。」
雅はエリオとキャロに話しつつなのはの様子を見て警戒する。そんな中でティアナはダガーブレードを解除して後退し、距離を取る。
「もう誰も傷つけたくない!傷つきたくないから、だから!強くなりたいんです!」
ティアナはクロスミラージュのカートリッジを装填し、最大火力の魔法をチャージすると同時に胸の内を語る。
「少し、頭冷やそうか?」
なのはは呆れと憐れみを含んだ口調で射撃魔法の準備を完了させる。
「ティア!?」
スバルはティアナを庇いに行こうとするが、フープバインドによってその動きを封じられてしまう。
「ファントムブレ」
ティアナはチャージを済ませ、必殺の砲撃であるファントムブレイザーを放とうとするが、それを封じるが如く、なのはのクロスファイアシュートによって封殺し、ティアナの戦意と意識は消失する。それを見たなのはは追撃の準備を始める。
「どういうことだ、聞いていない!ロードスラスター、モードリリース!」
雅はセイクリッドグリッターを握る。
「ティアぁぁぁ!」
スバルは叫ぶ。そして、なのはは二発目のクロスファイアシュートを放とうとする。しかし、それは放たれる前に消失し、なのはとティアナは雅の発動したカルテットバインド・ダブルトラップで拘束される。
「高町教導官、ここは一体どういうことですか?」
なのはとティアナの間に立つように雅はトライフィンで浮遊する。
「それは、せっかく練習の成果を活かす為の場所を無茶苦茶にされたから!」
「なら何故二度目を撃とうとしたのですか?確かに、自爆特攻はさせてはいけない。それを実行しようとしたランスター、並びにナカジマ両仁藤陸士の行動は咎めるに値する事です。ですが、行為自体は過剰を超えています。あなたのしたことは、校則違反に対して体罰を行うことと何も変わりません。それから、練習通りの行動なら模擬戦ではなく演習にするべきです。」
雅はなのはに話す。
「高町教導官、貴方の方で教育しているランスター、ナカジマの両二等陸士の身柄はこちらで預からせていただきます。今の状態で教導官と共にするのは危険です。」
「…わかりました。」
雅はなのはとティアナ、そしてスバルのバインドを解き意識を失っているティアナを抱きかかえ、スバルに自身のコートの裾を握らせるとワープのカードを使って国家象徴宅に帰る。
「あれが、本気を出した雅国家象徴…」
キャロは唖然としている。
「あれは雅の一面なだけだよ。それより、二人のことで私も雅と話さないといけないから、二人共今日はここまで。部屋で待機していて。」
フェイトはエリオとキャロに言うと転移魔法を使って国家象徴宅に向かう。
「雅、どうするの?」
「とりあえず、ティアナさんには医務室で寝てもらって、スバルさんに付き添ってもらっている。それにしても、僕は言っておいたはずなんだ。全員が高町なのはではない、と。」
「それで、これからは?」
「二人には僕の下で学ぶべきことを学んで貰ってから返すつもりだ。すまないが、フェイトはしばらくの間は六課の寮にいてもらえないか。」
「わかった。丁度ガジェットドローンが出現したみたいだから私は向かうね。」
フェイトは転移魔法を使ってなのは達と合流し、ガジェットドローンを撃破してゆく。
「…そんなことが、なのはさんの過去に…」
その頃、シャーリーからエリオとキャロはなのはの過去に何が起きていたのか話していた。
「だからなのはちゃんは自分と同じ過ちを繰り返さないように、基礎訓練をしっかり受けてからステップアップして欲しかったの。」
シャーリーはなのはから了承を受けていたとはいえ、話すこと自体が辛く涙を流す。
「ありがとうございます。」
キャロは細々とした声で言う。
「……ん」
その頃、ティアナの意識が復帰する。
「ティア!雅国家象徴、ティアが目を覚ましました。」
スバルは防犯カメラに向かって言うと、雅はワープのカードを使って駆けつける。
「ティアナさん、具合はどうですか?」
雅はティアナの目を見て優しく聞く。
「雅国家象徴、お恥ずかしい所をお見せしてしまい申し訳ありません。」
ティアナは体を起こして謝る。
「そうですね、ティアナさんは一歩間違えればなのはさんの命を奪っていたかもしれませんでした。そこは、確かに改めるべきですね。あの時のなのはさんの怪我は、シャマルさんの魔法で完治して、今は海上に出現したガジェットドローンの撃破に向かっています。」
雅はガジェットドローンと戦うなのはを見せる。
「そんな!すぐに行かないと!」
ティアナは立ち上がろうとするが、なのはから受けたダメージが回復しておらず、立ち上がることが出来ずに倒れてしまう。
「今回の迎撃は、隊長と副隊長のみで行うことになっています。」
雅は状況を説明する。
「…やっぱり、隊長に逆らう、無能な平凡は要らないのでしょうか?」
ティアナは雅に質問する。
「それは違います。現にスバルさんだけではなく、モンディアル、ルシエの両隊員も今回は待機が命じられています。」
雅は説明する。
「そうですよね、個人であれだけ強い人達の集まり。成長途中の部下なんて邪魔ですよね。」
ティアナは焦るように言う。
「何故わざわざ死のうとするのですか。スバルさん、応接室で待機していてください。僕はティアナさんと二人きりでお話しがしたくなりました。」
「はい!ティアをお願いします。」
スバルは医務室を出て応接室に向かう。
「向こうも終わったみたいですね。それで、何がティアナさんを焦らせるのですか?」
「私は、なのはさんやはやてさんみたいに才能があるわけでも無い。スバルやエリオみたいに、特別な生まれでも無い。キャロみたいにレアスキルも無い。そんな平凡な私が機動六課でやっていくには、無茶を超える努力をしないと、着いていくことはできません。基礎訓練だけでは、限界があります。」
ティアナは胸に秘めた想いを話す。
「君は少しも、平凡ではないですよ。」
雅は優しく言った。
場面は変わり、謎の実験施設。そこにはガジェットドローンを運用している次元犯罪者、ジェイル・スカリエッティ博士がいた。
「まさか、国立生物研究所に渡していた彼がFの下で働いているとは、なんとも素晴らしい偶然だ。」
スカリエッティは笑顔を見せる。
「プロジェクトFはまだ終わっていない…そう、君達が生きている限りね。」
スカリエッティの計画は、徐々に進行していた。
to be continued.
次回、仮面ライダーディロード
「君達二人には、ここで訓練を積んで貰う。」
「なんて強さ!これが、仮面ライダーとしての国家象徴…」
「かつて、この国と戦った男と戦うんだ。半端な考えではすぐに撃墜されるぞ!」
「二人共、大丈夫かな…」
「なのはさん、ごめんなさい!」
次回、『新世代、学ぶ』希望を紡いで、すべてを救え!
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