| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

おっちょこちょいのかよちゃん

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

126 杯の所持者の再訪

 
前書き
《前回》
 高台の秘密基地に訪れたかよ子達は隣町の小学校の面々と再会する。大野と杉山が大野が転校する事で喧嘩した事を伝えたかよ子達だが、実は隣町の小学校のすみ子も京都へ引っ越す予定である事を告げられ、異世界での戦いを勝利で終わらせると皆で誓うのだった!! 

 
 杉山は大野と喧嘩した事、そして自ら雷の石を捨てた事を思い出していた。
(俺だって本当はあんな事言いたくなかった・・・。なんで俺はこんなに最低な奴なんだ・・・)
 杉山は確かに石松から貰った石を赤軍や戦争主義の世界の人間に対してではなく、本来共闘すべき人間に対して使ってしまっていた。一度目は秘密基地を山口や川村達から取り返す為の戦いに使用し、二度目は安藤りえの持つ杯の能力(ちから)を試す為に彼女を挑発して使用し、さらに三度目は大野が転校するという事で喧嘩の道具として使ってしまった。
(俺達は離れてても最強コンビのはずなんだよな・・・!!)
 杉山は己を呪う。そして元の日常をぶち壊した赤軍や異世界の悪人諸共憎む。しかし「奴等」を倒せたとしても大野の転校は取り消せない。別のベクトルで元の日常が壊される事になった。
(今の俺には『道具』はねえ・・・)
 杉山は異世界からの手紙をもう一度読む。このどこの世界の字でもない字は杉山には読めた。そして躊躇う。今の自分が異世界に行って一体何ができるのか・・・。

 かよ子は両親と共に静岡駅を訪れていた。また隣のおばさんも同行していた。目的は異世界において最上位の能力(ちから)を持つ四つの道具の一つである杯を持つ者を出迎える為である。そして午後14時過ぎに新幹線列車が来た。
「あ、かよちゃん、久しぶりっ!」
「りえちゃん・・・!!久しぶりだね・・・!!」
 杖と杯、それぞれの所有者は再会を喜んだ。
「安藤さん、どうもあけましておめでとうございます」
「本年もよろしくお願いいたします、山田さん」
 お互いの親も挨拶する。
「こちら隣に住んでいる羽柴奈美子さんです」
 かよ子の母が紹介する。
「初めまして」
「はい、どうも宜しくお願い致します」
「隣のおばさんが、荷物とかを運んでくれるって」
「まあ、それはそれはありがとうございます」
 皆は駅を出た。そして安藤家は奈美子の車に乗せて貰った。
「じゃ、かよちゃん、また後でね」
「うん」
 奈美子の車に乗せて貰ったりえはかよ子と別れた。そしてかよ子達は家に戻る。かよ子はある事を考えていた。
(杉山君が喧嘩したって事、りえちゃんに相談したほうがいいのかな・・・?)
 夏休みにりえが杉山と会った時、二人は一見喧嘩ばかりしていたが、杉山はどこかでりえを気遣っているような行動が見えた。杉山もりえに少し気があるように見えたので、もしかしたら何か役に立てるかもしれないと感じた。

 りえ達は祖母の家に荷物を預けた後、かよ子の家へと向かった。奈美子の車に引き続き乗せて貰って。奈美子は運転中、ある話をする。
「ところで、秋頃、東アジア反日武装戦線が赤軍と組んで襲ってきたって話、娘から聞きましたよ」
「え?ああ、あの札幌から来たって人のお母さんですか?」
「はい、ウチの次女です。そして私の三女がりえちゃんの杯やかよちゃんの杖と同じ最上位の能力(ちから)を持つと言われる異世界の護符を持っています」
「そうだったんですか!?」
 りえは思い出した。夏休みに会った高校生男子の従姉が異世界の護符を持っていると言った事、東京で東アジア反日武装戦線の人間と共闘した女性は彼女の妹が異世界の護符を持っていると言った事を。では、この女性は嘗て異世界の護符を持っていた人物である、とりえは解釈した。
「うん、今後一緒に戦う事になるかもしれんね」
「はい」

 羽柴家に取り残されていた三河口と利治は退屈しのぎに碁を打っていた。
「それにしても俺達が異世界に行くとなると叔父さん一人でここに残す事になりますからどこか申し訳なく感じますね」
「まあ、仕方ないさ。今の俺にできる事は皆を応援する事だからね」
「はい・・・」
 外で車のエンジンの音がした。おそらく奈美子が運転している車が戻って来たのだろう。
「どうやら戻って来たみたいですね」
 しばらくして奈美子が家に入って来た。
「二人共、『杯の所有者』が来たよ」
「はい、今、参ります」
 二人は隣の山田家へと向かった。

 山田家に到着したりえ達は居間にてかよ子とある話をした。
「そう言えば清水で藤木君って子が行方不明になったって聞いたわ」
「うん、そうなんだ。実は私が野良犬に襲われそうになったところを見捨てて逃げちゃって、それでクラスの皆から卑怯呼ばわりされて落ち込んじゃったんだ」 
「えっ、そうなのっ!?」
「それで皆から白い目で見られてもしかしたらそれが原因で異世界に行っちゃったのかもしれないって思うんだ」
「あの優しい藤木君が・・・」
 りえは寄せ書きの色紙を思い出した。杉山の「絶対に夢、叶えろよ!」の言葉に気を取られていたが、藤木はそこに「この次は僕が守ります」と書いてあった。
「藤木君にも、ちょっと怖がりな所があったのね」
「うん・・・」
「藤木君も助けに行かないとね」
「う、うん・・・!!」
 かよ子達にとっては藤木の奪還も必要不可欠であるのは事実だった。だが、かよ子以上に藤木がいなくなって心配しているのは笹山なのだが。
(あの事、言おうかな、どうしようかな・・・?)
 かよ子は杉山の事を言おうかどうかそわそわしていた。その時、三河口と奈美子の主人が家に入って来た。
(ああ、おっちょこちょいしちゃったよ・・・)
 かよ子は言うタイミングを失った。

 山田家にはかよ子やりえとそれぞれの家族が集まっていた。
「あ、いつかのお兄さん」
「安藤りえちゃん、だったね」
 りえは三河口を見て思い出した。
「はい」
「あれから色々大変だったろうね」
「はい」
「俺の従姉とその旦那が赤軍と手を組んだ東アジア反日武装戦線の連中を追い払って助けたとは聞いたが、クリスマス・イブの日もそっちは大変だったみたいだね」
「そ、そうだったの!?」
 かよ子は思い出した。クリスマス・イブの日。合唱コンクールが終わった後、名古屋に住むさりが赤軍に襲われ、皆で助けに行った時であり、丁度藤木が失踪した日でもある。
「ええ、こっちにも赤軍が来て大変だったわ」
「そうだったんだ・・・。こっちも大変だったよ」
「そうそう。護符を持ってるウチの娘が襲われてね、私達もかよちゃんも、皆で名古屋まで瞬間移動で助けに行ったんよ。その瞬間移動は娘の護符の能力(ちから)」によるもんだけどね」
「そうだったんですか・・・」
「何とか守れたけどね」
「りえちゃん、東京(そっち)ではどんな事があったのか教えてくれないかしら?」
「はい、分かりました」
 りえは説明を始めることにした。 
 

 
後書き
次回は・・・
「杯の所有者のクリスマス・イブ」
 りえがクリスマス・イブに起きた赤軍との戦いを語り出す。彼女は友達と下校中に赤軍に杯を奪われかけていた。赤軍の好きを見せぬ猛攻にりえ達は苦戦しており・・・。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧