おっちょこちょいのかよちゃん
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
127 杯の所有者のクリスマス・イブ
前書き
《前回》
杉山は大野と喧嘩し、自身の道具である雷の石を放棄した事で自分に何ができるか分からなくなっていた。一方、かよ子達は静岡駅で杯の所有者である安藤りえを出迎える。かよ子の家に山田家、安藤家、そして羽柴家のおばさんと甥の三河口が集合し、りえはクリスマス・イブの日に赤軍に襲われていたのだった!!
オリジナルキャラ紹介・その8
北勢田竜汰 (ほくせだ りょうた)
長山の近所に住む高校生男子で三河口の友人の一人。初登場18話。長山と親しいと共に彼の妹の小春の体調も少し心配している。見聞の能力と攻撃に特化した武装の能力を持つ。電脳の矛を武器として、電撃を喰らわせたり、想像した物を機械やロボットとして出現させて戦う。好きな食べ物はおでん、ほうれん草のおひたし。
りえはクリスマス・イブの日に自分に何があったのか説明を始めた。
「あの時、ウチの所に今度は赤軍も来たの」
「ええ!?」
かよ子は驚いた。そして叫んでしまった事を恥ずかしく思って縮こまった。
クリスマス・イブの日の東京。りえの学校は終業式だった。下校時刻となり、りえは友達のみゆきに鈴音と帰ろうとしていた所・・・。
「ん・・・!?」
変な音が聞こえた。
「何?この音」
りえだけではなく、鈴音とみゆきにも聞こえたらしい。
「嫌な音ね。どこから聴こえるのかしら?」
(・・・やってみるか)
りえは気になって杯を取り出した。
「りえちゃん、何するの?」
「この音を吸収するの。それで音の精霊を出すのよ」
りえはこの異様な音を吸収する。そして音の精霊が現れた。鳥のような精霊だった。
「我が名はハミング」
「ハミング。この変な音がどこから聴こえるか調べてくれるかしら?」
「ああ、いいともさ」
ハミングは空を周り、偵察行為を始めた。
「それにしても、私達がこの音に反応して、他の人が全く気にしていないのがどうも変だよね・・・」
みゆきは怪しんだ。周りの人には全くこの嫌な音がなぜ三人以外の周囲には何も反応がないのか異様だった。
「もしかして、私達にしか聴こえない音だったりして・・・」
その時、ハミングが超速で戻って来た。
「お主達、大変だ!この音は赤軍が発している!そして奴等はすぐ近くをうろついていやがる!!」
「何ですってっ!?」
りえは驚いた。
「それもこの音はお主ら異能の能力を持つ奴にしか聴こえない。迂闊に近づくと終わりだぞ!」
「ええ、解ったわっ!」
りえはできれば戦闘を避けたかった。以前、りえ達は都内でビルの爆破事件を引き起こしている東アジア反日武装戦線の人間に襲われかけた事があった。しかもその人物達は異能の能力を発動できる機械を赤軍の人間から渡されたと聞く。自分達に接近している赤軍の人間ももしかしたら同じ機械を所持しているのかもしれない。りえは杯を、みゆきと鈴音も道具を取り出して備えた。校外に出たが、一向に攻めてくる気配がしない。勿論嫌な音も聴こえ続けている。しかし・・・。
「よう、嬢ちゃん達、知らんぷりしてその場を過ごそうと下って無駄だぜ」
三人は正面を見た。一人の男が歩いてきている。
「誰っ!?赤軍っ?反日なんとかという組織っ?」
「ほう、もうバレバレか。日高、もういいぜ」
三人の後ろからもう一人の男が現れた。りえ達は完全に挟み撃ちにされた。
「ああ」
「悪い事は言わない。その杯をくれたら立ち去るよ」
「嫌よっ、絶対に渡さないわっ!」
「そうは行くかな?俺の『認識術』でお前は俺に従う事になるのだ」
「させないよ!」
みゆきが前に出る。彼女は防御に特化した武装の能力を有している為に、その男の攻撃を自分の能力で防ぎつつ、異世界のブーメランで迎撃しようと考えていた。
「それで俺が抑えられると思ってんのか?」
男はそう言うと、みゆきも鈴音も、そしてりえも恐ろしさに怖気づいた。
(あの男子の威圧の能力とはこんなものなのか・・・。凄いな・・・)
男は嘗て清水で異世界の杖を頂こうとした時に、とある高校生男子に睨まれて自分の攻撃が通じないどころかそれだけで威圧され、無様に吹き飛ばされた事を思い出した。同じ日高と呼ばれたもう一人の男もこの地で杯を奪おうとした際に同一人物と思われる男子高校生に同じような目に遭ったとか。
(この機械さえあればもう怖いものなしだな)
そして西川に山田という男が文化祭に侵入してその男子の異能の能力を全て複写させ、同じように似た能力を発動させる機械を開発させた。男は近づく。
(この女子は杯を俺に差し出すべき物と認識させる・・・!!)
男は認識術を使った。りえは催眠されたかのように男の頭の中で思っているがままの如く、杯を差し出しそうになる。
「り、りえちゃん、ダメ!!」
鈴音は叫ぶ。みゆきはりえを抑えつけた。その時、「バギッ!!」と音がした。
「何だ!?」
「丸岡、機械が壊れたぞ!」
日高が叫んだ。
「何だと!?」
「今だ!」
みゆきはブーメランを投げる。丸岡のどてっ腹に命中し、丸岡はその場から遠ざけられた。そしてりえは我に返った。
「はっ、私は一体っ・・・?」
「りえちゃん、今あの男に杯をあげようとしてたんだよ!」
みゆきが説明した。
「そ、そうだったのっ!?」
りえは己の失態を知った。対して日高の方は鈴音が対抗した。鈴音が錫杖を振る。冷気が放射され、日高は冷気に包まれ、足が凍り付いた。
「このやろ・・・!!」
日高は道路のアスファルトを粉砕して。氷漬けから脱した。砕け散った氷を蹴る。その威力は弾丸の用だった。だが、鈴音はそれを錫杖の炎で溶かした。だが、日高も容赦するはずがない。鈴音が出した炎を魔術か超能力のように強化させ、三人を焼殺しようとした。
「させないわよっ!」
りえが杯を出した。炎を吸い込み、炎の精霊を召喚した。
「サラマンダー、向かい火で抑えてっ!」
「了解!」
サラマンダーは向かい火で三人を防いだ。一方、丸岡を相手にしていたみゆきはブーメランをもう一度投げて丸岡に対抗した。だが、丸岡は自分のもう一つの術である矛盾術を使用した。ブーメランは丸岡に命中することなくそのまま戻ってしまった。
「もう、しぶとい能力だね!」
みゆきはもう一度ブーメランを投げる。
「何度やっても同じだ!」
丸岡はまたブーメランを矛盾術で通さないようにした。だが、そのブーメランは光線を発射した。しかし、それも丸岡の矛盾術で無効化された・・・、と思ったが、
「うおっ!!」
光線がなぜか丸岡に命中した。丸岡は眩しくて目を瞑り、遂には光線の勢いで後ろへまた引きずり降ろされた。
(なぜだ!術は途切れさせなかった筈だ!!)
丸岡はなぜこのような事態になったのか、そして異能の能力を使う為の機械が破壊されたのか理解できなかった。そして日高の方は向かい火に苦労していた。そして風が吹いた。りえはチャンスと思い、その風を杯に出し、杯から風の精霊が現れた。風の精霊は少女のような姿だった。
「私はシルフ。風の聖霊よ」
「あの炎を風で強くしてっ!」
「了解!」
シルフは風を起こし、日高を襲う炎の威力を強めた。日高が火の海に飲まれそうになる。そんな時、どこかからヘリコプターが飛んできた。そして上空から水のようなものが滝のように落ちて来て、炎を消した。
「修、敏彦!」
その場にはいつの間にか一人の女性がいた。
「そ、総長!!」
(ソーチョー?)
りえはこの女性が誰か気付いた。かの日本赤軍のリーダーであるという事を。
「ここは撤退よ。ヘリコプターに乗りなさい」
「りょ、了解!」
丸岡と日高はヘリコプターから出てきた縄梯子で逃げる。りえはシルフとサラマンダーに命じる。
「シルフ、逃がしちゃダメっ!」
「了解」
シルフは突風を引き起こして縄梯子を揺らし、サラマンダーは縄梯子を燃やそうとした。しかし、総長と呼ばれた女性が剣を一振りする。二体の精霊の攻撃を無効化したどころか、精霊達を消滅させた。
「何?あの剣・・・」
りえ達は女が持っている剣は何なのかと気になった。
「二人は本部へ戻りなさい。私は名古屋へ行くわ」
女性は丸岡と日高にそう言ってヘリコプターの内部に入り、ヘリコプターはそのまま去って行った。
「二人共、大丈夫っ!?」
りえは友人たちの安否を確認した。
「ええ、大丈夫よ」
そして背後からある女性が現れた。
「杯は何とか守り切れましたわね」
その女性は平和の世界の人間・フローレンスだった。
後書き
次回は・・・
「死守したその後」
りえのクリスマス・イブの過去話が続く。フローレンスと出会ったりえは赤軍が異常に強化されている理由が清水に住む高校生男子の能力を複製した事実を知る事になる。そしてりえはかよ子からある事を聞かされ・・・!!
ページ上へ戻る